生成AIに月8万課金、23歳で月収100万。始まりはChatGPT“宿題代行”。

大学4年生でChatGPTに出会い、使い始めて数カ月で人生が激変──。
現在23歳の大塚あみさんは約2年前、ChatGPTを使ってレポート課題をサボることを思い付きました。ChatGPTを使い倒す中で、授業中にオセロゲームをつくったところたちまち注目を浴びます。5つ以上の学会で講演するなど、日常がめまぐるしく変化していきました。
新卒1年目で書き記した著書『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリをつくったら人生が変わった』は、ソフトウェア開発・言語カテゴリでAmazonベストセラーに。
現在、生成AIに毎月最大12万円課金しながらシステムエンジニア・研究者・著述家・経営者としてはたらく大塚さんに、自分らしくはたらくヒントを伺いました。
ChatGPTに出会って人生が激変した
──ChatGPTをはじめて使ったときのことを、詳しく教えていただけますか。
私は大学時代に経済学部だったのですが、「ICT基礎」というプログラミング入門の授業でChatGPTの存在を知ったんです。
本来は「こんな新しいツールがあるよ」と紹介されただけでしたが、私は普段から「カーボン紙で宿題を3枚まとめて複写」「外国語のテキストを写真撮影してGoogle翻訳で和訳し、先生に当てられたときに備える」といった、サボるための努力を惜しまない学生でした。「ChatGPTがあれば、宿題を楽に片付けられるかも!」と思ったんです。
いろいろ試しているうちに、ChatGPTのプロンプトを改善することにハマっていき、気が付いたら宿題の効率化に300時間を費やしていました。
ある日のICT基礎の授業中、「Python(=パイソンプログラミング言語)でオセロ風ゲームをつくって」とChatGPTに指示してみたら、プログラミングコードが瞬時に表示されて、オセロゲームができてしまったんです。
──それが先生の目に留まったのですね。
当時は生成AIを使ったコーディングが一般的ではなく、普通の学生なら5行コードを書くので精いっぱい。私が150行くらい書いていたので、驚いたようです。
その授業の先生を通じて、研究指導の先生(以下、先生)に「ChatGPTを使ったプログラミングについて論文にしてみないか?」と声を掛けられ、2023年6月、「電子情報通信学会」という工学系の学会で発表することになりました。

──それまでは、本当にごく普通の学生だったのでしょうか。
適当に授業をサボって、毎日お酒を飲みながらゲームしているような、どうしようもない学生でしたね。フリマサイトで機械類や本を売って月5万円ほどの収入を得ていたくらいで、アルバイトもしていませんでした。
「就職したくない」という思いが強くて、人生に悩んでもいました。自己啓発本は100冊ぐらい読みましたが、どれも「努力すればなんとかなる」といったことが表現を変えて書いてあるだけで、参考にならなかった。
ただ、経営者の自伝は好きでしたね。毎日2〜3時間ゲームで世界中の対戦相手と雑談するうちに、英語も自然と身に付きました(笑)。シューティングゲームで勝つために、行動経済学や心理学の本を読んだりもしていました。
──ゲームで英語を身に付けられたとはすごいです!その後、どんな風に人生が変わっていったのですか?
電子情報通信学会での講演を終えて、ぼんやりとSEになる未来を描き始めたのですが、卒業後の進路は悩んでいました。就職は嫌だけど、未経験でフリーランスになるのは不安だったんです。
そんなとき、Xで「#いいねの数だけ勉強する」というハッシュタグが目に留まって。「SNSのネタとして面白がってもらえたらいいな」と軽い気持ちで、ChatGPTを使って毎日1つずつアプリをつくって投稿する「#100日チャレンジ」を始めてみたんです。

1回目に投稿したのは授業でつくったオセロゲームでしたが、改良を重ねて、合計20〜30時間かけて完成させたものだったんです。
短時間でできたほかの作品もあったので甘く見積もっていましたが、数日で手持ちの作品が尽きて、毎日ゼロからアプリをつくる難しさを痛感しました。でも16日目ごろからコツをつかんできて。
私って、一度「やりたくない」と思うとその信念を貫き通したくなるのですが、少しでも希望が見えるとフルコミットできるんですよ。だから毎日、「とりあえず1つつくろう」という気持ちで続けました。
23日目ごろ、先生に誘われた食事会で、ほかの大学の先生に「『#100日チャレンジ』は、君の未来を大きく変える可能性を秘めている」と言っていただいて。心のどこかにあった「最後までやり遂げれば、将来SEとしての信頼につながるかも」という思いが肯定された気がして、うれしかったですね。
38日目を終えたころ、先生からスペインの国際学会「Eurocast2024」に誘われて。2024年2月、IT情報サイトで「#100日チャレンジ」が紹介されたことで、私の挑戦を多くの方に知っていただけたんです。
──卒業後はどのような進路を選んだのでしょうか。
先生のすすめもあって、ソフトウェア開発会社のSEになりました。
当初のイメージでは、5年くらいかけて実績を積み、少しずつ自分らしいはたらき方にシフトしたいと思っていたんです。それが突然著書を書くことになり、2025年1月の出版から2カ月でベストセラーになって。
2024年12月には法人も設立し、想像以上の早さで人生が変わっていきました。

