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【単独取材】てんちむさん胸中を語る。活動休止、出産、賠償3.8億を背負った今後。シンママとしての覚悟
YouTuberのてんちむさんは、2020年に豊胸手術をした事実を隠してナイトブラをプロデュースしたことを巡り販売元企業と裁判に。2023年9月に無期限活動休止し、活動休止中に子どもを出産してシングルマザーになりました。育児に専念する予定でしたが、5億円の損害賠償を訴訟されたことを受け、2024年5月には活動を再開しています。
2024年12月16日に裁判で敗訴し、賠償額は3億8457万4504円。活動休止から復帰に至った過程や、復帰前後で変わったはたらき方、シングルマザーでありながら巨額の賠償金を背負った心情を伺いました。
出産当日に弁護士からの連絡が入り、復帰を決断
―活動休止した時、復帰する可能性はどれくらいだと考えていましたか?
半々ぐらいでしたね。いずれにせよ育児に専念したいから3~5年は表から姿を消そうと決めていて、その後にもし「表に出たい」と思ったら復帰しようかな、くらいに考えていました。
―活動休止中はどう過ごしていましたか?
活動休止にあたって「もっと自分のことを大切にする」と決めていたので、規則正しい生活をして、ウォーキングしたり、マタニティピラティスに通ったりしていました。仕事関係の人とつながっていたLINEアカウントもリセットして、本当に一般人に戻ったような生活を送って、ストレスがかからない穏やかな過ごし方ができていたと思います。
ただ、マタニティブルーが本当にすごくて。シングルマザーになって子どもを育てていくと決めていたので、育児に対する不安がありましたね。どんなに強い覚悟があっても、ホルモンバランスの乱れなのか、どんどん気分が落ちてきて「こういうふうになったらどうしよう」みたいにタラレバを考えてしまうんですよ。だから穏やかな過ごし方はしていましたけど、メンタルは安定していなかったかもしれません。
―活動休止をして仕事もストップしていましたが、お金の不安はありませんでしたか?
休止前にたくさんはたらいたので、とりあえずしばらくは大丈夫そうだなって思っていました。金銭的な不安より育児への不安を感じていましたね。大人になってから思い立ったらすぐ行動してきて待つ行為をしてこなかったんですけど、子どもに関しては待つしかないじゃないですか。不安になっても待つしかない1日1日が、すごく長く感じました。
―そうだったんですね。出産直後に復帰を決めたそうですが、なぜでしょう?
子供が生まれてくる6時間ぐらい前に弁護士さんから「プロデュースしたナイトブラの会社へ賠償金を支払う可能性が高くなりました」って連絡が入ったんです。弁護士さんに妊娠していることは伝えていなくて、出産当日に連絡が来たのは本当に偶然なんですけど「こんな日に?」と思いました。
―賠償金を請求された経緯は?
豊胸を隠してナイトブラをプロデュースしたことが炎上して、ナイトブラの返金希望者の方には販売企業への手数料を含め約4億円を自腹で返金させてもらったんですね。その販売企業さんと裁判になり、5億円の賠償金を支払うように訴えられていたんです。
4年近く裁判していましたが、弁護士さんからは「この裁判は負けないですよ」と言われ続けていたので、一気にひっくり返った感覚でしたね。出産翌日には「これはもう復帰するしかないな」って覚悟を決めて、活動休止してから半年でスピード復帰をしました。
YouTubeだけじゃなく、ショークラブでもはたらく理由
―復帰してから、まわりのYouTuberからの声掛けはありましたか?
いろんな方から「力になれることがあったら手伝うよ」「こういう動画を一緒に撮ろう」といったお誘いをいただいたんですけど、断っています。「もっと人を頼ったほうがいいよ」って言われることもありますが、前回炎上した時にたくさん頼らせてもらいましたし、今の私とコラボするのは相手にとってリスクがあると思うんですよ。ご迷惑をおかけしちゃうので、やりたくないですね。
―とはいえ、コラボして動画の再生数を増やせば、YouTubeの収益が上がりますよね。
また頼るのが心苦しいんです。裁判結果が出るまではコラボ相手に「これからどうするの?」と聞かれても答えられないことのほうが多いし、それだとコラボする側も視聴者の方もつまらないですよね。
やっぱり今は自分の力で頑張りたい。活動休止したのにたった半年で復帰して、また人を巻き込むのが嫌なんです。自分の責任は自分で負える人間でありたいんです。自分で賠償金を支払うならもっと稼げるはたらき方にしないといけないし、自己破産するなら生き方そのものを変えないといけない。そこを自分で乗り越えたいって気持ちが強いです。
―復帰後にショークラブ「ロクサンエンジェル」ではたらくことになったのも、裁判がきっかけですか?
