会議にギャルを送り込む「ギャル式ブレスト」。日産自動車など大手から人気のワケ

2025年2月4日

「ギャルは小さな自己表現や欲求を大切にするから、自分らしく健やかにいられるんです」

――こう語るのは、企業の会議にギャルを送り込む「ギャル式ブレスト®︎」を展開するCGOドットコム・総長のバブリーさん。中学校まで優等生として生きてきた彼女の人生は、16歳でギャルに出会ったことで一変しました。

そんな彼女が考案した「ギャル式ブレスト®︎」は、ギャルと企業が忖度のないコミュニケーションを軸に、意見を出し合うプログラム。パーソルホールディングス株式会社や日産自動車株式会社など、数々の企業から依頼が殺到しています。いったいなぜ、今の日本にギャルマインドが求められているのでしょうか?ギャルマインドが変える企業と日本の未来について、バブリーさんにお話しいただきました。

自分軸で意思決定を行うギャルマインドこそ、ビジネスシーンで活きるはず

──バブリーさんとギャルとの出会いを教えてください。

実は私、中学時代は成績オール5で生徒会長を務めるほどの優等生だったんです。両親はともに公務員で、恵まれた家庭で育ったけれど、特にやりたいこともなく毎日をなんとなく生きてきました。

それが、高校入学初日に担任の先生から「東大に行きなさい」と言われたことで、初めて自分の人生や将来について考えるようになって。「本当は何がしたいんだろう?」と悶々と悩むうちに、学校に行かなくなり、ついには家を飛び出しました。地元・山梨から、大阪にある知り合いの家にお世話になる中で出会ったのが、ギャルです。

ギャルといえば、巻き髪やつけま(つけまつげ)などの派手なファッションが注目されがちですが、私が最も憧れと尊敬の念を抱いたのは彼女たちが持つマインドでした。

他人の評価や周りの大人が望むことを軸に生きてきた16歳の私にとって、マイルールを持って直感的に、力強く生きる彼女たちの姿は衝撃的でした。その後、私は高校を中退。自分自身もギャルとして生きることを決めました。

──ギャルマインドとは、どのようなものだと捉えていますか?

「他人ウケより自分ウケ」で意思決定を行う自分軸、「それいいじゃん!」「かわいい」と自分の感情を素直に表現する直感性、そして物事を前向きに進めるポジティブ思考。この3軸がCGOドットコムが定義するギャルマインドです。

16歳で出会ったギャルの生き様や、自分自身がギャルとして生きてきた経験、また、令和に生きるギャルをリサーチした結果からこのように定義付けました。

──ギャルマインドが活きる場として、企業の会議に着目した背景を教えてください。

私は、ギャルには頭が良い子が多いと思っているんです。頭の回転が速く、瞬時に自分の意見を言えて、コミュニケーション能力も高い。でも、この賢さが評価されている場は少ないと感じています。ギャルの頭の良さやギャルマインドの価値が最大限活かされる場所を探して、過去にはさまざまなサービスを展開し、試してきました。

そうした試行錯誤の結果、一番手応えを感じたのが「ギャル式ブレスト®︎」。忖度のない意見やユニークなアイデアが不足している企業の会議にこそ、ギャルの存在が強く求められたんです。

──ユニークで真新しいサービスだからこそ、初めは苦労も多かったのではないでしょうか?

特に、大手企業とのコミュニケーションにはめちゃめちゃ苦労しましたね。そもそも、変革に慎重な企業向けの稟議書に「ギャルマインドは~」と書いても絶対に通らないですから(笑)。とにかく対話を重ねて、私たちだけがサービスを提供するスタンスではなく、どうしたら一緒に企業を変えていけるのか、そのために私たちはどう関わればいいのか、企業と一緒に場を創る「共創」のスタンスで乗り越えてきました。

SNSで馬鹿にされることもありましたが、「できるわけないじゃん」という意見は、私がチャレンジしているからこそ生まれるものじゃないですか。変革にアンチは付きものなので、世の中にない新しいことをできている実感がありました。

令和ギャルと企業が意見を出し合う「ギャル式ブレスト®︎

──「ギャル式ブレスト®︎」はどのようなサービスですか?

