港区家賃3万7千円YouTuber・岡田康太とは何者?19歳で地上波レギュラー芸人から転落/『岡田を追え!!』

2024年12月6日

スタジオパーソルが運営するYouTubeでは、さまざまなはたらく人の履歴書から「私らしいはたらき方」について深掘りインタビューを行っています。

今回は、「港区家賃3万7千円男」として人気を集めるYouTube「岡田を追え!!」を運営する岡田康太さんに話を伺いました。港区の住宅街にある築60年超の木造アパート。その6畳一間の部屋が岡田さんの活動拠点です。

19歳でフジテレビのレギュラー番組のセンターを務めながらも「収録に行きたくなかった」と語る岡田さん。芸人からYouTuberへと転身し、自分らしいはたらき方を見つけるまでの道のりを聞きました。

※本記事はYouTube『スタジオパーソル』の動画一部を抜粋・編集してお届けします

岡田康太さんが19歳で味わった“地上波レギュラーでセンター”の重圧

岡田さんがお笑いの魅力に取り憑かれたのは小学4年生の時。NHKの番組『ハッチポッチステーション』で、タレントのグッチ裕三さんが歌う童謡『不思議なポケット』の替え歌を耳にしたのがきっかけでした。

「もとの歌詞を活かしながら『ポケットを叩くとビスケットが“割れた”』と最後だけ変える。その意外性に、お腹がちぎれるくらい笑ったんです。次の日、学校で『なんでこんなおもろかったんやろ』って考えた時に、その仕組みに気付いて。『すごい!そういう工夫が大事なんや』って。それ以降、友達を笑わせることにハマっていきました」

中学校に入って休み時間に友人と漫才を披露し始めると、教室に人が集まって来るように。さらに、工業高校に進学後は高校生向けのお笑いイベント「M-1甲子園」で、3年連続地区予選を制するまでに至ります。

その後、先輩に声をかけてもらって東京でのライブに出演した岡田さん。ここで転機が訪れました。ライブを見ていたフジテレビのスタッフの目に留まり、若手芸人発掘オーディション番組『新しい波16』への出演が決定したのです。

『めちゃ×2イケてるッ!』や『はねるのトびら』など、数々の人気番組に出演する芸人を生み出してきた同番組。岡田さんも周囲の期待に応えるかのように、オーディションを通過し、19歳でフジテレビ『ふくらむスクラム!!』のレギュラーに抜擢されました。

しかし、その期待は想像以上に重いものでした。

「『やばい』と思いました。嫌な意味で。レギュラーにはかまいたちさんとかニッチェさんとか、いつもテレビで見ていた先輩たちがいて。その中に何も知らんアマチュアの僕がいる。『大丈夫か、これ。やばいんちゃうか』って、まったく自信がなくて」

毎週木曜と金曜の2日間、打ち合わせと収録が朝から晩まで続きます。その中で、期待に応えなければという重圧と、自分の実力不足への不安が、次第に岡田さんを追いつめていきました。

「もう収録に行きたくなくて、イップス(※)みたいになってたんですよ。ここまで注目される状況でやったことがないから『スベるの怖っ!』って。1回目の収録は何とかやりましたけど、2回目からは引き出しがなくなって、ずっとスベってました」

(※)極度の緊張やプレッシャーによって、普段できていたパフォーマンスができなくなる症状

半年後、番組は『1ばんスクラム!!』に移行。同時に岡田さんはプロダクションへの所属も決まり、晴れて“プロのお笑い芸人”になりましたが、それは新たな不安の始まりでもありました。

「アマチュアの時は、素人がやってる面白さがあった。でもプロになると、その武器がなくなる。また『怖っ!!』ってなって。またしんどいこと起きてるやんって」

結局、この番組は半年で終了しましたが、岡田さんが19歳で味わった挫折は、自分らしさを模索する長いトンネルの入り口に過ぎなかったのです。

どん底の生活から見つけた“哲学”。「ギャップがコンテンツになる」

レギュラー番組終了後には、漫才コンビも解散。同棲していたパートナーとの関係も終わり、家賃を払い続けることができなくなった岡田さんは住む場所を失いました。友人宅を転々としながら、時には公園で夜を明かすことも。

