陽気なマッチョが日本を変える!スマイルアカデミー・AKIHITOが手がける「筋肉事業」ってなんだ?

2023年7月11日

「菜の花畑でマッチョをつかまえて」。2021年5月、そんな文言とともにTwitterに投下された写真が話題を集めました。写真に写るのは、菜の花畑で追いかけっこをする2人の男性……。さらけ出した上半身はバキバキに鍛え抜かれており、思わず二度見してしまいます。

この投稿を仕掛けたのは、福岡県福岡市に拠点を置く株式会社スマイルアカデミー。マッチョのフリー素材写真のみならず、筋肉紳士集団「ALL OUT」やトレーニングジムの運営などを手がけています。こうした「筋肉事業」はどのような経緯で誕生したのでしょうか。代表のAKIHITOさんに話を伺うと、日本の将来を見据えた壮大な目標を打ち明けてくれました。

話題になった「マッスルプラス」のフリー素材

500名のマッチョを束ねるスマイルアカデミー

──スマイルアカデミーが展開している「筋肉事業」について教えてください。

筋肉紳士集団「ALL OUT(オールアウト)」、マッチョのフリー写真素材サイト「マッスルプラス」、マッチョにまつわる情報サイト「BODY HACK(ボディハック)」、そのほかパーソナルトレーニングジムなどを運営しています。

事業の柱ともいえるALL OUTは、「筋肉紳士」をコンセプトとするパフォーマンス集団です。依頼を受けると、選抜メンバーがイベントや企業の社内行事などに出向き、自慢の筋肉でオーディエンスを盛り上げます。

全国各地にネットワークを広げており、現在は500名近いメンバーが在籍しています。メンバーの顔ぶれは、医者、経営者、格闘家など多種多様。うちのジムのトレーナーやWEBからエントリーし選考したメンバーなどで構成されています。中には、40代から筋トレに目覚めた遅咲きのマッチョもいますよ。

こうしたネットワークを活かして、マッチョに特化したキャスティングもしています。広告モデルやCM出演、テレビのバラエティ番組に出演してもらったり。時には、YouTube動画に登場することも。「細マッチョ」「スポーツ経験者」「大胸筋がデカい」など、依頼主の細かなリクエストにも応えます。

──さまざまなニーズがあるんですね。

コラボレーション企画も盛んで、2023年3月にはエール管弦楽団主催のクラシックコンサートに参加しました。題して「筋肉協奏曲 マッスル!ハッスル!クラシック!」。歴史あるサントリーホールの舞台で、私を含めた5人のマッチョがオーケストラに合わせてポージングの舞を踊りました。

変わったところでは、2018年福岡市長選挙PR動画にも出演したことがあります。若年層の投票率を上げるために企画されたもので、コンセプトは「選挙に行くための強い筋肉をつくる」トレーニング動画。

奇抜な内容がウケたようで、TwitterにUPされた動画は10万回以上再生されました。若い人たちが選挙に関心を持つきっかけにはなったかな、と。

マッチョたちが輝ける場所をつくりたい

──AKIHITOさんはいつから、筋トレに目覚めたのでしょうか?

今の姿からは想像もつかないと思いますが、私はもともと身体が弱かったんです。低出生体重児で産まれ、おまけに小児喘息も患っていました。病院通いが幼少時代の日常です。細い身体がコンプレックスで、いつしかアニメや漫画に登場するムキムキのヒーローに憧れを抱くようになりました。

ひ弱な自分を変えたくて、小学生のときに陸上競技部に入部しました。高校の陸上部で筋トレをするようになると、筋肉がつき身体が大きくなっていく。成果が見えてくるとコンプレックスも薄れていき、性格も前向きになっていきました。

そして、大学1年のときに転機が訪れます。「卒論制作を手伝ってほしい」と、同じ大学の先輩から協力を仰がれたんです。卒論の研究テーマは「筋トレだけで陸上競技の記録をどこまで伸ばせるのか」。その被験者として、私に白羽の矢が立ちました(笑)。

先輩の申し出は断われないので、それから3ヵ月間、ひたすら筋トレしまくりました。競技記録は全然伸びませんでしたが、肉体は明らかに逞しくなりました。ここまで変わるものかと、自分でも驚いたくらい。大学の競技終盤はそ筋トレの方がメインだったかもしれません(笑)。

──筋肉事業の構想はいつごろから?

順を追って話すと、私は大学卒業後、人材採用・人材紹介の会社に入社しました。中小企業に向けて求人掲載の営業をかけていたのですが、業績は振るわずにうだつの上がらない状態……。仕事への興味は薄れ、モチベーションも下がる一方でした。

とうとう会社勤めに限界を感じて、先のことを決めずに会社を辞めることを決めました。その後すぐにスマイルアカデミーを立ち上げたのが2018年3月のこと。関わる人たちが笑顔になれるようにと「スマイル メイク スマイル」をコーポレートスローガンに掲げました。

とはいえ、事業内容はとくに決めておらず、完全な見切り発車でした。手さぐり状態で始めた学童保育事業やクーポンサイト事業も早々に頓挫する始末。創業から1年半の間は無収入で、貯金もどんどん減っていく。当時の状況を一言で表すなら“地獄”でしたね。ただ、起業を後悔したことは一度もありませんでした。

経営難の真っただ中にあった2014年8月、筋肉事業が始動します。きっかけは、ボディメイクコンテストに参加したことでした。それまでは趣味の範囲で筋トレに励んでいたので、競技者として筋肉と向き合ったのはこのときが初めて。華やかなステージや客席から注がれる視線が今でも脳裏に焼きついています。