「ギャル式ブレスト®︎」とは、令和ギャルと企業が直感的で忖度のないコミュニケーションを軸に、意見を出し合うプログラムです。ギャル講師として現在15名程が社内に在籍しており、ブレストの際にはその中から4~6名を企業に送り込みます。ここでは、ギャルマインドを浸透させるための5つのルールがあります。

1.タメ語で話すこと
2.お互いをあだ名で呼び合うこと
3.相手の発言を否定しないこと
4.5分以上沈黙しないこと
5.持っている服の中で一番好きな服を着ること

これらを新入社員から役員まで、参加者全員にお伝えします。ブレストの目的やテーマの共有、上記の5つのギャルマインドの贈呈、プロフィール帳の記入と自己紹介を終えたら、いよいよブレストスタートです。

ギャルのマストアイテム“プロフ帳”

ブレストでは、会社の「アゲ」なところや「らしさ」を考えた上で、自分と会社をつないだ先にある未来についてみんなで考えます。未来がどうなれば自分が「アガる」のか、自分と会社が「アゲ」になるには何が必要なのかを軸に、とにかく自由な発想で意見を出します。

──ブレスト前には「ギャルの祈り」というコーナーもあるとか。

お祭りの音楽を流しながら、ギャルが「リピートアフターミー!ギャル怖くない!ギャル怖くない!」と言い、会議に参加している全員で「ギャル怖くない!」と祈るコーナーです。

実は、「ギャル式ブレスト®︎」がメディアで頻繁に取り上げられる以前は「ギャルが怖い」という感想も結構あって……。これを社内のギャルに相談したところ「怖くないって、みんなで祈ればいいと思う♪」と言われたんです(笑)。

試しに導入してみたら、意外にもアイスブレイク的な役割を果たしてくれて。会社員として真面目にはたらいている自分を忘れ、ギャルマインドを受け入れる時間としてとても良かったので、途中からプログラムに追加しました。

──これまでで特に印象的だったブレストはありますか?

JR貨物(日本貨物鉄道株式会社)さんと実施した「輸送の未来」を考えるためのブレストは印象的でした。インフラを担う鉄道会社は、どちらかといえば「挑戦」よりも「安全・安心」が求められるし、会社も保守的な印象がありますよね。

でも、JR貨物さんは、時代やテクノロジーの進化に合わせて新しいものを生み出していきたい、という想いが社内で生まれていて、そのタイミングで依頼をいただきました。

ブレスト終了後に、若手の女性社員の方から「自分は唯一のギャルマインド保持者として、社内に新しい風を吹かせるべく孤独に奮闘してきた。でも、今回のワークを通して隣の上司もギャルマインドを持っているのが分かってうれしかった」とコメントをいただいて。ブレストを通して新たなアイデアが生まれるだけでなく、コミュニケーション改善のきっかけにもつながることを実感できましたね。

普段はたらいていて、上司や同僚と100%本音で話せることなんて少ないじゃないですか。本来は自分が主語で良いところを、「会社」と主語を大きくしてしまうことで、真面目な意見や、建前しか言えなくなることもありますよね。本音で話せる空気感を設計できるのが、私たち「ギャル式ブレスト®︎」の良いところだと考えています。

大手企業にマインドセットの変革が求められるわけ

──過去には日産自動車株式会社や三菱鉛筆株式会社などから依頼を受けたこともありますよね。なぜ、ここまで大手企業からの依頼が途絶えないのでしょうか?

