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「あなたの家に泊めてください」過酷な旅ロケでADをやってよかったと思えた話
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、はたらくことの喜びや、はたらくなかで笑顔になれたエピソードについて語る「#はたらいて笑顔になれた瞬間」投稿コンテストで入賞した記事をご紹介します。
バラエティー番組のADは多忙極まる仕事。出会った人の家に泊めてもらう旅ロケのADだったまるこさんは、素敵な夫婦に出会って「下っ端や雑用係と言われるADのやりがいを、この時、確かに感じていた」と語ります。「もうやりたくない」と思う過酷な仕事でも「やってよかった」と思えるようになったエピソードを、noteに投稿しました。
ロケ先の銭湯の脱衣所に、素敵な男性がいた
バラエティー番組のADだったまるこさんにとって、地方の旅ロケは“アタリ”の仕事でした。いつもは行けない場所に仕事として行けるのが楽しく、魅力を感じたからです。
自ら手を挙げて立候補したロケは、出演役のADが地元の人の家に泊めてもらうというもの。まるこさんは出演役ではなく、ロケを進行する裏方を担当しました。
このロケは、シンプルなものの過酷だった。人が集まりそうな場所のリサーチはしたものの、ぶっつけ本番の運次第。
ADは、オンエアだけで終わらない。より
泊めてくれる人がいなければ、出演役のADは野宿決定。
実際、見知らぬ人たちが家に来て、テレビの撮影をしたうえにスタッフが1人泊まるなんて、とてもハードルが高いお願いです。
人が集まる場所で声をかけるものの、簡単に泊めてくる人が見つかるはずがありません。
そんな一切ヤラセなしの地方ロケで、ロケ班一行は幸運な出会いに恵まれます。
出会いは銭湯の脱衣所で、突然裸で声をかけたにも関わらず、話を聞いてくれるとても優しい旦那さんだった。
ADは、オンエアだけで終わらない。より
その日はなかなか泊めてくれる人が見つからず、ロケは危機的状況に追い込まれていました。
すでに日は暮れていて、この人を逃したら恐らくロケ失敗で終わるだろう。
ADは、オンエアだけで終わらない。より
そしたらロケは延長…もしくは企画自体がお蔵入り…。
きっと私以外のスタッフも、少しの期待と残り半分以上の諦めの気持ちでいっぱいだった。
旦那さんが奥さんに電話をかけて「人を泊めてもいいか」と確認している間、スタッフは祈るように旦那さんを見つめます。
すると、無事OKとの返事が。
スタッフ全員が胸を撫で下ろしました。
そして向かった先に、印象的な奥さんが待っていたのです。
闘病中なのに明るく元気にもてなしてくれた奥さん
「いらっしゃい!遠いところから大変だね!」
家に着くと、明るく元気な奥さんが出迎えてくれました。
とても広い和装の家で、すでに全員分の晩ごはんが用意されています。
旦那さんは漁師だそうで、おいしそうな魚の煮付けが並んでいました。
とても溌溂とした奥さんですが、ガン治療の最中だと聞いてまるこさんは驚きます。
とても元気で明るい奥さんから想像出来ない話だった。
ADは、オンエアだけで終わらない。より
旦那さんは奥さんが何よりも大切で、大好きだと話してくれた。出来るだけそばにいたいと話す旦那さんの顔をみて、出会ったばかりの2人に対して、胸が苦しくなった。
闘病生活を送っているとなれば、心身共に大きなストレスがかかります。
それでも見ず知らずの他人を快く家に招き、元気いっぱいにもてなしてくれる奥さん。
そんな奥さんを何よりも大切だと言う旦那さん。
カメラを回す相手としても、これほど相応しい夫婦は滅多にいないでしょう。
無事十分な撮影を行うことができ、翌朝には手を振る夫婦に見送られながら会社へと戻りました。
ただ、ADの仕事はここで終わりではありません。
放送日まで夫婦の写真を借りたり、内容に問題がないかを確認したり……
撮影した後も、やるべきことがまだまだあるのです。
家に泊まらせてくれた夫婦はその後のやり取りにも快く応じてくれました。
『夕食でごちそうになった魚の煮付けをスタジオで再現したい!』という、上層部の無茶振りに答えるため、その地元でしか採れない魚を旦那さんにお願いして、送ってもらったりもした。
ADは、オンエアだけで終わらない。より
わざわざ朝一に市場へ足を運んでくれたことを思うと、感謝しかなかった。
無事オンエアを終えてからは、感謝の手紙、放送回をダビングしたDVD、テレビ局のマスコットのぬいぐるみ、奥さんが好きだと言っていた東京バナナを夫婦宛てに送ります。
まるこさんのADとしての役割はここまでで、これで夫婦とのやり取りは終了するはずでした。
ところが、数日後に夫婦から電話がかかってきたのです。
もうやりたくなくても、やってよかったと思えればいい
夫婦は元気いっぱいにこう話しました。
旦那さん「○○さん!色々送ってありがとう!ぬいぐるみも孫たちが喜んでたわ!」
ADは、オンエアだけで終わらない。より
奥さん「お姉ちゃんありがとうねー!東京バナナ嬉しいわぁ。またこっち来ることあったら連絡して来てね!」
お礼をした後、こんな風に電話がかかってきたり感謝されたりすることはほとんどありません。
あくまで「泊めてくれる人に“撮影させていただいている”」のであり、スタッフ側がお礼を言う立場だったからです。
行くことがなかった場所で、出会うことがなかった素敵な人達に会えたことが単純に嬉しかった。
ADは、オンエアだけで終わらない。より
下っ端や雑用係と言われるADのやりがいを、この時、確かに感じていた。
電話を切ったまるこさんは笑顔になっていました。
ADの仕事は多忙で、けして楽な仕事とは言えません。
実際、まるこさんは
もしも
ADは、オンエアだけで終わらない。より
『ADをまたやりたいですか?』と聞かれれば、
答えは『NO』だ。
と語ります。ただし、それと同時に
だが『ADをやってよかったですか?』には、
ADは、オンエアだけで終わらない。より
間違いなく『YES』と答える。
とも綴っています。
世の中ではたらき方が見直されるようになり、ハードなはたらき方が疑問視されるようになって久しいですが、仕事の満足度は、単純に時間的なゆとりだけで決まるわけではないでしょう。
今の仕事に正面から向き合い、その過程で出会う人に敬意を持って接し、行動する──。そうしていれば、大変な仕事だったとしても、いつか想像もできなかったような喜びと笑顔が待っているかもしれません。そんな経験は、人生においてもきっと大きな財産になるはずです。
まるこ AD→webデザイナー。コンテスト応募の為にnoteを始めました。 最終職歴は脚本家でありたいと思いつつ、過去の出来事から今の日常を気ままに綴っています。 |
(文:秋カヲリ)
パーソルグループ×note 「#はたらいて笑顔になれた瞬間」投稿コンテスト
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