好きで始めたSNS が漫画に!「おひとりさま。」が発信する新しいライフスタイル

2022年10月20日

「より多くの人に「ひとり時間を楽しむ」という選択肢を知ってもらって、前向きにひとりを楽しめる文化が広げられたら」

そう語るのは、ひとり時間の魅力を発信するべく、「おひとりプロデューサー」としてInstagramアカウント『おひとりさま。(@ohitorigram)』を立ち上げ、運用しているまろさん。

まろさんは会社員をしながらホテル暮らしをしていて、レストランやホテルでのひとり時間の過ごし方について発信しています。どの投稿にも“おひとりさま”ならではの楽しさが詰まっていて、フォロワーは約4万人。宿泊先とコラボした、おひとりさま向けの宿泊プランを発売したり、原案となったマキヒロチ氏による漫画「おひとりさまホテル」の連載が月刊コミックバンチでスタートしたりと、さらなる広がりを見せています。

副業で「おひとりプロデューサー」の活動をしているまろさんに、キャリアについて伺いながら、ホテル暮らしを選んだ理由や、ひとり時間の魅力や楽しみ方について教えてもらいました。

ひとり時間の楽しみ方を伝えるため、副業で“おひとりプロデューサー”に

――“おひとりプロデューサー”として、ひとり時間の過ごし方について発信を始めたきっかけは?

5年ほど前、私が25歳の時に女性向けメディアで「おひとりさま特集」が組まれているのをよく目にするなかで、「ひとり時間にフォーカスするメディアがあったらいいなあ」と思い、いっそ自分で発信してみようと思ったのがきっかけです。

せっかくひとり時間の魅力を発信するんだったら、場所だけじゃなくて、その場所でどう過ごしてどんな気持ちになるかまで伝えたほうがワクワクするなと思って。私自身、ひとりで過ごすのが好きで、自分の中に「ひとりでの楽しい過ごし方」がストックされていたので、Instagramで『おひとりさま。』アカウントを立ち上げ、おひとりプロデューサーとしての活動をスタートしました。

――発信媒体にInstagramを選んだ理由は?

ひとり時間のコンテンツを届けたいのが同世代の女性だったからです。女性のほうがポジティブにひとり時間を過ごす傾向があって、その後押しができたらと思いました。

あと、画像や動画メインのInstagramは世界観を表現しやすく、雑誌みたいに情報を届けられるんじゃないかと思ったのも理由の一つです。

――まろさんは、なぜひとり時間が好きなんでしょう?

大学4年生でアメリカに10か月ほど留学した時に、ひとりでふらっと街や海に出かけて「ひとりって楽しい!」と感じたのが原点だと思います。もちろん友達と遊ぶのも楽しいんですが、ひとりだと気兼ねせず自由に過ごせるので、冒険できますし、その空間を丸ごと味わえる感覚があって。自分がやりたいことだけ100%楽しめるのは、ひとりならではだなあと。

せっかく留学しているんだから、日本人同士で固まらずに現地の人や場と深く関わりたい、という思いもありました。そういう過ごし方がすごく心地よかったので、日本に帰ってからも自分だけの時間を大事にするようになりました。

――海外のほうがひとり時間を満喫しやすそうですね。

個人的には、日本より人目が気にならなかったですね。ただ、意外と海外って、食事などはグループで食べる文化が強い場所が多くて、特に夜にひとりで外食していると割と不思議がられるんですよね。「大丈夫?一緒に食べる?」みたいな。(笑)

その点、日本はたとえば、ラーメン屋さんや牛丼チェーンなどが分かりやすいですが、結構おひとりさまに優しいというか、ひとり時間を大事にする文化がありますよね。日本人は協調性を重んじる国民性があって、集団行動を強いられるシーンも多いので、その反動でひとり時間の需要が多いのかなと思っています。

――なるほど。ちなみに、帰国してからはどんなことをされていたのですか?

大学では商学部でマーケティングなどビジネスについて学び、新卒でメディア企業に入社しました。

コンテンツを作ることよりも、作られたコンテンツをどう広げていくかに興味があって、
入社後はデジタル周りの部署でWebメディアの運用やマネタイズに携わりました。

いまも「コンテンツをどう伝えるか」「どうやって認知してもらうか」といったことに従事しているので、仕事で培った知見はおひとりプロデューサーの活動にも活きていると感じます。

おひとりプロデューサーの活動は副業で、Instagramアカウントの『おひとりさま。』が軌道に乗ってからも同じ会社で仕事を続けています。上司も私の活動を応援してくれていますし、両立できる限りはパラレルキャリアを続けたいです。

――『おひとりさま。』が軌道に乗ってもパラレルキャリアを続けている理由は?