顧客や市場ニーズの移り変わりが激しい今日においては、社会全体に「新しいことをやらなければいけない」という空気が生まれています。しかし大手の企業さんには既に成長のために積み重ねてきたノウハウがあり、新しい取り組みを検討する際に大きなバイアスとなってしまう場合があるようです。

新規事業を立ち上げようとしても、今までの延長線上のアイデアばかりになったり、ユニークなアイデアは何かしらの規定に引っかかることで批判されたりということが起きてしまっている。

私たちが提供するサービスは、まさに「マインドセットの変革」です。論理よりも直感で、会社ではなく自分は何がしたいのかを考えていく。生まれたアイデアを否定せずに「それ、いいじゃん!」と広げていく。こうした「ギャルマインド」の要素が、多くの大手企業の方々には刺さっているようです。

──今後のサービスの展望や、CGOドットコムでバブリーさんが成し遂げたいことはありますか?

多様化した価値観をつなげる仕組みづくりにチャレンジしたいです。「多様性」が叫ばれる世の中ですが、多くの会社や自治体、国の意思決定層においては、現状同質性が高くなってしまっていると感じています。

本当の意味での多様性とは、さまざまな価値観を持った人同士が対話を続けた先に生まれるものだと思います。おじいちゃんだけで考えたらAしか生まれなかったのに、おじいちゃんとギャルと子どもで話し合ったらB、C、D……と次々に新しい意見が生まれるかもしれない。こうしたコミュニケーションの設計を、まずは「ギャル式ブレスト®︎」から少しずつ実現していけたら嬉しいですね。

日常の小さな「アゲ」を大切にして

──ここ数年、特にZ世代を中心にギャルマインドへのあこがれが強まっているように思います。なぜ今、社会にギャルマインドが求められているのでしょうか?

今の若い世代は、「やりたいこと」と「求められること」のギャップに苦しんでいる気がしますね。正直10代や20代で本当にかなえたい大きな夢を持っている人は少数派だと思っています。でも、周りの大人からは当たり前のように「人生でやりたいことは?」「将来の夢は?」と大義名分を求められる。

ギャルマインドを持っている子は「人生」や「将来」よりも、まずは「今」を生きています。たとえば、踊りたいと思ったら踊るし、ポテトを食べたくなったらすぐ食べるし。小さな自己表現や欲求を大切にするから、自分らしく健やかにいられるんです。

大きな夢や目標などなくても、毎日の「アゲ」を大切にして生きればいい。そんな今の自分を肯定してくれるものとしてギャルマインドが求められているのではないでしょうか。

──かつてのバブリーさんのように、既存の価値観や他者の声に囚われて、生きづらさを抱えている人も多いと思います。こうした人が、自分軸でポジティブに生きるためにはどうしたら良いでしょうか?

みんな心にギャルを飼って、育ててみるのはどう?自分の思ったことを直感的に口に出したり、「今のバイブスどう?」と鏡に向かって毎日聞いてみたり。

社会や他者が決めた「~すべき」に従い続けると、自分が本来持っていた「やってみたい」という気持ちはどんどん失われていくと思う。どんなに小さな望みであっても期待していいし、口に出していい。心の底からそう思える自分になるために、「それいいじゃん!」と肯定してくれるギャルの人格を心に置いてみるのがオススメです。

あと、勘違いされやすいのですが、ギャルはいつも自信満々なわけじゃないんですよ。もちろん、「サゲ」なときだってあります。でも、最高のアゲをつかむには、最低のサゲを受け入れなくちゃ!ポジティブでいられない時があっても、ダメだと悩む必要はまったくありません。無理をせずにあるがままに、時が経つのを待っていれば、自然とバイブスは上がってくるはずです。

(文・写真:水元琴美 編集:いしかわゆき、おのまり 写真提供:CGOドットコム様)

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ライター / 俳優水元琴美
「書く」×「演じる」の二刀流で「忙しない日々をちょっと豊かにする」をテーマに活動中。学生時代のメディアディレクターインターンシップをきっかけに “書く仕事” を始める。現在は主にインタビュー記事やコラムを中心に執筆。書く以外にも、写真撮影や映像出演など、さまざまな方法を通してコンテンツを世に届ける。映画、舞台、写真が好き。

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