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「好きな仕事がしたいわけじゃない」と気づかせてくれたスゴい社長
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、はたらくことの喜びやおもしろさを感じたエピソードを語った記事をご紹介します。
好きな仕事に就き深夜まではたらいていたmiさんは「好きな仕事ならストレスも乗り越えられる」と考えていました。ところがその会社を辞める選択をして、はたらく意味を見つめ直します。転職した先の社長に「自分は何のためにはたらく人間なのか」を教えてもらったエピソードを、noteに投稿しました。
※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「『仕事とは愛だった』なんて思わせてくれちゃって」から抜粋したものです。
「好きな仕事なら、人間関係のストレスなんて乗り越えられる」と思っていた
ある日、miさんの携帯に、朝日新聞から電話がかかってきます。
自身のはたらきかたについて投稿したエッセイが、朝日新聞の「声」に掲載されるという連絡でした。
『22時、23時まで働いてると、すぐ周りに「それってブラックじゃない?」なんて言われるが、時間が何の指標になるのだろうか。私は自分の仕事が好きだ。好きなことにはいくらでも時間を注げると思っているからやっているのだ。逆にきっちり9時17時で終わったって鬱になってしまう人だっている。気持ちの問題と時間の問題は、まったく別の次元に存在している。』
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
エッセイには、こうした内容を書いていました。
働き方改革など長時間の労働が見直されるなかで、朝から晩まではたらくmiさんがもんもんと違和感を抱いていたことを吐き出したものです。
しかし、時間を惜しまず好きな仕事に打ち込むエッセイを投稿した1年後には、当時の会社を辞めていました。
好きなことを仕事にするのが良いと思っていた。好きなことを仕事にしたくて、その業界一本で絞って就職活動をした。望みどおりの就職をして、「やっぱりこの仕事が好きだ、この仕事にしてよかった」と思っていた。
でも続けられなかった。私の中でどんどんと、周りの上司や、クライアントに対して不信感を募らせてしまったからだった。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
「好きな仕事」の意欲より、「嫌な人間関係」の不信感が勝ってしまったのです。
もともと気持ちの問題と時間の問題を切り分けて考えていたmiさんは、そんな自分への葛藤がありました。
「人間関係のストレスなんて、仕事には付きものなのに。それを乗り越えるのが“この仕事が好き”って気持ちなんじゃないのか。」
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
そう自問し続けたmiさんがようやくその答えを見つけたのは、それから数年後のことでした。
「私がはたらく理由」に気づかせてくれたハラクミさんとの出会い
転職先は、今までとはまったく違う業界の会社でしたが、仕事内容が魅力的だったので入社を決めました。
そこで、miさんが「一生付いていきたい」と思う人に出会います。
私が「一生付いていきたい」と思ったその人は、その会社の社長だった。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
小さな組織だったので社長との距離が近く、社員は社長のハラダクミコさんのことを「ハラクミさん」と親しみを込めて呼んでいました。
miさんも最初はカルチャーショックを受けたものの、だれにでも気さくに話しかけ、社員の髪形や体調の変化に気づき、趣味などにも深く興味を持つハラクミさんとフラットに放せるようになります。
ハラクミさんは、上司の概念を超えてくる人でした。
転職してから半年が経ち、初めての評価を終えたとき、彼女は「半年乗り切ったね!おめでとう!」と言って、私にA4の紙を一枚差し出した。それは手紙だった。10.5ptのフォントサイズでA4一枚、結構な文量だ。入社したときの最初の印象と、今の印象。期待を超える働きをしてくれて本当に助かっている、ありがとうということ。そして「miyoちゃんと一緒に仕事をするのが本当に楽しいよ。」そんな手紙を十数名いるメンバー全員分書いてくれたのだ。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
メンバーの全員への手紙――。ハラクミさんは、とことん無理をする人でした。むしろ「無理を楽しむ人」といった性格で、メンバーの前では常にひょうひょうとした様子で振る舞っていたそうです。
ある日、miさんはハラクミさんにこんなことを言われます。
「miちゃんと一緒に仕事をするのは本当に楽しいよ。」
