【カナダのはたらき方】基本給は上司と交渉し決定!はたらきやすい環境は自分でつくる

2023年5月15日


連載「地球のはたらき方」では、世界の国々ではたらく人にインタビュー。その人自身のお仕事や、国のはたらき方や価値観に加え、「はたらいて、笑おう。」グローバル調査のデータをもとにして、各国のはたらく内情を伺います。

今回は、カナダのはたらき方をご紹介します!

カナダ Data(2022年)
国内総生産ランキング(GDP) :9位/191カ国中(日本:3位)
世界幸福度ランキング(WHR) :15位/146カ国中(日本:54位)

<お話してくれた方>
グラント・フーパーさん
カナダ国籍|31歳|営業コンサルタント
カナダのオンタリオ州にある北米屈指の経済都市であるトロントに住み、営業コンサルタントの仕事をしている。以前はホテルのフロントや営業の仕事をしていたが、コロナの影響で職を失い、7カ月ほど休職していた。
その後、定年退職した人々向けにランチツアーなど余暇を楽しめるイベントや、シェア別荘などのサービスを提案する会社で営業職としてはたらいている。職種は変わったが、人のためにできることを模索しながらはたらけるのが楽しく、今の仕事には満足している。
趣味は旅行。ヨーロッパ方面に行くことが多いが、トルコのイスタンブールなど文化が大きく異なる国も好き。いつか日本に旅行に行きたい。

Q.あなたはどんな人?

――あなたの仕事について教えてください。

私は営業職としてはたらいており、定年退職したシニアの人々に余暇を楽しめるイベントや、生活の質を上げるための別荘などの施設を紹介する仕事をしています。具体的には、ほかの州や町でのランチツアーや小旅行、シェアして使える別荘などの施設をご提案しています。イベントの集客率を高めたり、施設の稼働率を維持したりすることが私のミッションです。

仕事は平日の朝9時から夕方の17時まではたらいていて、週3日はオフィスで、週2日は家でリモートワークをしています。精神的にも時間にも余裕がありますし、シニアの人々の生活を向上させる手伝いができるので非常にやりがいを感じています。

グラントさんのワーキングスペース 週に2日は家でリモートワークをしている

――どういう経緯で、今の仕事を始めたのですか?

もともとはホテル業界でフロントデスクやマネジメントの仕事をしていました。ですが、新型コロナウイ

ルスの流行で、ホテルの仕事を解雇されてしまったんです。新しい仕事を探す必要があり、7カ月の休職期間を経て今の営業の仕事を見つけました。

新しい仕事を見つけるにあたり、重視していたのは「社会における役割」でした。誰かの役に立てる仕事に就けて、満足しています。

――休職期間中は、政府からの支援はあったんですか?

ありました。雇用保険のある職場ではたらいていると、条件がそろえば失業保険がもらえるんです。最大11カ月ほどの期間、元の収入の50%程度が支給されます。また、コロナ期間中に解雇された人には月に2,000ドル*程度の補償が、最大4カ月間支給されました。これらの制度を利用して、7カ月間の休職期間中を乗り越えました。ロックダウン中にはほかにもいろんな補償がありました。

私は十分に社会保障を受けていると感じましたが、足りないと思う人もいたそうです。家族構成や生活スタイルが異なるので不満がある人もいるみたいですが、私はカナダの社会保障は整っていると思います。

*1カナダドル100.8円計算で、21万6千円

――仕事のモチベーションはなんですか?

私は人々の生活をサポートできることにやりがいを感じます。そして適正な給料をもらえることが、モチベーションの維持につながりますね。やりがいと給料のバランスが良くないと、生活の質が向上しませんから。

――オフはどのように過ごしているんですか?

長い休みは旅行に行くことが多いです。カナダでは夏に2週間程度の休暇を取る人が多いので、その期間はカナダの他の州やヨーロッパやアメリカを旅行しています。

新型コロナウイルスが落ち着いてきたので、また長期休暇には海外旅行に行きたいですね。日本も旅行者の受け入れが始まったようなので、日本にも行ってみたいです。

Q.あなたの国のはたらき方について教えてください。

――カナダのはたらき方について教えてください。

一口にカナダのはたらき方と言っても、労働に関する法律や最低賃金などは州によって異なります。私の

会社があるオンタリオ州では、1日8時間、週40時間以内の労働をして、それを超える場合は割り増し賃金が支払われます。1日8時間を超える場合は給料の1.5倍の賃金が給料に上乗せされ、残業をしても1週間の労働時間は48時間に抑える必要があります。また、1日5時間以上はたらく場合は30分の休憩を取ることができます。

私の所属する会社は、協調性や柔軟性を重んじる企業文化があります。もちろん結果も重視されますので、チーム一丸となって目標を達成できるように努めています。プレッシャーもありますが、みんな責任感を持ってはたらいています。

――カナダでは何歳でリタイアするんですか?

状況によってさまざまですが、大体65歳から67歳の間にリタイアしますね。私の会社では65歳以上の人たちを対象としたサービスをメインに取り扱っています。もうすぐリタイアする人や、すでにリタイアした人たちの年齢層に合わせているんですよ。

グラントさんの住むオンタリオ州にあるトロントはカナダ屈指の経済都市 画像提供:ライターMidori

――カナダはどうやって最初の仕事を探すんですか?

