1時間6,000円が相場「レンタル彼女」とは。10年で3,000人の“彼女”になったよもぎちゃんに聞いた。

2025年11月7日

はたらく情報メディア『スタジオパーソル』が運営するYouTubeでは、仕事終わりの晩酌まで1日密着し、はたらく本音を深掘りする番組をお届けしています。

今回お話を伺ったのは、10年間で3,000人以上の“彼女”を演じてきた「レンタル彼女」よもぎちゃん。大学2年生でこの仕事を始め、総務や秘書など一般企業での勤務を経て、今は個人事業主として活動しています。常識にとらわれずに行動してきたよもぎちゃんの経験から、「自分らしくはたらく幸せ」を得るためのヒントを探ります。

※本記事はYouTube『スタジオパーソル』の動画を一部抜粋・編集してお届けします

90分だけの彼女。「レンタル彼女」の仕事内容とは?

レンタル彼女とは、「決まった時間だけ、依頼者の彼女になる仕事」です。一般的な相場は1時間6,000円程度と言われる中、よもぎちゃんは独自の「90分自由料金」*でレンタルを受け付けています。依頼者は1円以上なら自由に金額を決められる仕組みで、デート中の飲食代や交通費はすべて依頼者負担とのこと。
*注)現在は60分自由料金に料金体系を変更されています

「今日は10時から品川で1件、その後新宿、夜に銀座と、全部で3件のデートがあります。土曜日なのでちょっと多めです」

朝9時、よもぎちゃんは今日のスケジュールを確認しながら、忙しそうに1日の準備を進めていました。香水をつけながら彼女は言います。

「会った瞬間にふわっといい香りがすると、『今、よもぎちゃんと一緒にいるんだな』って嗅覚からも伝えられるじゃないですか。あらゆるところから特別感を演出したいんです」
一般的に「レンタル彼女」と聞くと、主な依頼者は男性というイメージがありますが、よもぎちゃんの場合は約半分は女性だと言います。単に話し相手が欲しい人や、男性が苦手な人、友人には言いづらい話をしたい人など、依頼の理由はさまざまです。

デート中、よもぎちゃんが気をつけているのは“仕事感”を出さないこと。依頼者が席を外して戻ってきた時はスマホを触らず、会話中の表情や相槌も大きめに。「腕組みとかも全然しますよ」と話すように、手をつなぐなどの適度なボディタッチは行いますが、「これがマックス。それ以上の身体接触をすることはNGです」とはっきりとした線引きも設けています。

こうした細やかな気配りと明確なルールを持ちながら10年間、3,000人以上の人に“彼女”として寄り添ってきたよもぎちゃん。しかし、彼女がレンタル彼女という一般的には珍しい道を選んだ背景には、意外な過去がありました。

合コンが育てた自信「コミュ力があれば人生なんとかなる」

よもぎちゃんがレンタル彼女として歩み始めたのは、将来への不安と向き合っていた大学時代でした。勉強が得意ではなく、自分の可能性に自信が持てずにいたと言います。

「学校の成績が人生を左右すると言われるような教育環境で育ったので、将来への不安を感じていました」

小学校から高校まで受験なしで進学できる一貫校に通っていたよもぎちゃんは、新しい人間関係を築く機会が少なく、「めちゃめちゃ人見知りでした」と当時を振り返ります。

そんな彼女の人生を変えたのが、大学時代に数多く参加した合コンでした。初対面の人との会話を重ねるうちに、新たな価値観に出会います。

「合コンは90分間、絶対に同じメンバーと過ごすじゃないですか。つまらない時間にしたくなくて、どうにか盛り上げようと頑張るうちに、自然とコミュ力が上がりました。そこで『コミュ力を磨けば社会に出ても何とかなるかもしれない。それなら勉強が得意じゃない私も今からでも挽回できる』と思ったんです」

その実践の場として大学2年生の時に始めたのが、レンタル彼女の仕事でした。最初はアルバイト感覚だった仕事も、多くの人と出会ううちにやりがいを感じるようになったと言います。

最終的には「社員としてはたらかせてほしい」と頼み込むほどまでに仕事に熱中していたよもぎちゃんでしたが、「新卒では一般企業で経験を積んだほうが、レンタル彼女のキャストとしての幅も広がる」とアドバイスを受け、ベンチャー企業の営業職として社会人生活をスタートさせます。

結婚後は「家事もちゃんとしたい」と派遣社員に転向し、エンタメ関連企業の秘書や税理士法人の総務などさまざまな職場を経験しました。細かい事務作業や数字が苦手だったため、大学生時代の合コンで培ったコミュニケーション力を活かして、とにかく人間関係づくりに注力したそうです。

「普段から周りと良い関係を築いておいて、いかに失敗した時に助けてもらえるかを常に考えていました」

例えば、誰に頼まれずとも率先してお茶出しを担当し、自然と職場の人と会話する機会をつくっていたのだとか。大学時代、そして社会人生活での対人スキルが彼女の強みとなり、後のレンタル彼女の活動にも大きく活かされていったのです。