ほかの参加者たちの筋肉もかっこよくて感動ものでした。その一方で、これほど労力と時間をかけて身体を仕上げても、マッチョが輝ける場所がほとんどないことに気付いたんです。せっかくの筋肉美を持て余しているのはもったない。なんとか現状を打破できないものかと考えた結果、導き出された答えが筋肉紳士集団ALLOUTの結成だったんです。

国内外から注目を集める、マッチョのフリー素材

──ALL OUTを立ち上げたときの評判を教えてください。

手始めに、福岡で「マッスルカフェ」を開催しました。これは、マッチョたちによるショータイムや交流ゲーム、フォトセッションなどが楽しめるイベント。前例のない企画だったので少し不安はありましたが、蓋を開けてみたら想像を上回るほどの盛況ぶり。参加した女性客の多くが満面の笑みで帰っていくんです。その光景を目の当たりにすると、こちらまでうれしくなり、大きな達成感を得られました。

Twitterでもバズって「マッスルカフェいきたい」がトレンドワードに。これはイケる!と思い、東京でも開催しところ、200名分のチケットが即完売。そこから弾みがついて、事業が少しずつ上向いていきました。

──バズるといえば、フリー写真素材サイトのマッスルプラスもTwitterで度々話題になりますね。2021年5月に投稿した「菜の花畑でマッチョをつかまえて」の画像が3.1万リツイート、11.7万いいねを集めました(2023年3月時点)。

マッチョ2人が菜の花畑でキャッキャウフフしている“違和感”がウケたのでしょう。長く温めていたネタなので、撮影できたときは嬉しかったです。

マッスルプラスは海外でも知れ渡っているようで、世界各国からアクセスがあります。台湾からのアクセスが全体の7割りを占めた月もありましたが、理由は定かではありません。マッチョ写真が我々の手を離れて、一人歩きしている状態。マッチョには、言葉の壁が存在しないことを改めて実感しました。

──それにしても、なぜマッチョの写真をフリー素材にしようと思ったのでしょうか?

企業のホームページにしろ、プレゼン資料にしろ、このごろはフリー素材の画像を多用しますよね?けれど、よくよく考えてみたら、マッチョのフリー素材って意外と少ない。アジア人のモデルともなると、さらに数が限られてきます。それならば私たちが素材を提供すればいい、と半ば勢いでサイトを立ち上げました。

せっかくなら、クスっと笑えるような写真にしようといろいろなシチュエーションで撮っていたら、どんどんエスカレートしてしまって(笑)。撮影するカメラマンも「何が正解なのかわからない……」といつも困惑気味。用途不明の写真が積もり積もって、3,000点を超えるまでになりました。

2022年に本格的にスタートした「筋肉で地方創生!」もマッスルプラスから派生した企画の一つ。いつものノリで、全国各地の観光地や特産品のPR写真を撮っています。これまでに、福岡県八女市の茶畑、兵庫県姫路市の「太陽公園」、宮崎県高原町の皇子原温泉などとコラボしました。

──マッスルプラスがどのように収益をあげているのかが気になります。

開設当初から収益化は考えていません。地方創生企画も地域貢献の意味合いが強いので、必要経費を除いて無報酬です。ただ、マッスルプラスを見た人からイベントにお呼びがかかったり、キャスティングの依頼が舞いこんだりするので、そこで帳尻を合わせている感じです。

──宣伝効果があるとはいえ、なかなかできることではないと思います。その原動力はどこから湧いてくるのでしょうか?

好きなことをやっているから、ここまでできるのだと思います。マッスルプラスは一回のロケで数千カットを撮るのですが、写真のセレクトもまったく苦になりません。むしろ、撮影時のことを思い出して楽しんでいるくらい。筋肉事業は仕事と遊びの境界があいまいだからこそ、継続してこれたのだと考えています。まわりの人たちもハッピーになれるし、マッチョ冥利に尽きるというものです。

日本の筋肉人口が増えればGDPが上がる!

──筋肉事業は、まだまだ広がりを見せていきそうですね。

2022年からは「マッスルプラスplus」というYouTubeチャンネルで、マッスルプラスのメイキング動画やマッチョがやってみた動画を配信するようになりました。まだ詳細は公表できませんが、マッスルプラスの素材と次世代のデジタル技術を掛けあわせる企画も進んでいます。

また、いずれは教育分野への進出も考えています。成長期を迎えている小中学生や高校生などに、フィットネスやトレーニングの大切さを伝えたい。なぜなら、日本におけるフィットネス普及率はわずか3%程度だと言われてるからです。

フィットネス普及率の低さは、国民の健康問題にも影響を与えているはず。健康寿命が縮むと労働人口も減ってしまい、経済はやせ細ってしまいます。裏を返せば「日本の筋肉人口が増えればGDPが上がる」ということだと思っています。筋肉事業を通じて、ぼくの想いを多くの人に知ってもらいたいですね。

(文:名嘉山直哉 写真:小池大介)

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ライター名嘉山 直哉
紙媒体、WEB媒体で活動。健康、移住、郷土料理、散歩、DX、IoT……と、専門メディアでなければ執筆のジャンルは問わない。本業の傍ら「富士そばライター」(非公式)を名乗り、「名代富士そば」の魅力を発信している。
「富士そば原理主義」 https://fujisobamania.com/

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