1時間5,000円が相場「レンタル彼女」とは。レンタル彼女歴10年のよもぎちゃんに訊いた。

2024年12月20日

「レンタル彼女を始めて、今年で10年になります」

そう語るのは、“レンタル彼女”としてSNSを中心に人気を集めるよもぎちゃん。大学2年生のころから活動を始め、依頼ゼロの状態から2時間3万円の「日本一高いレンタル彼女」へと登り詰めました。

まだ謎の多い「レンタル彼女」の仕事内容や、よもぎちゃんが10年にわたって老若男女問わず、たくさんの利用者から支持されてきた秘訣について伺います。

レンタル彼女なのに、利用者の半数以上が「女性」。その理由とは?

──まず、「レンタル彼女」とはどんな仕事なのか教えてください。

レンタル彼女とは、その名のとおり「彼女をレンタルできるサービス」のことです。デートに行く、悩みや相談を聞いてもらうなど、本物の恋人と一緒にいるような時間を過ごせます。

ただ、手をつないだりするなどの軽いスキンシップを除いて、身体接触はNG。利用料金は派遣する会社や人によって違いますが、1時間あたり5,000〜6,000円程度が相場です。事務所に所属して活動するキャストも多いですが、私はフリーランスで活動しています。これまでに2,500人以上の老若男女の方にレンタルしていただきました。現在は、ほぼ毎日依頼を受けている状態で、多いときは、月30〜40件ほどご依頼をいたくこともあります。

https://x.com/yomogimon00/status/1814978668302827535
(「レンタル彼女よもぎちゃん」として、SNS上で依頼を募集している)

——すごい実績ですね。よもぎちゃんは、なぜレンタル彼女を始めようと思ったんですか?

私がレンタル彼女を始めたのは21歳、大学生のとき。きっかけは……失恋です(笑)。「男で傷ついた心は男で癒すしかない」と思い、レンタル彼氏を借りようと思ったんですよ。でも、ホームページをじっくり見てみても、レンタルしたい彼氏が見つからない。すると、たまたまレンタル彼女を募集しているページに辿り着いたんです。読んでいるうちに興味が湧いて、潜入捜査をするような気持ちで「やってみるか!」と応募しました。

実際にレンタル彼女としてはたらいてみると、思いのほか楽しくて。デートをするよりも、指名してくれた人の話を聞いているのが好きでした。奥さんをデートに誘って断られてしまった方を慰めたり、好きな子と付き合いたいという方にアドバイスをしたり、家庭や会社で本音を話せないという方の弱音を受け止めたり。

レンタル彼女って、単なるデートサービスではなくて、人の心の隙間を満たす仕事だと思うんですよ。まったくの初対面でも、彼女や親友と同じような距離感で会話をしたり、一緒に時間を過ごしたりすことができる。その親密な「距離感」こそが、皆さんが買ってくれているものなんだと思います。

——そんなニーズがあるんですね。よもぎちゃんに依頼をする利用者はどんな方が多いのでしょうか?

老若男女問わず、さまざまな利用者さんがいらっしゃいます。本物の彼女のようにデートを楽しみたいという方もいれば、「ただ話や悩みを聞いてほしい」、「モテるために率直なアドバイスがほしい」、「一人では行きにくいお店やテーマパークに付き合ってほしい」など、要望は多岐にわたります。

独身の方だけでなく、パートナーがいる方からも恋愛相談を聞いてほしいと依頼を受けたり、夫婦で私をレンタルしてくださる方もいたりするんです。また、最近では私に依頼してくださる利用者さんの半数以上を女性が占めているんですよね。

——レンタル彼女といえば、利用者のメインは独身男性のイメージがありました。女性が多いのはなぜですか?

「ガールズトークがしたい」「女子会をしたい」といった要望を持っている人が意外といるんですよ。女性にしか理解できないような悩みを抱えていたり、友だちには話せないような相談をしたいと思っていたり。年齢層も幅広く、20代から60代までさまざまな女性に依頼いただいています。

https://x.com/yomogimon00/status/1821494770448929230
(レンタルされた際のエピソードを、マンガにしてXで公開しているよもぎちゃん)

依頼数ゼロから、「日本一高いレンタル彼女」へ。その理由は?

——2時間3万円、「日本一高いレンタル彼女」まで昇り詰めたよもぎちゃん。始めた当初から安定して依頼があったのでしょうか?

それが、始めてから3カ月間は依頼がほぼゼロだったんですよ。最初はレンタル彼女を派遣する事務所に入っていたのですが、スタッフの方から「君、可愛くないよ」って言われたりして……(笑)。

——そんな時代も……!なぜでしょうか?

