「TOEIC300点、成績ほぼ最下位」から22社内定。“普通の大学生”が実施した就活攻略術。

2025年11月19日

スタジオパーソルでは「はたらくを、もっと自分らしく。」をモットーに、さまざまなコンテンツをお届けしています。

地方の中堅大学で成績は最低レベル、留学経験なし、資格は自動車免許のみ──、13年前、そんな「普通すぎるスペック」の大学生だった藤井智也さん。

それでも“就活”を攻略し、22社から内定を獲得。新卒で採用倍率300倍超えの大手食品メーカーに就職しました。

その後独立し、就活ブログ『就活攻略論』は8年間で2,400万PVを突破。2025年8月に発売した著書『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』(ダイヤモンド社)もAmazonベストセラーとなっています。

藤井さんはなぜ就活に夢中になり、それを仕事にするまでになったのでしょうか。自分らしくはたらくヒントを伺います。

TOEIC300点台、成績最底辺の大学生が書店で出会ったもの

──藤井さんの子ども時代について教えてください。どのような環境で育ったのでしょうか?

小学生時代は、本を読んだり絵を描いたりするのが好きな、インドアな子どもでしたね。

今思うとこのころから集団生活が苦手でしたが、神経質なくらい他人に気を使うので“合わせることができてしまう”んです。たとえば学校の校門にたむろしているヤンキーとも、うまく会話できちゃうんですよ。ある種、もっと鈍感だったら生きやすかったのかなと思います。

小学4年生のときに両親が離婚して、ぼくは母と一緒に母方の祖父母の家で暮らすようになりました。当時はヤクザが取り立てに来るレベルで家計が大変だったので、祖父母に救われた感覚があります。

「将来安定した大企業に就職するぞ」と思うようになったのも、祖父母に恩返ししたい気持ちと、「将来お金に困りたくない」という恐怖心があったからでした。ある意味、英才教育だったのかもしれません(笑)。

アニメや漫画が好きだという藤井さん。高校の夏休みは『鋼の錬金術師』を3周見て終わったこともあるという

──大学で、就活に夢中になったきっかけはなんだったのでしょうか。

もともと勉強は嫌いでしたが、理科の生物だけは好きだったので、一点突破で地元愛知県の中堅大学に入りました。県内では規模の大きい大学ですが、全国的にはあまり知られていません。

成績は最底辺で、単位もいつもギリギリ。そもそもぼくは、「絶対に成果につながる」という確信が持てるものしか本気で取り組めないタイプなんです。TOEICも300点台で、友人にめちゃくちゃバカにされていました。

大学1年生のとき、書店一体型のカフェでテスト勉強をしていて。息抜きに漫画コーナーへ向かったら、手前のビジネス書コーナーに気になる本が平積みされていたんです。正確なタイトルを忘れてしまいましたが、「お金持ちになる方法」といった趣旨でした。

すごく興味があったので、カフェに持ち込んで読んでみると、そこには「即返信・即レスが大事」など、社会人として信頼される方法が書いてあったんです。

「大学1年生のときからこれを知っていれば、社会人になったときにとんでもなく活躍できるぞ!」と興奮して、自分だけが受験の赤本を手に入れた気分になったんですよね。

──社会人になるとよく耳にすることでも、大学1年生の藤井さんには新鮮だったのですね。

同時に「就活に応用すれば、東大生にも勝てるかもしれない」と思いました。就活を100m走に例えると、ぼくだけ90mからスタートできると思ったんです。

そこから、面接官の心理を知るための心理学の本や、行動経済学、コミュニケーション術といったビジネス書や就活本を読み漁りました。

ビジネス書は社会人になっても役立つ確信があったので、月に100冊以上読めたんです。お金がなかったので、基本は書店と一体になったカフェで読むスタイルでしたが(笑)、在学中に合計1,000冊以上は読んだと思います。

就活は点数じゃない、面接官次第。その“不安定さ”に夢中になった

──なぜ、そこまで就活に夢中になれたのでしょうか。

ビジネス書や就活本を読んで気付いたんです。大学受験は点数で決まるけれど、就活は点数じゃない。あくまでも対面接官なので、企業ごとにさまざまな軸があるんですよね。この不安定さにハマってしまいました。

しかも各企業の「採用大学一覧」を見ると、大企業でも無名の大学を採用している企業がありました。それを見て、「学歴以外にも評価される要素があるんだ」と確信したんです。

──実際にはどのように就活をされたのですか?

履歴書を書くときも面接で話すときも、理由を深く語ることを意識しました。

たとえば、留学経験ってすごいじゃないですか。でも、「なぜ留学したのか?」と面接で聞かれたときに、浅い理由しか語れなければなんとなく留学したと思われてしまう。

でも逆に、「私はフードコートでお皿を下げるときに必ずお礼を言います」レベルの小さな実績でも、「ありがとうと伝えた側も気分が良くなる」「感謝することで一日の幸福度が高まる」といった深い理由を語ることができれば、留学経験に勝てるんです。

「この会社でならはたらきたい」と本気で思える企業に80社以上エントリーして、50社ほど面接を受けました。交通費や宿泊費を含めると10〜20万円ほどかかりましたが、夜行バスや漫画喫茶を使って節約しながら全国を回りましたね。

