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26歳正社員の編集者が、焼肉屋でアルバイトを始めて気づいたこと。
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、好きなことを仕事にしてキャリアに行き詰まったエピソードをご紹介します。
正社員の編集者としてはたらく藤本 健太郎さんは、26歳で焼き肉店でのアルバイトを始めます。毎日はたらく過密スケジュールですが、あえてアルバイトを始めた理由がありました。焼肉屋でアルバイトして得た気づきをnoteに投稿しました。
※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」から抜粋したものです。
昼は社会人、夜と休日は飲食のアルバイト
編集者である藤本 健太郎さんは、編集者としてはたらきつつ、焼肉屋でのアルバイトを始めました。
平日の日中は「編集者」、夜と週末は「焼肉屋」という二足の草鞋生活です。
社会人になってから、兼業で飲食店でのアルバイトを始める人はそうそういないでしょう。
その理由について、藤本さんは「頭でっかちになっていたから」と言います。
当時、仕事がぜんぜんうまくいってなくて、一丁前に「編集とはなんぞや?」みたいなことに悩んでいました。
「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」より
編集者は「言葉」や「文脈」といった、ものすごく概念的なものをあつかう仕事です。悩めば悩むほど、頭のなかでいろんな情報がグルグルするだけの悪循環におちいってしまい、爆発寸前でした。
「これではダメだな」「強制的に頭より手足を動かす環境に身を置かねば」ということで、飲食店でアルバイトすることにしました。焼肉屋にしたのは、焼肉が好きだったからです。
仕事での行き詰まりをリセットするために、あえて始めた役肉屋でのアルバイト。
全くの畑違いの仕事をゼロからスタートして、気づいたことは多くあったそうです。
1つめは「仕事で評価されているのはスキルに過ぎない」ということ。
バイト初日、学生のバイトリーダー格の子から配膳や網の替えかたを教えてもらいました。30分ぐらい簡単なレクチャーを受けたあとは、実際に接客。
「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」より
その際は、バイトリーダーの子から「8番卓の網、替えといて!」「5番卓にハラミ持っていって!」などタメ口で指示をうけていました。
学生からタメ口で指示を受けた藤本さんは
「あ、世の中に”絶対的なモノサシ”なんてないんだな」
と感じたと言います。
編集者としてはたらいているときは、インターンの学生に指示を出す立場の藤本さん。
その立場は、焼肉屋で逆転しました。
環境によって、モノサシは変わる。
「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」より
もっと言えば、モノサシで測れるのはその人の「スキル」に過ぎないのであって「人そのもの」ではないのだなと実感しました。
それまで藤本さんは、編集の仕事がうまくいかないと
「ああ、ぼくという人間はもうダメだ……」
と自分そのものを否定してしまっていたと言います。
焼肉屋でアルバイトをして編集の仕事以外のモノサシを持ったことで、仕事で得る評価はあくまでスキルであり、場所が変われば評価されるスキルも変わることに気づいたのです。
それから「所詮は仕事」といい意味で割り切れるようになり、健全にはたらきやすくなったと語ります。
久しぶりに「初心者」に戻り、気づいたこと
藤本さんがもう1つ学んだことは、「定期的に初心者になる大切さ」でした。
出勤3日目、初めて入った週末のシフトで事件が起こります。
週末となるとお店は満席で、子どもや海外の観光客も多く、イレギュラーな対応を迫られました。
藤本さんはてんてこ舞いで「テンパっていた」と言います。そして起きた小さなミスが、思わぬ事態を招きました。
店長から「これ運んで」とパッと渡されたお肉が、どこの部位かわからないままテーブルへ向かい始めてしまった。
「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」より
着いた瞬間「あれ、なんのお肉だっけ?」と思ったのですが、いまから引き返して聞くと「まだ運んでなかったの?」と言われそうでイヤだなと思い、強行突破することを決断。
一か八か、頭にパッと浮かんだ「タンです」と言ってテーブルに置いたところ、お客さんから「いや、これ絶対タンじゃなくない?」と言われてしまいました。
ハラミをタンだと言って出してしまったわけですが、よりによってそのお客さまは常連の上場企業社長でした。
藤本さんのミスは社員に伝えられ、店長からも
「分からなかったときはちゃんと確認してから出してね」
と叱られます。
さらに、2週間後に視察に訪れた社長から直々に呼び出され、
「あなたが藤本さんですか。あなたの軽率な行動ひとつで、お店が潰れることもあるんだよ」
と大いに怒られたそうです。
こういった初歩的なミスをする「初心者」に立ち返った藤本さんは、長らく初心者の感覚を持っていなかったことに気づきます。
慣れている仕事だと、新人へのフィードバックが抽象的になったり、不安に寄り添えなかったりと、初心者の気持ちがわからなくなることがあります。
だけど、定期的になんらかの初心者を経験することで「そうだ。最初からできる人なんていないんだ」「最初はそもそも何がわからないのかがわからないんだ」といったことを、思い出すことができる。
「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」より
そう考えて「謙虚な感覚を持ちつづけることは、人としての振るまいやマネジメントなどの場面ですごく役立つ」と知った藤本さんは、定期的に初心者に戻る大切さを実感したのでした。
はたらく場によって、自分が発揮できる価値が変わる
そのほかにも、藤本さんが気づいたことはたくさんあります。
社会人だからと期待値を上げずに、ミスしたときに指摘されやすくなるよう、あえて暗く振る舞っていたら
「テンション高く元気にやってもらったほうが職場が明るくなるし、ミスしたときも『ちょっとしっかりしてくださいよ!』って言いやすいから、こっちとしてはありがたい。なにより藤本さん自身も働くのが楽しくなりますよ」
と言われました。
そこで笑顔であいさつしてテンション高くはたらくようにしたら、編集の仕事で落ち込んだ日も焼肉屋のホールに出れば元気が出るようになったのです。
「ミスしたのに反省していないと思われるのが嫌で、自分のために落ち込んでいたのかも」
と気づき、落ち込んでからすぐに気持ちを切り替えられるようになったそうです。
どうすればいいかを頭で考え、それを表情や行動でアウトプットする飲食の仕事をすることで「体全体の血の巡りが良くなった」とも語ります。
いろいろと無駄に考えすぎて爆発寸前だった頭は、ひとまずおさまりました。この効果があっただけでも、焼肉屋で働き始めてよかったです。
「編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした」より
焼肉屋での藤本さんは、たくさんの仕事をテキパキこなすオペレーション業務は苦手ですが、1対1でのコミュニケーションは得意です。編集の場では、藤本さんよりコミュニケーションがうまい人もたくさんいますが、オペレーション業務が苦手な人も多いそうです。
複数のモノサシを持ち、場に応じて自分の「得意」「不得意」を冷静に分析できるようになると、その場ではたらく自分の価値を高めやすくなります。
仕事がうまくいかなくて落ち込んだり行き詰まったりしたら、藤本さんのように働く場を変えて「初心者目線」を持つと、新しい可能性が見えてくるかもしれません。
「仕事で評価されるのは自分自身ではなくスキル」と上手に割り切り、気持ちを切り替えて前向きにはたらきやすくなるでしょう。
<ご紹介した記事> 編集の仕事がぜんぜんうまくいかないから、焼肉屋のバイトで修行することにした 【プロフィール】 藤本 健太郎 経営者さんの言葉を届ける「顧問編集者」をしています。つぶやく内容は取材や編集、コンテンツなど。関西学院大学→株式会社wevnal→個人事業主→株式会社WORDS。趣味は漫才をすること。コンビ名はBOTCHAN BOYSです。 |
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