ずっと『おひとりさま。』の活動を主軸にするかはまだ分からないので、無理に本業にする必要もないかな、と。もっとたくさんお仕事のお声がけをいただいたら本業にする可能性もありますが、会社の仕事も楽しくて充実しているので、今のところは未定です。会社に在籍していてもできるなら、まずは副業として続けてみるほうがある意味堅実ですしね。

キャリーケース1つで始めた「会社員のホテル暮らし」

――ふだんはどんな1日を過ごしていますか?

会社にいるのは大体10~20時くらいで、それ以外の時間で「おひとりさま。」の活動をしています。3年前、27歳でホテル暮らしを始めました。週末は実家に帰ることもありますが、平日はホテルで過ごします。ホテルは1週間ごとに変えることが多いですね。

出社前ギリギリに起きる日もありますが(笑)、早起きしてホテル周辺を散歩・ランニングしたり、朝ごはんを食べたりしてそのエリアを満喫する日もあります。仕事が終わったら、気になっていた飲食店やお気に入りの飲食店に行ってひとりディナーをしたり、Instagramでおひとりさま情報を発信したりして過ごしています。

――ホテル暮らし!毎日出社するのにホテル暮らしするのは大変じゃないですか?

基本的には都内のホテルを選んでいるので、通勤の負担はさほどありません。またリモートメインなので、ホテルで仕事をしています。予算は1泊1万前後で、宿泊費が高いと感じる人もいるかもしれませんが、通常の引越しのように敷金礼金はかかりませんし、家具代も水道光熱費もかかりません。宿泊費=家賃+水道光熱費+家具代と考えると、意外と現実的なラインじゃないかと思います。あと、単純に楽しくて幸せなので、払う価値があると考えています!

――確かに、何度か引越しするよりはリーズナブルかもしれません。

東京のいろんな街に住んでみたくて。東京って、街によって全然雰囲気が違うじゃないですか。「一人暮らししたいな」と思った時、都内出身なのに東京の街を知らないことに気付いたんです。渋谷や表参道など馴染みのあるお出かけエリアに行動範囲が限られていて。「せっかくならいろいろな街を見て、どの街が自分に合うのか確かめたい」という願望にぴったりくるのがホテル暮らしだったんです。

――かなり先進的なライフスタイルですね。

身近にホテル暮らしの先輩がいたことも大きかったかもしれないです。さらに、ビジネスホテルを渡り歩いている同僚もいて、すごく楽しそうだったので「私もやってみたい」と思えました。

実際、ホテル暮らしを始めるのは簡単なんです。引越しみたいに物件を探したり荷造りしたりする手間はなく、キャリーケース1つあればいつでも始められます。服や化粧品やパソコンなど、生活に必要な1週間分の荷物をキャリーケースに詰めこんで身軽に移動しながら暮らしています。おかげで東京のいろいろな表情を見られて楽しいですよ。

――『おひとりさま。』で紹介するにあたっては、何か基準を設けたりしているのですか?

本当に「良かった」と感じた場所しか紹介していないんです。PRの依頼もありますが、基本的には自分でお金を払って一般のお客さんとして利用することがほとんど。お金を受け取ってしまうと、たとえ自分が「良かった」と思わなくてもそう言わなきゃいけなくなって、メディアとしての信用や価値が落ちてしまうので……。あと、宿泊料金に見合うかどうかも大事なポイントなので、そういう意味でも自分で払って、体感したいと思っています。

投稿内容は、実際に自分がひとりでどう過ごしたかを詳しく書くようにしています。「景色がすごく綺麗だから、パティスリーを買って、部屋のコーヒーマシンでコーヒーを淹れてティータイムを楽しみました」というように具体的な描写をすることで、ひとり時間がイメージできてワクワクすると思うので。

あと、「投稿しなきゃ」って義務感が先行すると純粋な楽しさが伝わらなくなるので、ひとり時間を楽しむことを最優先にしています。分かりやすい映え写真を撮ろうとせず、自分がその場で「綺麗だな」と思った瞬間を逃さずに撮るようにしていて。だから人と違うアングルで撮影することも多いですね。それもひとりでその場に向き合っているからこそ生まれる個性だと思います。

