小5で特許取得、14歳の社長・水野舞さん。週3通学の中学3年生。「メール」に戸惑いも。

2025年8月18日

スタジオパーソルでは「はたらくを、もっと自分らしく。」をモットーに、さまざまなコンテンツをお届けしています。

今回は、14歳で株式会社マイヤリングスを経営する中学3年生、水野舞さんにお話を伺いました。

小学2年生のとき、母親がつけているピアスにあこがれて作った「耳につけないイヤリング」で特許を取得し、12歳で起業。「やりたいことが見つからない」と悩む人も多い中、水野さんの歩みは「好き」から自分らしいキャリアが始まることを教えてくれます。

中学生社長として、悩みながらも学業と会社経営に向き合う水野さんに「将来への向き合い方」について聞いてみると、その等身大の言葉には「はたらく」ことにモヤモヤを抱える人へのヒントが隠されていました。

お母さんのピアス、いいな。小さな“あこがれ”から「小学6年生の社長」が生まれるまで

――水野さんが代表取締役を務めている株式会社マイヤリングスの事業について教えてください。

株式会社マイヤリングスでは、「マイヤリング®」という独自のヘアアクセサリーを制作・販売しています。穴を開けたヘアピンに装飾パーツを通したもので、髪につけると美しく揺れるのが特徴です。この商品の特許を小学5年生のときに取得し、翌年、小学6年生で会社を設立しました。

――12歳で会社を!そもそも、どのようなきっかけでマイヤリング®を作り始めたのでしょうか?

最初に作品をつくったのは小学校2年生のとき。きっかけは、母がつけていたピアスへのあこがれでした。耳元で揺れる細長いピアスがキラキラ光っているのを見て、「きれいだな。私もつけてみたいな」と思ったんです。

でも、イヤリングやピアスは耳が痛くなるし、当時の私にはまだ難しくて。そこで「何か代わりになるものをつくれないかな」と考えた際に、ヘアピンとイヤリングを組み合わせるアイデアが閃いたんだんです。

最初の作品は、100円ショップで買ったヘアピンに毛糸を巻きつけて、ビーズや紙ストローを糸でつなげる工作から始まりました。実際につけてみると「それっぽいかも!」とうれしくなって、すぐ両親に見てもらいましたね。

すると父が「これ、もしかしたら発明なんじゃない?」と言ってくれたんです。たしかに、珍しいアイテムだったので、「本当に特許を取れるかもしれない」と家族で大盛り上がり。その後、小学校5年生で国内特許を取得し、翌年には国際特許の出願も行いました。

特許の話が出てから実際に取得するまでには数年かかりましたが、その間に「自分が発明をしたんだ」という実感が徐々に湧いてきました。

――小学2年生のときの工作が特許を取得するなんて、当時は想像もつかなかったのでは?

本当にそうです。完全に“自己満足の工作”だったので、販売や特許なんてまったく(笑)。お母さんとお揃いのアクセサリーをつけられて、ただうれしかった。それだけでしたね。

「中学生」と「会社経営」を両立する“14歳のリアル”

――現在中学3年生の水野さん。学業と仕事はどのように両立しているのでしょうか?

私は今、N中等部という通信制の学校に週3日通っています。学校がない日は、主にオンラインでの打ち合わせや、イベント登壇に向けた資料作成などを行っています。仕事で関わる方々は基本、平日の日中にはたらいているので、打ち合わせはその時間に合わせることが多いです。

また、週に1度、会社の定例会もあります。会社の役員や、特許関係でサポートしてくださっている弁理士の先生、コラボレーション先の企業の方などと、業務の進捗確認や共有をしています。そして週末には、自宅の作業場でマイヤリング®を制作。これが私の1週間のスケジュールです。

――土日にも制作を……!素朴な疑問なんですが、中学生らしく遊ぶ時間もあるんでしょうか?

はい、しっかり遊ぶ時間もあります!月に1回くらいは友人と遊んでいます。よく行くのは映画館とカラオケ。オフの日は、ほかにも自宅でドラマを見たり、映画を見たり。最近はアニメにもハマっています。

――それを聞いて、ホッとしました(笑)。同世代のご友人は、水野さんの活動をどのように見ているのでしょうか?

同級生で起業している人はとても少ないので、珍しい存在だと思います。ただ、友人たちは私の活動を応援してくれていて、Yahoo!ニュースなどで私の記事を見つけると「見たよ!」と連絡をくれます。仲のいい子に「今度イベントに登壇するんだ」と報告すると、「すごいね、頑張って!」とエールを送ってくれて、いつもとても心強いですね。

――大人と一緒にはたらくことに対しては戸惑いや苦労はありませんでしたか?

