【産業医監修】仕事中のBGMにも!集中力アップには「ホワイトノイズ」のすすめ
昨今の社会情勢に伴い、不要不急の外出を控えたりと生活環境が大きく変わりはじめて約1年。はたらく環境が大きく変わったという方も多いのではないでしょうか。連載「はたらくHack!」では、この時代を元気に自分らしく“はたらく”ためのエッセンスをご紹介していきます。
第七回目のテーマは、「音」。
テレワークとなって自宅で仕事をする人の中には、「静かすぎて落ち着かない」「家庭ならではの音や家族の声が気になってイライラする」など、「音」に関する悩みを抱えている人も多いよう。
今回は、音楽がメンタルに及ぼす影響から、仕事のBGMに向くと注目されている雑音までを産業医の原島 浩一先生に教えてもらいました。
「“ながら”で仕事をするなんて不真面目!」、なんて考えはもう古い⁉音を味方につければ、仕事をもっと効率良く進められるかもしれません。
原島浩一先生
原島産業医事務所代表
認定産業医 労働衛生コンサルタント
群馬大学医学部および群馬大学大学院卒業後、放射線科医として癌の治療に従事。2007年から数社の専属・嘱託産業医を務める。
■トピック ・音楽のBGMで気持ちを整えよう! ・雑音「ホワイトノイズ」が集中力を高める!? |
音楽のBGMで気持ちを整えよう!
――テレワークになり、「静かすぎて落ち着かない」「家族の声や外の音が気になる」など、“音”に関する悩みを抱える人も多いようです。
ソワソワしたり、イライラしたりと気持ちが不安定な状態では、仕事に集中できませんよね。そして、集中できないことで、またイライラ――、そんな悪循環になりかねません。
“音”対策として楽曲を流してみてはいかがでしょう。
バッハの『G線上のアリア』 やパッヘルベルの『カノン』はご存知でしょうか。どちらも優雅な美しいメロディで親しまれているクラッシックの名曲ですが、この曲と曲の間に小鳥の声と小川のせせらぎの自然音を入れたCDを成人女性に聞いてもらって気分の変化を調査した研究によると、活気が湧き、混乱や怒りの感情が減少する効果があると認められたそうです。*1
気持ちが不安定だと感じたら、こうしたクラシック音楽や自然の音で構成されたCDを聴くといいかもしれませんね。
――アスリートの方が試合前に音楽を聴いている姿もよく目にします。
スポーツと音楽の心理影響についての研究は数多く行われていて、そうした多くの研究を調査した論文が発表されているのですが、それによると音楽がアスリートの方々のパフォーマンス向上に何かしらの影響を与えていることは確かなようです。*2
――では、デスクワーク時に音楽を流しておくと、気分が変わるだけでなく、生産性も上がるのでしょうか?
残念ながら、デスクワークの作業効率が上がるとは言い難いですね。
大学生に、BGMが流れる中で4桁÷2桁の計算をしてもらう実験では、計算作業を促進するという結果は得られなかったようです。でも、同時にBGMが作業を妨害しないという見解も導かれたといいますから*3、仕事の邪魔をすることはないと思います。
とはいえ、メロディに聞き入ってしまって仕事に集中できないという人もいますから、一概に“仕事中は音楽を流そう!”とはいえないですね。
――楽曲を流すことが自分に合うか、まずは試してみたほうがよさそうですね。
そうですね。また、音楽ではありませんが、集中力を高め、持続させるのに効果的だといわれている『音』があります。そちらも試してみてはいかがでしょう。
雑音「ホワイトノイズ」が集中力を高める!
――『音』とは、どのような音なのでしょうか?
「ホワイトノイズ」と呼ばれる音で、例をあげるなら、昔、地上アナログテレビの放送終了後に流れていた砂嵐の「ザー」という音です。
ホワイトノイズは、低音から高音まで人間が聴き取れるすべての周波数帯域の音を同程度に含んだ音(ノイズ)のことで、周囲の音を特定しづらくする効果があるといわれています。
つまり、気になる音をホワイトノイズで制することができるというわけです。
――音を音で制す!ですね。集中力も高まるのですか?
ある研究によると、ホワイトノイズをBGMとして流していると、集中力が途切れにくいことが分かったそうです。また、ホワイトノイズを聞きながら単語の学習をしてもらったところ、無音の環境で行うより記憶力が向上する傾向があったとか。*4
――集中力が続き、記憶力がアップすれば、仕事の生産性もアップしますね。
学習能力が上がるのだから、仕事のパフォーマンスも上がるかもしれませんね。YouTubeをはじめとする動画サイトで「ホワイトノイズ」と検索するとたくさんヒットしますので、ぜひ試してみてください。
ただ、ホワイトノイズを流せば必ず仕事に集中できるというものではありません。ホワイトノイズは安眠に役立つともいわれていて、新生児を対象とした研究*5 では、80%が5分以内に眠りに落ちたとのことです。仕事に集中するどころかウトウトしてしまう人もいるかもしれません。
無音の環境で集中力が高まる人もいれば、音楽を流すことで集中できる人もいます。また、ホワイトノイズで集中できる人もいれば、眠くなる人もいるし、カフェのように人の声が聞こえる場所が集中できるという人もいます。音との相性は人それぞれ。まずは、自分が集中しやすい音環境を見つけ、その環境を積極的につくることが仕事のパフォーマンスを上げることに繋がると思います。
編集部より -ホワイトノイズが聞ける動画をご紹介!
ホワイトノイズの動画は、ヘルツ(Hz)違いなどでさまざまあります。あなたに合うホワイトノイズを探してみてはいかがでしょうか?今回は3つの動画を参考までにご紹介します。
【集中脳波】 集中できるホワイトノイズ 2時間 【勉強用】 Noise 2 Hours
【12時間】75Hzホワイトノイズ【作業用BGM】12hours white noise 75Hz barulho-шум–शोर-ruido-소음-bruit-الضوضاء-
集中・睡眠のためのジェット旅客機 機内音10時間。瞑想や勉強にも最適なホワイトノイズ
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次回は、「ストレス」をテーマにした情報をご紹介します。
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<参考文献> *1 大谷 喜美江:「音楽を用いたリラクセーションの効果と心身健康科学:—成人女性の怒りの気分に及ぼす影響から—」(『心身健康科学』5巻2号)2009,pp.82-92 *2 小島 正憲:「音楽がスポーツパフォーマンスに与える影響 : 事例的論文の検証による今後の展望」(『東海学院大学紀要』(8))2014,pp. 217-224 *3 菅 千索,岩本 陽介:「計算課題の遂行に及ぼすBGMの影響について- 認知的側面と情意的側面からの検討 -」(『和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要』No.13)2003,pp. 217-224 *4 Anthony J. Angwin, Wayne J. Wilson, Wendy L. Arnott, et al.,:「White noise enhances new-word learning in healthy adults」(『SCIENTIFIC REPORTS』, Vol.7: 13045)2017 *5 J A Spencer, D J Moran, A Lee, and D Talbert:「White noise and sleep induction」(『Arch Dis Child』65(1))1990,pp. 135-137 |
※本記事で提供する情報は、診療行為、治療行為、その他一切の医療行為を目的とするものではなく、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
(文:佐藤美喜)
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