はたらき始めるタイミングは人によって異なります。高校卒業後や大学卒業後に*ギャップイヤーをとる人が多く、「卒業したらすぐにはたらく」という感覚はありません。最初から「一生はたらく会社」という視点で仕事を探す人は少なく、ほとんどの人は、パートタイムの仕事として人気のあるレストランやカフェなどではたらき始めます。もちろんほかの職種を選ぶ場合もありますが、気軽にはたらけて、需要が多い飲食店は最初の仕事として人気があります。

その後、経験を積んで自分のやりたいことが分かってきたら、就きたい職に必要なスキルや知識を身につけるために専門学校や大学に行ったり、インターンシップやボランティア活動をしたりします。

カナダの履歴書には自分を推薦してくれる人の名前を書く欄があります。カフェなどのアルバイト先の上司や学校の先生に書いてもらうために、必要とされる経験やスキルがあるということを、アルバイトやインターンシップ、大学在学中にアピールする必要があります。私もいろんなアルバイトの経験を積み、推薦をもらってホテルの仕事に就くことができました。

そのようにしながら自分のやりたいことを少しずつ探り、経験やスキルを身につけながら、希望する求人を探して応募します。それでも、ずっとそこではたらくという感覚はなく、6年から10年ほどはたらいたら、自分のライフプランやキャリアステップに応じて次の仕事を検討します。引き続き同じ場所ではたらく場合は、賃金や待遇について交渉し直すことも多いですね。

私もホテルではたらいていた期間は長かったですが、ずっと同じホテルというわけではなく、雇用条件などを考慮しながらほかのホテルに転職したりしました。

昔のカナダは一つの職場ではたらき続けるというのが普通だったようですが、今は、はたらき始める時期や、どれくらいの期間はたらくかなど、個人によってかなりばらつきがあります。ゆっくりと自分に合って、自分らしいはたらき方を探すのがカナダのスタイルなのかもしれません。

*ギャップイヤー:高校卒業後や大学在学中や大学卒業後など、人生の節目に1年や2年ほど(もっと長い場合もある)旅行やワーキングホリデー、インターンシップなどを行う期間のこと。

――カナダの初任給はどれくらいですか?

最低賃金が州によって異なりますし、ギャップイヤーをとっている間にアルバイトをする人も多いので一言では難しいですね。私の住んでいるトロントだと、最低賃金は15.5ドル*1程度です。

年間の基本給とボーナスについては、ボスと話し合って決めることが一般的なように思います。私は営業職につく際、基本給が60,000ドル*2、成約するごとにボーナスが年間で最大100,000ドル*3振り込まれる契約をしています。

*1カナダドル108円計算で、約1,690円
*2カナダドル108円計算で、約648万円
*3カナダドル108円計算で、約1,800万円

Q.あなたの国の調査結果についてどう思いますか?

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査 カナダの順位 ※調査結果は、2022年に発表した第2回目調査のデータ。

――Q1の「日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか」という質問に対して「楽しんでいる」と回答した割合は、122ヵ国中81位でした。この結果を受けて、どのように思われますか?

妥当な結果だと思います。カナダの人は仕事よりプライベートを重視する傾向にあるので、仕事を楽しまなくてもきちんと収入があれば満足な人が多いんだと思います。日々が充実していれば、どちらでも良いと思います。もちろん私は仕事を楽しんでいます。

仕事よりプライベートを優先するカナダの人々 会社や学校の後も友人や家族と楽しく過ごす人が多い 画像提供:ライターMidori

――Q2「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっている」という項目は122ヵ国中66位でした。

これも妥当な結果ですね。お金を稼いで、自分のプライベートが充実していれば満足なので、これもあまり重要視しないのがカナダの傾向なんだと思います。

私は人のためにはたらきたいというのが仕事のモチベーションにつながるので、もちろんYesと答えます。

――Q3「自分の仕事やはたらき方は、多くの選択肢の中から選べるかどうか」は58位でした。

こちらも納得の結果です。カナダは移民を多く受け入れているため、アジア系の人も多く、多民族国家なんです。

私がコロナで失業した時は「選択肢がない」と思っていましたが、社会保障を受けてじっくり次の仕事を探すことができ、結果的には今の選択肢にとても満足しています。経験を積めば選択肢も増えてくるので、この結果もどんどん良くなるとうれしいですね。

多様なアイデンティティを持つ人がすむカナダ それぞれの州で経験を積みながら自分らしく過ごせる道を探している 画像提供:ライターMidori

「はたらいて、笑おう。」グローバル調査
世界100カ国以上の国と地域を対象として、国際世論調査Gallup World Pollに「はたらいて、笑おう。」に関する質問を3項目追加し、3つの質問について「はい/いいえ/わからない/回答拒否」で回答。詳しくはこちら

※当記事で語られている発言内容は、あくまで取材対象者ご自身の意見・感想に基づくものです。

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SAGOJOライター伏見碧
大学院で機械工学を専攻し、終了後はメーカー企業の研究所で勤務。
数年働き、北欧アウトドアを体験するために退職し、北欧デンマークに1年間滞在。
現地の学校でアウトドアを学ぶ。
現在は北欧アウトドアライターとして記事を書き、その魅力を発信している。
自身のサイトではデンマーク生活を漫画形式で紹介。
また、デンマークの旅行代理店と提携し、日本人向けに北欧ネイチャーツアーの企画立案も担っている。

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