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女子高生の本音を聞いて、時給1100円のアルバイトを続けたくなった
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、自信をなくして仕事から逃げたくなったときのエピソードを綴った記事をご紹介します。
塾でアルバイトを始めたMayu.さんは、その仕事の大変さから「1年で辞めよう」と決めました。ところが、初めて「先生」と呼んでくれた生徒・ナナちゃんが、思わぬ本音をこぼしたことでその計画は崩れていきます。高校生の教え子から、逃げたい気持ちとの向き合い方を教えてもらったエピソードを、noteに投稿しました。
※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「初めてわたしを先生と呼んでくれた女子高生が、わたしに教えてくれたこと。」から抜粋したものです。
1年だけのつもりで始めた割の合わないアルバイト
もともと人に何かを教えるのが好きだったMayu.さん。
かつては塾のアルバイトは「割に合わない」と思い込んでいたそうですが、大学2年生の夏に
「人生で“先生”って呼ばれるチャンスって、これが最後じゃね?先生って呼ばれたい!!」
と思い立ち、ついに塾でのアルバイトを始めました。
実際、そこでのアルバイトは割に合わないと感じたそう。
仕事は大変で、それに対する時給も物足りないと感じたため
「1年経ったら辞めよう」
と決意しました。
念願の「先生」呼びを初めてしてくれたのは、高校2年生のナナちゃん。
Mayu.さんが英語の担当教師になると、ナナちゃんの成績はすぐに成績が上がりました。
わたしが担当になった次の定期テストで、95点を取って、クラス1位になった。
「初めてわたしを先生と呼んでくれた女子高生が、わたしに教えてくれたこと。」より
と言ってもわたし的に「これをした!!」みたいな実感がなくて、塾長に褒められても
「何もしてないっすよ、マジで。」
という感じだった。
ナナちゃんは授業のコマ数を増やすことになりましたが、スケジュールの関係ですべてのコマを担当できず、ベテランの吉田先生と2人で受け持つことに。
厳しくしっかりと指導する吉田先生に対して、Mayu.さんは30分も雑談することもあるほど“ゆるい”指導をしました。
そしてゆるゆるとした授業を続けるうち、辞めようと思っていた1年の節目を迎えます。
ナナちゃんの受験まではあと1年ありましたが、Mayu.さんは辞める意思を塾長に伝えたのです。
アルバイトを辞めたかった本当の理由
Mayu.さんは塾長に
「大学3年生で就職活動も始まるし、サークルも引退前最後の年なので、頑張りたいから」
と言いましたが、本当の理由は就職活動でも、サークル活動でも、割に合わないと感じていた時給でもありませんでした。
Mayu.さんは、先生としての自分に自信がなく、不安だったのです。
ヨシダ先生が加入してからのナナちゃんは、明らかに勉強量が増えたし、覚える単語の量も質も上がったし、成績ももちろん上がった。
ヨシダ先生はわたしに相談しながら指導してくれたけど、さすがの経験と知識量で論理的な学習計画が組まれていた。わたしなんかがずっとやっているよりも、ヨシダ先生にやってもらった方がナナちゃんのためだ、って思って、
大して指導力もなくて、教えるのは楽しかったけど得意ではなくて、
分かってくれているのかくれていないのか、分からない時間が怖かった。だから、逃げようとしていた。
「初めてわたしを先生と呼んでくれた女子高生が、わたしに教えてくれたこと。」より
そんな本心は打ち明けないまま、ナナちゃんに辞めることを伝えました。
「先生、辞めちゃうの?」
「うん、でもナナちゃんとはこれからも会いたいって思ってるし、勉強もいつだって教えるよ」
ナナちゃんは「そっかあ」と呟いただけでした。
ところが、その2週間後に塾長に呼び出され、思わぬ交渉をされます。
わたしじゃなくてもいい、はずなのに
Mayu.さんを呼び出した塾長は、こう言いました。
「大川先生、辞めるの、考え直してくれない?」
「え、どうしてですか?」
「ナナちゃんがだいぶショック受けちゃってるみたいでさ。お母さんも、最近食事もまともに摂らないんです、って心配していて。担当減らしても良いから、考え直してくれない?」
Mayu.さんは、目を丸くして驚きました。
まったくそんな素振りを見せていなかったナナちゃんの、意外な本音。
初めて塾長に「わたしがこのまま教え続けない方がいいんじゃないか」と不安を伝えると、こう返されました。
「そうだったのね。
でも、授業の進め方とか学習計画に関してはヨシダ先生が分かっているから、全部1人で分かろうとしなくても、今までのように2人で相談して進めていくので全く問題ないと思うよ。それよりも、
「初めてわたしを先生と呼んでくれた女子高生が、わたしに教えてくれたこと。」より
ナナちゃんが大川先生に会いたいって思って塾に来てくれて、
大川先生を喜ばせたいって思ってテストの勉強頑張って、
大川先生っていうお姉ちゃんみたいな友達みたいな存在が出来て、
色んな悩みを話せる存在ができて、
“わたしじゃなくてもいい”って言っていたけど、そういう存在で居続けるってことは、大川先生にしかできないことなんじゃないかな?」
この言葉を聞いたMayu.さんは、週1回に出勤を減らして、塾でのアルバイトを続けることに。ナナちゃんはとても驚いたそうです。
そして、ナナちゃんは第一志望校に合格しました。
高校を卒業してからは「大川先生みたいになりたい」と言って、塾のアルバイトを週4回もしているそうです。
Mayu.さんは、ナナちゃんとの関わりで
「時には逃げることも大切だけど、逃げたくなった時、腐ってばっかいないで、自分が成せる意味を考えないとね」
と学んだと言います。
若い人や、未経験の職種に就いた人は、経験やスキルが足りず「わたしじゃなくてもいいんじゃないか」と不安になることもたくさんあるでしょう。
周りの人と自分を比べて、自信を失うこともあります。
でも、はたらく価値は、経験やスキルだけでなく、人柄や関わり方、ちょっとした言葉のやり取りにも宿っています。
自分がいるだけで、だれかが救われているのかもしれない。だれかの力になれているのかもしれない。
ときにはそんな根拠のない自信を持って、目の前の人と関わってもいいのではないでしょうか。
<ご紹介した記事> 初めてわたしを先生と呼んでくれた女子高生が、わたしに教えてくれたこと。 【プロフィール】 Mayu. 4月から社会人1年目。 最近はめっきり減ってしまったけど、小さい頃に死ぬほど本を読んでいた影響で文章を書くのも読むのも割と好きです。 日常のことを、かっこつけたり、かっこつけなかったりして書きます。 |
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