――だからこそ、これだけ人気を集めているんですね。

でも、最初は全然見てもらえなくて、半年くらい放置していた時期もあったんですよ。Instagramのコンサルを受けて「コンセプトは良いから、表現方法を工夫して埋もれないようにするべき」と教えてもらって、ひとり時間を楽しむというコンセプトを一目で伝えられるように「おひとりさま。」って文字を写真に入れるようにしたんです。

それから「ひとりで楽しめる場所なんだ」って伝えやすくなって差別化につながり、フォロワーが増えていきました。軌道に乗ったのは2018年の夏ごろで、ちょうど東京オリンピックに向けてデザイン性が高いホテルが増えてきた時期だったので、タイミングもよかったのかもしれないですね。

ひとりを楽しむ新しいライフスタイルを浸透させたい

――まろさんは、2022年5月から連載スタートしたマキヒロチ先生の漫画『おひとりさまホテル』の原案を担当されています。その経緯は?

©まろ マキヒロチ/新潮社

マキヒロチ先生がコロナ禍で閑散としたホテルに宿泊して「何かホテルを盛り上げる仕掛けをしたいな」と考えていたときに『おひとりさま。』というメディアを知ってくださったんです。それからDMで「『おひとりさま。』を原案に漫画を描いてもいいですか」と直接打診してくださって……『おひとりさま。』の投稿を見て物語をイメージしてもらえるなんて、夢みたいでした。

というのも、マキヒロチ先生の漫画『いつかティファニーで朝食を』が大好きで、いつか先生に漫画を描いてもらえたらいいなってぼんやり夢見ていたんです。でも、まさかその夢が叶うなんて思っていなかったので、DMを見て飛び上がってしまいました。

『いつかティファニーで朝食を』は、女性たちの日常を通じて、“朝食を楽しむ”という新しいライフスタイルを提案している漫画です。漫画のストーリーの中で、ナチュラルに新しいライフスタイルを提案しているのが、本当にすごいなと思っていて、私もひとり時間を楽しむライフスタイルを提案したいので、マキヒロチ先生の考え方や思いにはすごく共感していて。

2023年1月に単行本の1巻が発売される予定なので、ぜひ読んでもらってひとりステイの魅力を感じてほしいです。

――楽しみです!ちなみに、一人で食事をしたり、宿泊したりしてみたいけど勇気がでない、という人へのアドバイスはありますか?

確かに「ひとり時間に憧れはあるけど、勇気が出ません」という相談は多いです。でも、周りの人ってそんなに自分のことを見ていないんですよ。むしろひとりで食事をしていると「楽しそうでいいね」って声をかけられて、うらやましがられます。だから「ひとりでこんなに楽しんでいるんだぞ」って、相手の価値観を変えるくらいの気持ちで過ごしたほうが楽しめると思います。

ただ、そもそも全員にひとり時間が必要だとは思いません。本当に自分がひとりで過ごしたいのか、それとも誰かと時間を共有したいのか、まずは自問自答するのが大事。私だって人に会って自分の話を聞いてほしい時もありますし、さみしければ友達を呼びます。自分がどんな時間を過ごしたいかを理解して、それに従って行動するのがベストじゃないでしょうか。

建築家がデザインする隠れ家的リゾート・ホテル『ししいわハウス』(軽井沢)にて、おひとりステイ

――最後に、今後はどんな活動をしていきたいか教えてください。

より多くの人に「ひとり時間を楽しむ」という選択肢を知ってもらって、前向きにひとりを楽しめる文化が広げられたらと思います。そのために、自分が素敵と感じたいくつかのホテルとコラボして、おひとりさま用のステイプランを作っていて。そのほかにもおひとりさま向けのホテルや飲食店を紹介する本を出すなどして、いつかは海外にも活動の幅を広げていきたいです。

日本はホスピタリティが高くて、ひとりで来店しているお客さんをケアしてくれる文化があるんですね。何度も通っていると店員さんとすごく仲良くなって、施設や料理の魅力を説明してくれたり、近くのおすすめスポットを教えてくれたりして、ひとり時間がより楽しくなります。皆さんにもそんな新しい発見をしてもらえたら、と思います。

(文・秋カヲリ 写真提供・まろさん)

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エッセイスト・心理カウンセラー秋カヲリ
1990年生まれ。ADHD、パンセクシャル、一児の母。恋愛依存や産後うつなどを経験し、現在は女性の葛藤をテーマにしたコラムを中心に執筆。求人広告→化粧品広告→社史制作→フリー。2018年にYouTuberメディア『スター研究所』を公開、2021年に『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』を出版。

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