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窓際の後輩・ヒロタくんがお人好しですごすぎる話
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、はたらくことの喜びや、はたらくなかで笑顔になれたエピソードについて語る「#はたらいて笑顔になれた瞬間」投稿コンテストで入賞した記事をご紹介します。
職場には華々しい活躍をするスタープレイヤーもいれば、そうしたプレイヤーの活躍を人知れず支えるサポーターもいます。今回ちあきさんがエッセイに綴ったのは、後者のサポーターである「窓際の後輩くん」です。人知れずはたらく後輩くんの活躍と、彼から受け取ったポジティブな気持ちについてnoteに投稿しました。
窓際の後輩・ヒロタくんの隠された秘密
経理職員のちあきさんは、早く出社してたまった伝票を片付けるのが好きでした。早い時間帯に出社すると、会社には朝の新しい空気に包まれた静かな空間があり、仕事が捗るからです。
ちあきさんがどれだけ早く出社しても、必ず席に座っている人がいました。それが一年後輩の「ヒロタくん」です。事務室のドアを開けると、直線上の窓際にヒロタくんの席があり、すぐに彼がいることが分かります。
小柄に、おっとりした目の温顔で
窓際の後輩くんはお人好しすぎるより
小岩井のカフェオレをよく飲んでいる。
入社以来、ヒロタくんは2年間ずっと早く出勤し続けているそう。
そんなヒロタくんは物静かで自己主張もあまりしません。
動きがちょっとカタくて律儀な彼は、
窓際の後輩くんはお人好しすぎるより
いつもあまり多くを話さない。
その分周りで飛び交う人の話を、
資料に目を落としつつ
時たま微笑んで聞いている。
個性豊かな係長や先輩のキャラクターに埋もれてしまうのでは?と心配になるくらい大人しい後輩でしたが、ちあきさんは彼のすごさをよく知っていました。
「他人のための仕事」を人知れず続けるすごさ
ヒロタくんのすごさは、人よりも早い出勤した時の行動に隠されていました。
彼はいちばん早く職場に着いてから、
窓際の後輩くんはお人好しすぎるより
事務室のドアの鍵を開け、
窓を開けて換気して
必要であれば空調の電源を入れる。
4社の新聞を綴じ具に整えたら、
部屋にある加湿機の水を取り替える。
それから、係の棚に届いた書類を
担当者ごとに振り分け、
その人の席にふせて置いていく。
他の部署から問い合わせがあれば
進んで話を聞いて対応するし、
物品の補充をしたりもする
これらはすべてヒロタくん自身の業務ではなく、ヒロタくん以外の人をはたらきやすくする気遣いです。
「後輩だからやりなさい」と上司から強いられたわけではありません。
自分で「これをしておいたら楽になるのでは」と思われることを見つけ、だれに言われるでもなくやり始めたのです。
ヒロタくんはこれほどたくさんのことを早朝にひとりで行いつつも、
「ボクは何もしていません」
という顔で過ごしていて、完全に自分のルーティーンにしていることも、ヒロタくんのすごさです。
だから周りもなかなかそのすごさに気が付きません。
みんなはその後出社して
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何も知らないまま仕事に取り掛かる。
良くも悪くもごく自然に、スムーズに、
いつもと変わらない朝が始まる。
自分以外の人のために朝からこれだけのことをやっていたら、少しくらい認めてほしくなる人がほとんどではないでしょうか。
でもヒロタくんにはこうした自己承認欲求がなく、人知れずひっそりとサポートしています。
彼にとって気づいてもらえるかどうかはどうでもよく、みんなが気持ちよくはたらけることが大事なのでしょう。
実際、わざわざ早く出社して事務室の環境を整えたり、郵送物を振り分けたりすることは、自分の評価を第一優先しないヒロタくんだからこそできる行為でもあります。
こうしたヒロタくんのすごさをしっかり認識しているのは、ちあきさんだけなのでした。
大勢への親切にも「ありがとう」を忘れない
ちあきさんはこう考えていました。
私たちは、
窓際の後輩くんはお人好しすぎるより
一対一の親切にはすぐに、
「ありがとう」が言えるけれど
大勢に向けられている親切に対しては
感謝を言葉にすることに
慣れていない。
ましてや、自分が知らない場所でいつもしてもらっていることとなると、なおさら「当たり前」になってしまって感謝の気持ちが生まれにくくなります。
お母さんが毎日作ってくれるお弁当のようなものでしょう。
日常に溶け込んでしまい「やってもらって当たり前」だと感じてしまうのです。
でも、実際にヒロタくんのような「見せない心くばり」を続けられる人はそういません。
ヒロタくんがいるからみんなが気持ちよく働ける場所が支えられているんだ、と感じたちあきさんは、ヒロタくんに声を掛けました。
「いつも、すごいね」
ヒロタくんは高速で手を振りながら「え、いやいやいやいや、ボクは何も」と否定し、ちあきさんはちょっと笑ってからこう続けます。
「私、実はもうすぐ仕事
辞めることになってるんだ。
結婚するから引っ越すの。
だから、言えるうちに
言っておこうと思ってさ、、毎朝こうやって色々やってくれるおかげで
窓際の後輩くんはお人好しすぎるより
みんな助かってるよ、ありがとね」
ちあきさんはそう伝えることに緊張しましたが、言葉にできてよかったと顔がほころばせました。
せっかく一緒にはたらいていて、少なからず感謝の気持ちを抱いているなら、伝えないともったいないです。
言葉にしないまま自分や相手が辞めることになってしまったら、その「ありがとう」は一生伝わりません。
あらためて職場の同僚に「ありがとう」と伝えるのは恥ずかしいかもしれませんが、仕事だって軸にあるのは人間関係です。
どれだけ真摯に同僚と向き合えるかで、はたらくやりがいやおもしろさも変わっていくでしょう。
ヒロタくんに素直な気持ちを伝えられたちあきさんも、
あと少し、私も
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一緒に働く人たちの役に立てるよう、
働こう
と思い、辞めるまでの2か月をより前向きな気持ちで迎えられるようになりました。
自分以外のだれかのためにはたらくこと。
そんなだれかに「ありがとう」を伝えること。
どちらの行動も、より清々しい気持ちではたらくきっかけになりそうです。
ち あ き 26歳、日々の綴り。 本、ことば、朝、お花、だし巻き玉子が大好きです◎ |
(文:秋カヲリ)
パーソルグループ×note 「#はたらいて笑顔になれた瞬間」投稿コンテスト
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