「お金を稼ぐ」だけじゃない。ある依頼者が教えてくれた「対価を受け取る」ことの意味

離婚を機にレンタル彼女の活動を本格化させたよもぎちゃん。最初は派遣の仕事と掛け持ちしていましたが、「そろそろいけるかな」と思い切って独立したところ、コロナ禍が直撃します。

「レンタル彼女なんて不要不急の外出の極みですから。『あ、脱サラのタイミング間違えた』って本気で思いました」

当時は月に2〜3件しか依頼がなく、アルバイトをしながら生計を立てていたと言います。

「もう『レンタル彼女としてやっていけるかな』なんてレベルじゃなく、不安しかなかったです。夜も眠れなかったし、『人生終わった』と思っていました。でも脱サラしちゃったから、やるしかなかったんですよね。本当に踏ん張るしかなかった」

そうして諦めず活動を続けてきたよもぎちゃんは、徐々に依頼数を取り戻していきました。特に、依頼者とのエピソードをSNSでイラスト付きで丁寧に紹介するようになってからは、「話を聞いてほしい」という依頼が増えたそうです。

そんなある日、40代の男性依頼者が仕事で受け取ったという日雇い給料5万円が入った封筒から、3万円をレンタル料として彼女に渡します。この時の経験が、はたらくことに対するよもぎちゃんの価値観を大きく変えました。

「今まで当たり前のようにレンタル料を受け取っていたけど、『この人ははたらいて手に入れた大切なお金を、私のために払ってくれているんだ』と衝撃を受けました。“お金の重み”を目の当たりにしたというか。『仕事でお金をいただくのことが当たり前だと思っちゃいけないな』とあらためて感じました」

それからは、依頼者との時間をより一層大切にするようになったと言います。彼女にとってレンタル彼女という仕事は、単なる収入源を超えた意味を持つようになりました。

「いろいろな人のいろいろな話を聞けるのは、シンプルに楽しいですね。みなさん、他の人には言えないような話を持ってきてくれるので、すごく濃い話がたくさん聞けるんです」

“彼女”として3,000もの人生に寄り添い、その一期一会の関係から生まれる特別な信頼関係が、彼女自身の人生をも豊かにしています。

自分らしくはたらきたい。でも「周りの目が気になる」人へ

よもぎちゃんは、10年間のレンタル彼女としての経験をこう振り返ります。

「ずっと『これを手放したら、私には何もない』と思っていたから、しがみつくしかなかったんですよね。この道を選ぶか、落ちぶれるかの2択だって、今思うと極端な考え方をしていました。でもそれくらい、この仕事は私のアイデンティティみたいなものだったので、これまで周囲からどんな意見を言われても気にしなかったですし、気にしたら負けだと思っていました」

一見すると孤独に決断を下してきたようにも見えるかもしれません。しかし、よもぎちゃんは自分軸で選択をしてきたから、かえって自分らしいはたらき方を見つけられたと語ります。

「総務や秘書をしていた時も悪い環境じゃなかったんですけど、私、変化がないとすぐ飽きちゃうタイプなんですよね。そこから自分が熱中できる仕事に注力しようと思い切って独立して。コロナ禍という厳しい状況ではあったものの、だからこそ『自分にとって“はたらく”とは、“人と関わること”』だと気付けました。レンタル彼女の仕事をする選択をしていなかったら、こんなにも多くの人と出会える人生はなかったと思います」

最後に、はたらくことにモヤモヤを抱える若者へのアドバイスを伺いました。

「やっぱり大事なのは、周りの意見を無視することですね。大体の人は“守り”の意見をくれるので。やりたいことがあるなら、まずは自分でやってから周りに言うのがいいと思います。やらなかった後悔って、やった後悔より絶対に大きいから」

まだやりたいことが見つからない人にも、よもぎちゃんはこんなメッセージを送ります。

「たくさんの人に会って、いろいろな話をして、さまざまな価値観を取り入れるといいんじゃないかな。『今日はハズレだったな』と思う日もあるけど、数を打たないと当たらないから。ぜひもっとフットワーク軽くなってみてください」

レンタル彼女という一般的には珍しい仕事を通じて、よもぎちゃんは自分だけの「はたらく幸せ」を見つけました。よもぎちゃんは今日も笑顔で誰かの“彼女”になりながら、本当の自分で生きています。

(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:おのまり)

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ライター/作家間宮まさかず
1986年生まれ、2児の父、京都在住のライター・作家。同志社大学文学部卒。家族時間を大切にするため、脱サラしてフリーランスになる。最近の趣味は朝抹茶、娘とXGの推し活、息子と銭湯めぐり。
著書/しあわせな家族時間のための「親子の書く習慣」(Kindle新着24部門1位)

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