「誰に声をかけても泊まれないときは、外で寝るしかないんで……。そんな感じで2、3ヶ月過ごしてました」

かつてテレビの前で輝いていた19歳のセンターは、23歳で路上生活を経験することになります。そんな時、ふとした周囲からの誘いが再び人生の転機となりました。

「仲のいい後輩に『ホノルルマラソン走ろう』って誘われて。今までだったら断っていたと思うんですけど、なぜかその時は『行こう』って」

友人や友人の親からも借金をして実現したハワイ行き。しかし本番当日、前日に立ち寄ったピザ屋にカバンごとゼッケンを忘れてきてしまいます。

「ゼッケンなしで42.195kmを完走したんですけど、GPSデータ上で記録が残らなかった。ピザ屋にずっといることになってしまって(笑)。日本からわざわざお金を払って出場したのに、“ずっとピザ屋にいるやつ”みたいになって」

この失態をインスタグラムに投稿すると、お笑い芸人のヒコロヒーなどから「めっちゃおもしろい」「ほんま岡ちゃん最高やな」といったコメントが。この時、背伸びしてハワイまで来て、しっかり練習もして、それなのにゼッケンを忘れるという“抜けた失敗”に笑いの可能性を見出したのです。

その後、元先輩の紹介で、家賃3万7000円の物件に入居。当時は港区が高級住宅街だとは知らず、ただ「安いから」という理由で決めました。

お金がなくライブ会場を借りられなくなった岡田さんは、6畳一間の自室でお笑いライブを始めます。1回500円、8人限定の昼夜2公演。そこに通っていた今の隣人から「YouTubeやりませんか」と声がかかり、YouTubeチャンネル「岡田を追え!!」が誕生します。

YouTubeを始めてからさまざまなジャンルの本を読み始めたという岡田さん。渋沢栄一さんの名言集や楠木建さんのビジネス書などが並ぶ本棚を眺めながら、自身のコンテンツ作りについて、こう語ります。

「僕、『渋沢栄一の言葉』とか、楠木健さんの『ストーリーとしての競争戦略』がめちゃくちゃ好きで。そこから東洋哲学とかも勉強するようになったんです。陰陽の考え方でいうと、港区が“陽”だとしたら、家賃3万7000円って“陰”ですよね。このギャップを組み合わせることで、人を惹きつけることができる」

東洋哲学から学んだ「陰陽」の考え方と、ホノルルマラソンで気付いた「背伸びして挑戦したのに失敗する」というギャップの面白さ。これらを組み合わせ、独自のコンテンツへと昇華させていったのです。

無理して八方美人になるより、好きなことに「没頭」したい

以前のように「お笑い芸人として成功したい」という想いは、もはやないと岡田さんは言います。

「才能もないのに無理をして売れても、きっとしんどくなるんですよね。でも今は、好きなことをやっているだけなのに収入を得られる。こんなんでお金をもらっていいんかなって思うくらいです」

仕事や人間関係に悩む人へ、岡田さんはこうアドバイスします。

「人の目を気にしすぎると、八方美人になってしまうんですよ。でもそれって、自分にも周りにも良くないというか、最悪な状態なんです。むしろ、人目を気にせず好きなことに没頭していれば、最初は『何してんの』って言われても、次第にその姿勢に惹かれてみんな好きになってくれる」

最後に、岡田さんに今後の目標について伺いました。

「あんまり遠くに目標を設定していないんです。今、YouTubeで大好きなことをやっているので、それを大好きなまま集中して続けていきたいですね」

※今回お伝えし切れなかったフルバージョンの動画はYouTube『スタジオパーソル』にて公開中

(文:間宮まさかず 編集:おのまり)

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ライター/作家間宮まさかず
1986年生まれ、2児の父、京都在住のライター・作家。同志社大学文学部卒。家族時間を大切にするため、脱サラしてフリーランスになる。最近の趣味は朝抹茶、娘とXGの推し活、息子と銭湯めぐり。
著書/しあわせな家族時間のための「親子の書く習慣」(Kindle新着24部門1位)

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