4歳の息子が教えてくれた、仕事のミスを乗り越える方法

2023年11月7日

スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、仕事でのミスを乗り越えたエピソードを綴った記事をご紹介します。

ワーママ歴4年目を迎えるyukiさんは、仕事での大きなミスを引きずり、気持ちを切り替えられずにいました。自己啓発の知識を活用してもポジティブになれずにモヤモヤしていたyukiさんに、浮上のきっかけをくれたのは4歳の息子さんです。思わずハッとさせられた一言について、noteに投稿しました。

※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「ワーママ、仕事でミスをする」から抜粋したものです。

自己啓発メソッドは自分に効かない

仕事にミスはつきものです。
yukiさんも、ちょっとした気の緩みでたった一通のメールを確認しそびれたことから、周囲を巻き込む大きなミスを引き起こしてしまいました。
後悔の念や罪悪感、そして恥ずかしさで、胸がいっぱいになりました。

自分のことを評価してくれていた上司、慕ってくれている後輩の目が気になってくるのだ。この期に及んで「人からどう見られているか」を気にする自分にも反吐が出た。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

日頃から自己啓発系の記事を執筆しているyukiさんは、知識を総動員してポジティブになろうと努めました。

「仕事の評価とその人自身の価値は関係ない」
「自分を責めるのをやめよう」
「他人軸でなく、自分軸で生きよう」

こうした前向きな言葉を自分に投げかけたものの、ネガティブになった心はなかなか切り替わりません。
他人のことはあれこれ言えても、自分のこととなるとうまくコントロールできないものです。

そんなわけだから、当然、ごはんもおいしくないし、夜もうまく寝つけない。「なんてことをしてしまったんだ」という思考が頭の中をぐるぐる回り、関係者の方々の顔が浮かんでは消えるを繰り返していた。自分でもずるいなぁと思いながら、仕事でこんなことがあったと夫に泣きついてみるものの、慰められたところで到底開き直れるわけもなく・・・・・・。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

負のループに陥ってしまい抜け出せずにいた7月、七夕直前に思わぬ浮上のきっかけが訪れます。
そのきっかけを運んでくれたのは、4歳になる息子さんでした。

仕事と育児の切り替えはするべき?

息子さんが通っている保育園では、七夕前に折り紙を半分に切った短冊が2枚渡され、親子で願い事を書くように言われます。
その短冊は、保育園の隣にあるショッピングセンターに展示されるのだそうです。
毎年恒例の短冊を、4歳の息子さんが持って帰ってきました。

仕事のミスですっかり落ち込んでいたyukiさんですが、ワーママ歴4年目を迎え、仕事と育児の切り替えには慣れています。
その短冊を手に取ると、自然と意欲が湧いてきました。

私たちが日常的に通りがかる(つまり、息子が自分の短冊を見るたびにうれしくなる)場所に展示されることを、私も夫も知っているし、何より、息子はクレヨンで上手に絵を描ける。自然と、息子から短冊を受け取る手に気合いが入った。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

「よっしゃ書くぞ」
と意気込み、夕食後に息子さんと白紙の短冊に向き合います。
さっそく息子さんに書きたい願い事を聞きましたが、これが難題でした。
なぜなら、まだ4歳の息子さんは「願い事」という単語を知らなかったからです。

「お願いします!」とか「お願いね」とかは日常的によく使うので、当たり前に知っていると思っていたけれど、それは大人の思い込みというもの。たしかに、普段の会話で出てくる「お願い」と、七夕で空に向かって祈る「願い事」はニュアンスが若干違う。
息子の疑問ももっともだ。かしこまって「願い事ってなに」と訊かれて、どう説明したらよいものか、夫と二人、一瞬言葉に詰まってしまった。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

あれこれと質問を重ねて、ようやく
「やりたいこと、したいことを書くのはどう?」
と問いかけましたが、息子さんはすっかり考え疲れてしまった様子。
そこで、先に大好きな絵を描いてもらうことにしたら、いきいきとクレヨンで線を描き出しました。

目玉焼きと、ベッドと、地図。
息子の絵はいつだって自由だ。

描き終えたころ、ふと聞いてみる。
「お星様にお願いしときたいこと、ある?」
息子はすんなり、こう答えた。
「お花をよしよししておいてください」

やさしい彼の、とっておきの願い事だった。
そうだね、願い事って、自分や家族に関わることだけじゃなくても、いいだもんね。願い事も、もっと自由であるべきだよね。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