そうですね。ロクサンエンジェルでのダンサーを選んだ理由はいくつかあって、まずYouTubeなどのインフルエンサー業に依存しない仕事をしたかったというのがあります。自分のネームバリューありきで走らせる案件は、トラブルが起きたり休止したりしたら一気に止まってしまいます。再生数が収益に直結するYouTubeも、私が炎上してファンが離れたり、病気で倒れたりして更新できなくなったら終わりですよね。だからインフルエンサー以外に収入の柱をつくっておきたいと思ったんです。
あと、出産による変化もあります。活動休止前は何でもかんでも自分のプライベートまでYouTubeの動画にしていたんですけど、自分が親になって動画を撮影できる時間も見せられる範囲も変わって、手軽に撮れなくなったんですよね。YouTubeをあまり更新できないのであれば、別の仕事を頑張るべきだと思いました。
―実際にはたらいてみて、どうでしたか?
てんちむファンのみんなと会えることが支えになっていますね。実際に足を運んでくれる人は視聴者の一部だとは思うんですけれど、自分が頑張っている姿を生で見てもらえるのはうれしいです。
「稼ぎたい」とか「ステージで輝きたい」みたいな自分のエゴを叶えるだけじゃなくて、誰かにとってのプラスを生み出したいんですよね。お客さまにパワーを届けられたらうれしいし、私をきっかけにロクサンエンジェルを知ってくれたり、ほかのダンサーのファンになったりしてもらえたりするのもうれしいです。
―2024年12月で「ロクサンエンジェル」を卒業して、系列店「スーパースパーク」の代表に就任するとのこと。理由はなんですか?
新しくオープンしたスーパースパークを見学しに行ったらお客さまがあまり入ってなくて、ここならもっと力になれそうだと思ったからです。ロクサンエンジェルは私がいなくてもたくさんお客さまが来るので、スーパースパークで集客をサポートしたほうがいいなと感じました。
―だとしても、なぜキャストから代表にシフトするんでしょうか。
正直、私が出演する日はセンターにしてもらうことが多くて、ほかのダンサーからセンターを奪っちゃっているんですね。ほかのキャストや、そのキャストを応援しているお客さまに申し訳ない気持ちがあって、まだお客さまが少ないスーパースパークを盛り上げたほうがウィンウィンになると思ったんです。私からオーナーに直談判して、代表に就任することになりました。
―代表になったら、どんなことをするんですか?
代表と言っても社長とは違って、お店のプロデューサーという感じです。演出を考えたり、集客したり、内装に携わったり……お店の看板として動く形になると思います。
前に炎上してしまった時、ロクサンエンジェルの前身・バーレスクではたらかせてもらってすごく助けられたので、恩返ししたいって気持ちがずっとありました。だからスーパースパークを責任持って盛り上げて、しっかり恩返ししたいですね。
ままならない現実と育児のはざまで思うこと
―どうやって仕事と育児を両立していますか?
基本的に平日は地元の栃木で子どもと過ごして、土日は東京に行ってロクサンエンジェルではたらいていました。出かけている間は、親やベビーシッターさんに子どもの面倒を見てもらっていますね。2025年からスーパースパークの運営に回ったら、必ずしも現場に出なくてもはたらけるようになるので、今より子どもとの時間を取りやすくなるかなと思います。
育児に対してネガティブな感情をあまり持たないように、頼れる部分は頼ろうと決めているんですよね。私はマタニティブルーがしんどかったから「楽しく育児ができるように対策しよう」と思って、妊娠中から育児ノイローゼや産後うつの情報を調べつつ、サポートを受ける環境を整えてきました。
人それぞれ育児のやり方がありますけど、「他人に育児を頼むのは悪」「育児は全部親がやったほうが偉い」みたいな風潮には疑問があります。それより「親も子どもも幸せであること」のほうが大事だと思うんです。もちろん大変なこともありますけど、人やサービスを頼りながら楽しく育児をしたいと思ってます。
―ショークラブとYouTube以外で今後やっていきたい仕事は?
企業と一緒に開発させてもらった葉酸サプリなど、自分が携わったサービスを大きくしたいですね。世間からのニーズがあって、自分が表に出なくても価値があるサービスを届けていきたいです。
私が影響力を使うのもいいことだけど、本当に良かったら自然と広がっていくだろうし、ちゃんと求めてもらえるものを生み出したい。時間はかかるけど、そういう仕事もコツコツやっていきたいです。
―これからは、どう生きていきたいですか?
私、もともとはゲームとうどんがあれば幸せなタイプなんですよ。思い返すとYouTuberになる前のニート時代が一番幸せだったし、今だって本当は趣味の編み物をネットで販売したり料理したりしつつ、育児をしていたいんです。
でも現実は3億円以上の賠償金を請求されてそんなこと言っている場合じゃなく、また表ではたらいています。どんな状況でも自分の選択を正解にしていくしかないんで、なんとかして乗り越えたいですね。自分で決めた大事な選択は間違ってないなって感じますし、私は貪欲な人間なので、復帰したからには前の自分を超えられるようにがんばります。
(取材・文:秋カヲリ 写真:高岡尚司、本人提供)
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