その結果、大手企業を含めて22社から内定をいただき、そのうちの1社である大手食品メーカーに入社を決めました。子どものころからその会社の商品が好きで、愛着があったからです。

──新卒で就職した2016年に就活ブログを立ち上げたそうですが、何がきっかけだったのですか。

ぼくは早くから就活を始めていたこともあって、大学のキャリアセンターの方と仲が良かったんですね。

大学4年生で大手食品メーカーに内定が決まったとき、キャリアセンターの方にそれを伝えたらすごく驚かれて、その流れで「大学3年生向けの就活セミナーで講師をやってくれないか」と頼まれたんです。

実際に200名ほどの就活生の前で就活経験を話したら、セミナー後の満足度アンケートで、「満足」という回答が100%だったんですよ。

さらに約1カ月後、保護者向けの就活説明会にも呼ばれました。そこでも何百名もの方の前で、先ほど例に挙げたフードコートのエピソードを話したところ、説明会後にたくさんの保護者の方が相談に来てくれて。

そんなにちやほやされたのは人生ではじめてでしたし、友達も少なく、個人プレーで生きてきた自分が人の役に立てたことに感動しました。

この講師経験がきっかけで「自分の経験は価値があるものなんだ」と実感して、2016年3月に卒業してすぐ、「就活マン」という活動名でブログを書き始めたんです。

著書出版のきっかけは、ブログが出版社の目に留まったことだそう

年収が5分の1になっても幸せだった3つの理由

──大手食品メーカーを1年で退職し、起業したきっかけを教えてください。

とても素敵な会社で、仕事にもやりがいがありました。一方で、自分は子どものころからそうだったように、集団行動に向いていないことにも気付いたんです。人に気を使ってビクビクしてしまうというか。

「辞めたらこんな魅力的な会社にはもう二度と入れないぞ」という葛藤もありましたが、卒業前に趣味で始めていたブログを本格的にやってみようと思い、独立を決意しました。

──独立後の生活はいかがでしたか。

平日にブログを書き続け、週末に派遣でコンサートスタッフのアルバイトなどをする生活でしたね。収入は大手食品メーカー時代の約5分の1でしたし、家賃が払えなくて胃が痛くなることもありました。

──年収が5分の1になってもブログを書き続けられた理由はなんでしょうか。

ブログを書くのは、子ども時代に絵を描いていたのと同じくらい楽しかったんです。

開設2年目までほぼ収益ゼロでしたが、平日に映画を見たり、好きな時間に好きなことができたりする自由が幸せで、生き生きしていたと思います(笑)。この自由を年収に換算したら、2,000万円くらいの価値があるなと。

もちろん安易に起業をすすめたいとは思っていません。人って毎月決まったお給料が入らないことにすごいストレスを感じますから、大多数の人には会社員のほうが合っていると思います。

ただ、独立してからは意識的に“無形の価値”を探すようにしていたんです。家族や友達がいること、好きな人とはたらけること……こうした価値ってみんな甘く見積もりがちですが、実はすごく大きいと思うんですよ。

──もう少し具体的に教えてください。

人って自分と他人を比べるとき、なぜか「数字」という1つの評価軸で比べてしまうんです。就活中の人なら内定数、転職活動中の人なら年収。でも実は、人と比べる評価軸って1万通り以上あるんですよ。

たとえば、売れっ子のアイドルと「見た目」で比べたらぼくの負けですが、「プライベートの自由度」なら勝てますよね。

だから、自分と誰かを比べそうになったら「自分が絶対に勝っている」と思う軸を1つ見つける。こうした無形の価値を洗い出してみると、案外お金ってそこまで重要ではないと気付くかもしれません。

──スタジオパーソルの読者である“はたらく若者”に、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするためのアドバイスをいただけますか。

「なぜなぜ分析」をご存知でしょうか?

トヨタ自動車で生産性向上のために生み出された思考のテクニックなのですが、自分が何に幸せを感じるのか知るきっかけになるのでおすすめです。

たとえばぼくは毎日ロードバイクで片道10キロ走るのですが、紙に「なぜロードバイクが好きなのか?」と書いてみると、「電車賃もガソリン代もかからないし、筋トレにもなってお得だから」という理由が見えてきました。

さらに「なぜお得が好きなのか?」と掘り下げていくと、「子どものころに節約生活だったから」という原体験にたどり着きました。

つまり、昔は「お金」を軸に生きていましたが、本当は「お金そのもの」よりも「お得」に幸せを感じるタイプだと分かったんです。

みんな、「年収1,000万円を稼ぐ」のように“すごい変化”をしないと幸せになれないと思いがちですが、実は「お得」が好きな人は、今の生活のままメルカリやブックオフを活用するだけで幸福度が上がるかもしれません。反対に「お金」が好きな人は、転職でキャリアアップすることが幸せへの道かもしれない。

その人にとっての幸せは刻一刻と変わるものなので、まずは毎日1分、その日思ったことを紙に書いて、なぜなぜ分析をしてみてください。

(取材・文:原由希奈 写真提供:藤井智也さん)

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ライター原 由希奈
1986年生まれ、札幌市在住の取材ライター。
北海道武蔵女子短期大学英文科卒、在学中に英国Solihull Collegeへ留学。
はたらき方や教育、テクノロジー、絵本など、興味のあることは幅広い。2児の母。
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