そう思うと同時に、yukiさんは「〇〇になりたい」といったお決まりの願い事を書かせようとしていた自分に気づき、反省します。普段なら笑って流せるようなことなのに、ひどく落ち込んでしまいました。
そして、できていたつもりの仕事と育児の切り替えができていなかったのだと悟ります。

完璧な切り替えなんて、いくら親であっても、できるわけなかったのだ。何をどうあがこうと、私の心は一つしかないのだから。新しいものと取り替えっこは、できない。つながっている時間の中で、その時々に合わせて色は変わるかもしれないけれど、私の心はずっと私の中にある、ただ一つの大事な塊のようなものなのだ。

本当は、心に切り替えスイッチなんてないのかもしれない。仕事中の私も、母親としての私も、ぜんぶ、ただの私。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

そんなことを思いながら、息子さんと書き上げた短冊をクリアファイルに入れ、登園用のリュックに詰め込みました。

間違えは消しゴムで消せばいい

翌朝、書き上げた短冊が入ったリュックを背負った息子さんが、出かける前に玄関で振り返り、唐突な一言を発しました。

「ママ、間違えたら消しゴムで消してね!」

「ワーママ、仕事でミスをする」より

笑顔とともに走り去る息子さんに手を振りながら、yukiさんは仕事でミスをしてからずっと続いていたモヤモヤが晴れていく感覚に包まれ、立ち尽くしていました。

まだ、息子さんは消しゴムを使ったことがありません。
前日にお絵描きをして、覚えたての「消しゴム」という単語を使いたくなったのかもしれません。
突拍子もない言葉に驚きつつも、yukiさんはハッとさせられました。

そうだ、間違えたら、消しゴムで消せばいいんだ。そして何度でも、書き直せばいい。間違えないに越したことはないけれど、間違えても、ちゃんとそれを消す道具があるのだから、使えばいい。消しゴムがダメなら修正ペンだってある。よりよいものを書き込むために、よりよい明日を描くために、それらを使うことは、決して恥ずべきことではない。

仕事のミスも、反省したあとはきちんと修正して、次のよりよい仕事につなげていけばいい。そう思えたとき、私のたった一つの心は救われた。

「ワーママ、仕事でミスをする」より

息子さんの何気なく言った一言がネガティブな感情を消してくれたことで
日々の生活の中で、自分に訪れる言葉とのご縁に気づくためのアンテナを張っているかどうかが重要なのだ
と感じそうです。

育児と仕事の両立というと大変なイメージがあり、当事者も苦労にばかり気を取られがちですが、育児が仕事を救ってくれたり、仕事が育児を救ってくれたりします。
yukiさんも「だからこそ、踏んだり蹴ったりの毎日を、なんだかんだ楽しく生きていられる」と語ります。

育児でなくても、副業や介護や家事など、仕事との両立に苦戦している人は少なくありません。
懸命にはたらいてもうまくいかず、それでもやるべきことは次々に舞い込んできて、落ち込んだ気持ちを引きずりながらあくせく過ごす日もあるでしょう。

「仕事だけでいっぱいいっぱいなのに」と感じても、yukiさんのように、仕事以外のものごとが支えになるかもしれません。
どこかのだれかの一言をうまくキャッチして心の栄養にできるように、言葉のアンテナはしっかり立てておきたいですね。

<ご紹介した記事>
ワーママ、仕事でミスをする

【プロフィール】
yuki
31歳。息子は4歳。夫と約1年間のダブル育休を経てフルタイム復帰。共働き育児のドタバタ日記を書いています。

(文:秋カヲリ)

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エッセイスト・心理カウンセラー秋カヲリ
1990年生まれ。ADHD、パンセクシャル、一児の母。恋愛依存や産後うつなどを経験し、現在は女性の葛藤をテーマにしたコラムを中心に執筆。求人広告→化粧品広告→社史制作→フリー。2018年にYouTuberメディア『スター研究所』を公開、2021年に『57人のおひめさま 一問一答カウンセリング 迷えるアナタのお悩み相談室』を出版。

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