【医師監修】なぜ気圧の変化で頭痛が起きる?「気象病」の予防&対策をご紹介<体質チェックリストつき>
昨今の社会情勢に伴い、不要不急の外出を控えたりと生活環境が大きく変わりはじめて約1年。はたらく環境が大きく変わったという方も多いのではないでしょうか。連載「はたらくHack!」では、この時代を元気に自分らしく“はたらく”ためのエッセンスをご紹介していきます。
第9回目のテーマは「気象病」です。
天気が崩れる前や雨の日は、頭痛やめまいがしたり、慢性の肩や腰の痛みが強くなったり……、体調が優れず仕事に集中できない、なんてことはありませんか?それは気のせいではなく、天気の変化によって起こる「気象病」かもしれません。不調となるメカニズムから発症しやすい人の特徴、予防&対処法まで、テレビや雑誌などでも活躍されている、かわかみ整形外科クリニック院長の川上 洋平先生に伺いました。
川上 洋平先生
かわかみ整形外科クリニック院長 医師・医学博士
神戸大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学に留学し、膝関節外科、再生医療、スポーツ医学を学び、神戸大学病院、新須磨病院勤務を経て、患者さんにやさしく分かりやすい医療を提供することを目的に、かわかみ整形外科クリニック(神戸市垂水区)を開業。日本整形外科学会専門医。日本リウマチ財団登録医。
■トピック ・主な原因は気圧の変化。症状は多岐にわたり、1,000万人以上が自覚あり! ・「気象病」には耳が深く関わっている。なりやすい体質かチェックしよう! ・予防&改善法は?――耳の血行を良くし、むくみをとろう! |
主な原因は気圧の変化。症状は多岐にわたり、1,000万人以上が自覚あり!
――近年「気象病」というワードをよく聞くようになりました。どのような病気なのでしょうか?
気象病は、気圧、気温、湿度など“気候の変化”によって起こされるさまざまな症状の総称で、「天気痛」と呼ばれることもあります。
気象変化の中でも、特に引き金になると言われているのが気圧で、6~10 ヘクトパスカル以上の変化で発症することが多いようです(*1)。気圧の変化が急なほど症状が出やすく、気圧が低下するときに不調になる人が多い傾向があり、また、ご自身の体調によって症状が出やすくなることもあります。
具体的な症状としては、頭痛、耳鳴り、めまい、 首や肩などが痛くなる、気持ちが落ち込むなどから、古傷が痛む、更年期障害の悪化など、もともと持っていた持病が悪化して現れるものまで、実に多岐にわたります。
――気象病に悩んでいる方は多いのですか?
近年、夏にヒョウが降ったり、局地的豪雨(ゲリラ豪雨)に見舞われるなど、極端な気象変化が多くなり、気象病に悩む人は増加しています。日本では1,000万以上の人が気象病を自覚したことがあるとされ、男女比の割合をみると女性のほうが多く、ウェザーニュースの調査(*2)によると、約80%の女性が悩んでいるとされています。
――なぜ女性の方が多いのでしょう?
女性は、1カ月の中でもホルモンバランスの変動があるため自律神経が乱れやすく、PMS(月経前症候群)や更年期によって頭痛やめまい、イライラなどのトラブルを抱えている人も少なくなくありません。そうした症状に気圧や気温の変化で拍車がかかり、悪化するケースがあるためだと考えられます。
「気象病」には耳が深く関わっている。なりやすい体質がチェックしよう!
――なぜ気象の変化が体調に影響するのでしょうか?
耳の奥にある「内耳」が、天候で不調が起こるメカニズムに大きくかかわっていると言われています。内耳は、気圧の変化を感じ取るセンサーの役目を担っていて、変化を感じ取るとそれを脳へ伝えています。
しかし、このセンサーが敏感な人や、何かしらの原因で過剰に反応すると、脳に過剰な情報が伝わり、その結果、交感神経(血管を収縮させ、体を興奮させる神経)と副交感神経(血管を広げて体をリラックスさせる神経)からなる自律神経のバランスが乱れてさまざまな症状が引き起こされます。たとえば、交感神経が活発になりすぎると痛みが増幅されやすいため、古傷が痛んだり頭痛を発症しやすく、副交感神経が活発になりすぎると、倦怠感や気持ちの落ち込みなどを感じやすくなります。
――内耳のセンサーが敏感か、気象病になりやすい体質かどうか、自分で分かるものですか?
下記のリストで該当する項目が多い人ほど「気象病」を発症しやすいと言えます。ぜひチェックしてみてください。
「気象病」体質チェックリスト |
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□ 乗り物酔いをしやすい □ 飛行機やエレベーターに乗ったとき、耳が“キーン”と痛くなる □ よくめまいを起こす □ よく耳鳴りがする □ 肩や首がこりやすい □ 腰痛もち □ むくみやすい □ 過去に大きなケガなどをしたことがある □ 偏頭痛もち □ストレスを感じやすい |
予防&改善法は?――耳の血行を良くし、むくみをとろう!
――予防法はありますか?
耳まわりの血行やリンパ液の循環が悪くなって内耳がむくむと、内耳のセンサーが敏感になり、気象病を起こしやすくなります。内耳の血行をよくするため、耳に温かいペットボトルを当てて温めたり、マッサージをするのがおすすめです。症状が出てしまったときはもちろん、出そうだなと思ったら早めに行いましょう。また、日ごろから行うことで症状が起こりにくくなりますよ。
さらに、漢方薬では、内耳のむくみを取るといわれる「五苓散」が症状改善に効果的だと知られています。市販薬もありますが、いずれも薬を服用する際は、医師や薬剤師に相談のうえ正しく服用してください。
●耳のマッサージの仕方
① 両耳を手で軽くつまんで、上、横、下に、順番に5秒間くらいゆっくりと引っ張る。
② 耳をつまんだまま5回程度ゆっくりと回す。
③ 手のひらで耳全体を覆い、円をかくように5回程度ゆっくりと回す。
――日常生活の中で心がけると良いことはありますか?
気象病対策には、自律神経を整えることが大切です。質の良い睡眠、バランスの良い食事をとるよう心がけましょう。
睡眠の質を上げるには、寝る前にスマートフォンやテレビをみることを控え、朝起きたら日光を浴びるのが有効。食事はバランスが大切ですが、海藻や豆類など血管のむくみを抑える作用があるマグネシウムを豊富に含む食材を摂るがおすすめです。また、水分の摂り過ぎもむくみの原因に。摂り過ぎには注意しましょう。
下記も血流を良くしたり、体と心をリラックスモードに導いて自律神経の乱れを正すのに有効!ぜひお試しください。
●バスタイムで38から40℃ぐらいのぬるめのお湯につかる
●ウォーキングなどの適度な運動をする
●首や肩まわりのストレッチをする
今は、天気痛予報を伝える番組やアプリなどもあります。体調が悪くなりそうなことが分かれば、対策も取りやすいというもの。上手に活用して、注意や警報などのメッセージが出た日は早めにセルフケアを行いましょう!
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