初任給の使い道、覚えてる? 父のネクタイを買いに行ったら一生の買い物になった話

2021年6月11日

スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。今回は、企業で新卒の採用と教育を担当するなつめさんがnoteにつづった、「初任給」をめぐる出来事をご紹介します。


一生に一度の特別な「初任給」、使い道は?

新社会人になって初めてもらえる「初任給」。人生の節目となる初めの一歩、喜びもひとしおのお給料ですね。

さて、この初任給。新卒の皆さんはどう使いましたか? また、すでに受け取ってからずいぶん歳月を重ねてきた皆さんは使い道を覚えていますか?

株式会社Paidyが「初任給の使い道(※)」を調査したところ、2021年入社の新社会人のトップは「預貯金」(71%)、次いで「生活費」「自分以外へのプレゼント」(42%)が続きました。一方、先輩社会人は「覚えていない」(58.6%)人が半数以上を占めつつ、「覚えている」人は「自分以外へのプレゼント」(56.5%)、「預貯金」(44.9%)、「生活費」(31%)との結果になりました。
※全国の働く男女(先輩社会人)24~59歳・490名、全国の2021年入社の新社会人男女18~25歳・100名/調査手法:インターネット調査/実施期間:2021年3月25日~29

先輩社会人の皆さんは、「自分以外へのプレゼント」がトップ。I Tサービス関連企業・スターティア株式会社で新卒の採用と教育を担当するなつめさんも、まさにそんなプレゼントを用意したおひとりです。

これからご紹介するのは、そんななつめさんの「初任給」をめぐる出来事です。

初任給で父にネクタイをあげたい。しかし……。

初任給ではまた別で何か形に残る物を渡したいと思い、父のコレクションであるネクタイにすることに。仕事柄、たくさんのネクタイを持っていた父に、改めて社会人になった娘から社会人の先輩である父に選んであげたくなったんですよね。

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

春からスターティアでセールスの仕事に就いていたなつめさんは、初任給を握りしめ、「大宮のそごう(デパート)」に向ったそうです。緊張しながら、お父さんが好む「バーバリー」へ。店員さんとネクタイを見て回りましたが、買いたいものが見つかりません。

たくさん出してくれて、本当に申し訳ない気持ちにもなり、この緊張からはやく解き放たれたい気持ちもあり、なんとなくこのあたり?と決めてしまいそうになるものの、いや、やっぱり違う。

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

悩み続けるなつめさんに、店員さんはこう声をかけました。

「同じこのフロアに、そごうさんの紳士用小物コーナーがあります。そちらにも、当ブランドが一部置いておりますのでもしよければそちらをご覧になってみてはいかがでしょうか?」

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

この一言に、新卒だったなつめさんは驚いたといいます。

接客のためにけっこうな時間を使って、そもそも私は買う気満々のお客さん。なのに販売員さんは売ることをしませんでした。しかも他の売り上げになる提案をしてきたのです。わたしは、「えっ」と思いながらもその提案にありがたく乗らせていただきました。

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

こうして向かった小物売り場で、なつめさんはピンとくるバーバリーの一本に出会えたのでした。

「バーバリーの購買体験」を買った日

当時のこの出来事は、ネクタイを買ったというより「バーバリーの購買体験を買った」のだと、今、なつめさんは振り返ります。

そごうでバーバリーの商品が売れた際のバーバリーに入る売り上げの比率はわかりませんが、きっと自分の店舗で売った方が販売員さん自身の成績や店舗の売り上げになるはずです。ただ、販売員さんはそれをしなかった。それでも私は、バーバリーというブランドで買い物をした体験を十数年経った今でも鮮明に覚えています。

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

このプレゼントを見たお父さんは大喜び。そして、なつめさんが体験した一連のエピソードを話すと……。

父は「へー!」と興味深く聞きながら、セールスの仕事を始めた私に「そういう接客や提案ができるようになっていくんだなおまえも」と言ってくれました。

その言葉はずっと胸にあって、セールス時代に意識していたのは言うまでもありません。

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

売りたい気持ちよりも、心の底から満足してもらえるようにお客さまに寄り添う。そうした接客に触れられた体験は、なつめさんにとって「販売する」ことを考えるきっかけになり、大きな糧となったそうです。

最後に、「初任給」に秘められている価値について、新人教育を担当しているなつめさんはこうつづります。

まだ稼ぐことのできない新卒にこれから何を期待しているのか、未来への投資なのだと話して初任給を渡しています。なにも申し訳なく思う必要はなく、十数年前の私もそうでしたし、そうやって先輩からバトンがつながって、未来の新卒のためにまた今年の新卒も成長していく。そしていつか部下ができたとき、いつか子どもができたときにこの節目を一緒に振り返る。こんなシーンが初任給には込められているのではないかなと。

初任給で買ったのはネクタイではなく。より

新卒社員のもつ可能性を信じ、希望とともに渡される「初任給」。新卒の皆さん、貯金も必要なことですが、ぜひ一部だけでも記憶に残る形で使ってみてください。なつめさんのように親御さんへのプレゼントを選ぶのもいいし、自分への投資やご褒美にするのもステキ。きっといつか社会人として成長したとき、この第一歩を懐かしく思い出す日がくるはずです。


日下なつめ

スターティア株式会社に新卒で入社。法人セールスを6年、支店立ち上げやマネジメントを経験。新卒教育を5年、新卒育成プログラムの立案や作成をし、現在は新卒採用の現場責任者として新卒で入社するメンバーのキャリアをプロデュースしながら社内のSDGsプロジェクト推進メンバーとしても活動中。
趣味はTwitter運用(アカウント:@Natsume__st)

(文:矢口あやは)

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ライター・編集・イラストレーター矢口あやは
大阪生まれ。雑誌・WEB・書籍を中心に、トラベル、アウトドア、サイエンス、歴史などの分野で活動。2020年に一級船舶免許を取得。

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