実は私、いまだにメールが苦手なんです。「お世話になっております」から始まって「よろしくお願いします」で終わる文章を書くことになかなか慣れなくて。でも、そうやってメールを書いているときに「私は社会人としてはたらいているんだな」と実感します。友達とはLINEでフランクにやりとりしている一方で、仕事ではメールやFacebookを通じてフォーマルなやりとりもしている。その、中学生と社会人の自分が入り混じっている感覚に、ときどき不思議な気持ちにもなりますが(笑)。

社会人経験ゼロ”で社長に。何も分からないからこそ大切にした「謙虚さ」と「好奇心」

――会社を立ち上げて約3年が経ちます。これまでで一番大変だったことはなんでしょうか?

最初に戸惑ったのはお金の感覚です。設立当初、小学6年生の私にとって、お年玉で受け取る1,000円や5,000円でもとても大きな金額でした。でも、実際に商談や企業との取引になると、扱う金額の桁が違う。その金銭感覚の違いには驚きました。

「もしかして、想像していたよりも大変な道を選んでしまったのかも」と頭をよぎった瞬間もあったんですが、だからといって引き返したいとは思いませんでした。「自分で考えたものを世の中に出せるチャンスが目の前にあるなら、やらない選択はないでしょ!」というワクワクした気持ちのほうが大きかったですね。

そして、今でも一番難しいと思っているのは“決断すること”です。社長になると、最終的には自分が判断しないといけない場面がたくさんあります。もちろん周りの方からいただく意見には、それぞれに正しさがある。人生経験が10数年しかない私には、その中でどう選択すればいいのか、経営判断にはとても悩みますね。

――人生経験10数年で経営判断……自分の中学生時代を思うと、それほどに大きな責任と向き合うなんて想像もできません。

会社を立ち上げたとき、「社長の仕事は“進むべき道を決めること”だ」とアドバイスをいただいてことがあって。それを聞いた瞬間に、これまでとはまったく違う責任の重さを実感しましたが、それと同時に“経営すること”の意味を少し感じられた気がしています。

――判断に迷ったとき、誰に相談しているんですか?

両親はもちろん、会社の役員の方々など、身近にいる大人に相談しています。やっぱり社会人経験が圧倒的に違いますから。「知恵を貸してください」という謙虚な気持ちで、いろいろな方に話を聞いています。人生経験が少ないからこそ「分からないことはすべて聞く」と決めていて、今でもそのスタンスを大事にしています。

――分からないことはすべて聞く——。大人でもなかなかできないことかもしれません。

うーん、でも最初から完璧に理解するなんて無理ですし、中学生がすべてを分かっていたら逆に怖いと思います。最終的には自分が決断するにしても、人に相談することで、「たくさんの人の意見を聞いた上で決めた」と言える。自分の中でしっかり納得できるし、人にも分かりやすく説明できるようになるんです。

「10年後」ではなく「今のやりたい気持ち」を信じてみよう

――水野さんは自分の好きに素直に突き進んでいらっしゃいます。ただ、中には「そもそもやりたいことが見つからない」と悩む人もいると思うのですが、その場合はどうすればいいでしょうか?

やりたいことを探すより、続けられるかどうかを基準にするといいかもしれません。私は母に「新しいことを始める時は、1年間続けられるかを考えて決めなさい」と言われて以来、「1年続けられるかな」「続けたいと思えるかな」と考えるようになりました。この視点は、とても現実的だし、判断の基準にしやすいと思います。

こんなことを言いながら、私自身、経営者として将来のビジョンをしっかり描けているかというと正直まだまだです。でも、目の前のことに向き合えていない状態で、先のことまで考えるのって難しいですよね。まずは今できることから始めて、そこから自分なりの道を見つけていけばいいんじゃないでしょうか。

――最後に、スタジオパーソルの読者である「はたらく」モヤモヤを抱える若者へ、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするために、何かアドバイスをいただけますか?

私は「10年後どうなっていたい?」「将来の夢は?」といった質問をされるのが苦手なんです。大きな未来を描くことよりも、今携わっている仕事に満足しているか、していないか、というシンプルな視点を持っていればそれで十分だと思っています。

今やっていることが好きなら、続けてみればいい。逆に、合わないと感じても、すぐに辞めたりあきらめたりする必要はないと思います。私の場合、最初は「耳に穴を開けられないからイヤリングは無理だ」と思いました。でも「つけてみたい」という気持ちに素直になって、「じゃあどうしたらできるか」を考えた結果、マイヤリング®を作ることができたんです。

マイヤリング®が始まったきっかけは、小さな小さな好奇心からでした。自分の中にあるささいな「やってみたい」の気持ちを形にする。それが、自分らしくはたらくための第一歩になると信じています。

(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり 写真提供:水野舞さん)

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ライター/作家間宮まさかず
1986年生まれ、2児の父、京都在住のライター・作家。同志社大学文学部卒。家族時間を大切にするため、脱サラしてフリーランスになる。最近の趣味は朝抹茶、娘とXGの推し活、息子と銭湯めぐり。
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