初めてそう言ってもらった時、心の中が今まで職場では味わったことのない感情でじんわり温まるのを感じた。「私も楽しいです」とオウム返しのような返事できっと伝わっていなかっただろう。私もハラクミさんと仕事をするのが一番楽しいのだということが。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
ハラクミさんの「楽しい」が、miさんのなかで呼応するように共鳴して、はたらく楽しさを大きくしていきました。
もちろん楽しい仕事ばかりではなく、自分のキャパシティを超えて大きなストレスを抱えてしまう日もありましが、miさんはいつも同じ言葉を思い浮かべて踏ん張ったそうです。
「ハラクミさんに喜んでもらうためにあとちょっと、頑張ろう」
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
ハラクミさんに出会ったことで、
私は、「この人のために働きたい」と思える人がいるから、働く人間だったのだ。
と気づき、前職の「好きな仕事」が続けられなかった理由を理解したmiさん。
しかし、そんな日々は長く続きませんでした。
「仕事とは何なのか」はハラクミさんが教えてくれた
「miちゃん、私、3か月後にここを辞めるよ」
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
何でもない日の昼過ぎ、いつも通りハラクミさんに誘われて行ったランチ先で、そう言われました。
突然のことで、miさんは「そうですか…」としか答えられなかったそうです。
「ごめんね。今は業績もあやしくて、このタイミングで抜けるのは本当に名残惜しいんだけどさ。一緒に達成しようっていってた目標、見守れなくてごめんね。」
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
ハラクミさんは社長交代の時期を過ぎるほど長く社長を続けていたので、自然なタイミングではありました。
代表を退くだけでなく、新しい会社へ転職するそうです。
ハラクミさんと離れる実感が湧いてさみしさがこみ上げてきたのは、家に帰ってからでした。
その日は家に帰って、真っ先に夫に伝えた。「ハラクミさん、辞めちゃうんだってさ。」
「辞めちゃうんだって。」2回言ったらようやく実感がわいて、ひとしきり泣いた。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
送別会では、みんながハラクミさんの隣を陣取ろうと必死になっていました。
miさんもなんとか隣に座りますが、いざとなると言葉が出てきません。
ようやく出てきたのは、社長という孤独な立ち場でいつも明るかったハラクミさんへの疑問でした。
「ハラクミさんがこの職場で一番つらかった時って、どんな時ですか?」
答えはこうだった。
「メンバーがつらそうにしてた時だね。メンバーが大変そうで、しんどそうな時は、私もつらかった。それくらいかな。後は無いかな。」
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
その言葉を聞いて、miさんの迷いが吹き飛びました。
ハラクミさんのためにはたらいていたのだから、ハラクミさんがいなくなったら辞めようか、という考えもあったのです。
でも、最後までメンバーのことだけを考え、仕事と関係なくみんなに愛をくれていたハラクミさんの言葉に触れて、自分が恥ずかしくなりました。
あなたが集めた大好きなメンバーと、あなたが築き上げた素晴らしい職場文化を、皆で守って成長させたい。あなたが安心してこの職場を出て行けるように。「あなたのために働く」って、そういうことですよね。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
「ハラクミさんのためにはたらく」の意味が、miさんのなかでぐんと広がっていきました。
そして、miさん自身にも仕事への愛が宿っていることに気づきます。
「誰かのために」という気持ちは愛で、恥を忍ばず言えば結局仕事も愛だったってことになる。親が子を愛するように、友が友を愛するように、上司が部下を愛す。部下が上司を愛す。同僚が同僚を愛す。
でもハラクミさん、「仕事とは愛だ」なんて大それたことを他人に悟らせたりしちゃって。ほんと、すごい人ですね。
「「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって」より
そう痛感したmiさんは、ハラクミさんからもらった「この人のためにはたらきたい」という感情を、誰かにおすそ分けしたいと感じているそうです。
はたらきかたは人それぞれです。
たとえ好きな仕事じゃなくても、miさんのように「この人のためにはたらきたい」という感情が生まれて「仕事とは愛だ」と思えたら、「本当に楽しい」と思えるのかもしれません。
【ご紹介した記事】 「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって 【プロフィール】 mi 仕事、美術、日常などなど。思ったことを思ったままに書いています。 |
(文:秋カヲリ)
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