私が本来の自分ではない、取り繕った自分で利用者さんと接していて、レンタル彼女として、デートをのびのびと楽しめていなかったのが原因だと思います。

当時のレンタル彼女界隈では、ゆるふわとした服装で、小動物のような可愛らしさのある、一般的に男性が想像するような「理想の彼女」を具現化したようなキャストが人気だったんです。

だから、私も可愛らしい彼女を演じるよう頑張っていたのですが、それがまったく合っていなかったんです。自分の中で不自然さを消化しきれなくて(笑)。

そこで、キャラクターをつくるのはやめて、「自分でやりたいようにやって、指名が来なかったら諦めよう!」と素の自分で勝負することを決めました。宣材写真も、ゆるふわなテイストから、赤リップを塗ってキリッと強いイメージへ。

彼女というよりも、「仲良しの女友だち」のように、さっぱりとした性格を持ち味にして、ズバズバと忖度なく発言するように切り替えてからは依頼件数が急増しました。

現在も、私をレンタルしてくださる利用者さんは、女友だちのように気兼ねなく話せる「よもぎちゃん」というキャラクターを楽しんでくれる方がほとんどです。だからこそ、利用者さんが老若男女問わず幅広いんだと思いますね。

——「本来の自分」で仕事をするようになってから、依頼数が増えたんですね。

そうですね。あとは、レンタル彼女としての覚悟が決まったことも大きいのかも。そもそも、レンタル彼女として顔を出して依頼を募ることはそれなりにリスクがあることですし、水商売でもあるので、茨の道だとは感じているんです。でも、「私はレンタル彼女としてやっていくんだ!」と決めて真剣に取り組むようになってから「自分の軸」が定まったように思えます。

活動を隠すキャストも多い中で、私はSNSやメディアでも積極的に「これが自分の仕事です!」と打ち出してきたからこそ、小さな業界でも多くの依頼をいただき、結果的にレンタル彼女が自分のアイデンティティになったのだと思いますね。

依頼数が増えるにつれて、レンタル料も上がっていき、気付けば2時間3万円の「日本一高いレンタル彼女」となりました。今はより多くの人にレンタルしてもらいたいなと、90分自由料金でレンタル受け付けております。1円以上で依頼者さんの払いたい額を決めていただいています。

(ちなみに今までで一番低かったのは、「330円」だそうです)

悩みを受け止めるレンタル彼女から、人生を好転させるアドバイザーへ。

——よもぎさんは現在、レンタル彼女以外にも恋愛や婚活を指南するアドバイザーなどもしていますよね。

これまで2,500人を超える利用者さんのお話を聞いているうちに、恋愛や結婚に悩みを抱えていたり、自分の気持ちを吐き出せず苦しんでいたりする方が多いことに気付いたんです。そこで、ただ彼女としてレンタルしてもらうだけでなく、悩み相談やアドバイスに特化したサービスを立ち上げようと決めました。現在は恋愛をサポートする事業を立ち上げたり、結婚相談所とタッグを組んで婚活のサポートをしております。

悩みを抱えている人の多くはコミュニケーションに課題があることが多く、ある意味コミュニケーションの専門家である私が伴走することで解決できることがたくさんあるので、始めて本当に良かったと思っています。

また、今年からはメンズに特化した結婚相談所でデートトレーニングも行っております。私をレンタルしてくださる方の中には、恋愛経験が少なかったり、女性から好意を向けられた経験が少なかったりと、いわゆる「モテない男性」も多いんです。

そんな方から「自分を磨いてモテるようになりたい」「恋愛や結婚をしたい」と相談を受けることがあるのですが、そもそも最低限の清潔感やコミュニケーションスキルを持ち合わせていないことも……。とはいえ、身近な人がモテない男性に対して率直な意見を言うってかなりリスクが高いじゃないですか。相手を傷つけるかもしれないし、それによって関係性が崩れてしまうかもしれないし。

——たしかに、周囲が言いづらいことを言ってくれる存在は必要ですよね。

モテない男性と接してきた確かな実績がある私だからこそ、説得力を持ってズバズバ指摘できると思っていて。

「汗臭いかも」「汚れた服は着ちゃだめだよ」など、マイナスをゼロにするアドバイスから始めて、ちゃんとステップアップしていけば、人は必ず変われるはず。

実際に、これまで婚活コンサルティングでサポートしてきた男性も、素直にアドバイスを実践してくれる方はきちんと結果を出せています。利用者さんが幸せに向かって変化していく姿を見られるのが、私自身も本当にうれしいんですよね。

真剣に自分自身に向き合う人のサポートをして、人生を好転できる人を増やすのが今後の目標です。

(文:目次ほたる 編集:おのまり 写真:深谷亮介)

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ライター / 編集目次ほたる
2000年生まれ。家事代行業、ベンチャー企業での経理事務を経て、独立。現在は取材記事やエッセイを中心に執筆。おもしろい働き方に興味があり、自身もフリーランスとして新たな働き方を模索中。

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