毎月平均8万円、生成AIに課金する理由
──現在、生成AIに毎月投資されているそうですが、その費用や使い道を教えてください。
もともと月12万円ほど課金していましたが、最近生成AIの有料プランの料金に変動があり、今は月平均8万円ほどです。その月によって使うAIが異なるので、安い月は2万円、高い月は12万円まで幅があります。
内訳は、自律型AIのDevin(デビン)に約7万円、ChatGPT約3万円、Claude(クロード)に約2万円。Claudeはコーディング機能の性能がいいのでタスクを丸投げできますし、Devinは、「こんなアプリをつくって」と指示するだけでプログラムを書いて公開するまで自動で進めてくれるんです。するとChatGPTを使わない時期が出てくるんですよね。
生成AIの使い道は、法人でのソフトウェア開発が中心です。クライアントは大学やIT企業が主で、7割ほどが、研究指導の先生のお知り合いですね。
──差し支えなければ、収入に対する割合もお聞かせいただけますか?
法人での収入は、ソフトウェア開発業を中心に100万円ほどで、AIへの投資は10%前後ですね。
ただ、AI以外にも積極的に投資しているものがあって。生成AIって手を入れたぶんだけ成果物の品質が良くなるので、体力勝負なんですよ。1日13時間、生成AIと向き合う日も珍しくないので、整体とパーソナルジムを合わせて月10万円ほど払っています。
私にとっての幸せは、「自由に適当に生きる」こと。そのためには成果が必要なので、投資は惜しまないんです。
最近は、移動時間を減らすために渋谷エリアに引っ越しました。渋谷は取材や講演の場所に指定されることが多いですし、飲食店にすぐ行けるので。私はほぼ全食外食の生活で、自宅には冷蔵庫も食器も、フライパンもありません(笑)。
──自宅に冷蔵庫がないのですね!大塚さんにとっての幸せな生き方について、もう少し具体的に教えてください。
誰かの指示ではなく自分が「やりたい!」と感じたことに本気で取り組んだり、行きたい場所に自由に行ったり、本当に大切な人とだけ一緒にいたり……それができる環境や収入があることでしょうか。もともと、しがらみを受けたくない気持ちが強いんです。
たとえば今興味があるのは、生成AIでつくったアプリをApp Storeなどにリリースして、そのノウハウをコンテンツ化すること。そうした、「今やってみたいこと」に全力投球する時間を増やすことに注力しています。

「謎にハマること」と「学問」を組み合わせるとオンリーワンになる
──どのような行動をすれば、大塚さんのように人生を変えることができるのでしょうか。
私は大学の成績が、0から4の評価で平均0.9だったのですが、卒業時、優秀な学生に送られる賞をもらったんです。同じ賞をもらった6名は、平均3.8などだったんですよ。
なぜ私が賞をもらえたかと言うと、「一点突破」で乗り切ったからだと思うんです。
──「一点突破」とはどういうことですか?
たとえば学生なら、すべての教科をバランス良く頑張ろうとする人は多いですよね。それって素晴らしいことですが、社会人になって振り返ってみると、記録がどこにも残らないんです。
でも学会の記録は、インターネットで誰でも見ることができます。
逆に言うと私は、それ以外の成果は何も出していないんですよね。

──「学会での発表」以外で、一般の人が実践する方法はあるのでしょうか。
1年に1度でいいから、「今年は○○をやりました」と言える成果を残せばいいんです。でもこれは、努力とは違って。
たとえ「#100日チャレンジ」のようなものを努力してやり遂げても、人生が変わる人ってそう多くないと思うんです。今思えば、私の人生が激変した理由は、「私だけが謎にハマるもの」と「学問」が組み合わさったからだと思います。
私の場合、宿題サボりという誰にも負けないハマるものがあって、軽い気持ちで始めた「#100日チャレンジ」が偶然マーケティングになりました。それが学会発表や本の出版という成果につながったんです。
この一連の流れには、学生時代に読んでいた経営者の自伝や、ゲームで勝つための行動経済学・心理学の知識(=学問)も活かされていると思います。学問と言ってもテストでいい点を取る必要はないんです。
ハマるものがあっても、学問の知識がなければオタクで終わってしまうし、知識だけが豊富でも、エリートにはなれてもオンリーワンにはなれません。2つそろってはじめて、人生が変わるのだと思います。
──最後にスタジオパーソルの読者であるはたらく若者に、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするためのアドバイスをお願いします。
「自分らしく」の中に、外見的なかっこ良さは求めなくていいと思っています。
一見かっこ悪いものでも、ハマったら極めてしまえばいい。誰もが憧れる人になる必要はないんじゃないかな。
宿題サボるなんて、かっこ悪いじゃないですか。でも見方を変えれば、「楽に早く提出する」ことは「ソフトウェア工学を使って効率化する」という立派なスキルなんですよね。そうやって、得意なことと仕事にできることを、うまくすり合わせていくんです。
かっこ悪くてどうしようもない自分をちゃんと認めて、それを踏まえて「できること」を考える。自分のかっこ悪い部分を、魅力に変えることを目指してほしいですね。
(取材・文:原由希奈 写真提供:大塚あみさん)

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北海道武蔵女子短期大学英文科卒、在学中に英国Solihull Collegeへ留学。
はたらき方や教育、テクノロジー、絵本など、興味のあることは幅広い。2児の母。
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