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【独占取材】東出昌大の半生。「抜群にセンスない」から始まった俳優人生。スキャンダルと狩猟生活を経た現在地。
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スタジオパーソルが運営するYouTubeでは、さまざまなはたらく人の履歴書から「私らしいはたらき方」について深掘りインタビューを行っています。
今回密着したのは、俳優の東出昌大さん。高校時代にメンズノンノモデルとしてデビューし、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優としてのキャリアをスタートしてからは、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』や映画『クローズEXPLODE』など、数々の話題作に出演してきました。2020年に大きな人生の転機を経験した東出さんは現在、山での狩猟生活を送りながら、フリーランス俳優として活動を続けています。
数字と評価に追われた都会での生活から、山での暮らしを通じて見いだした「本質的な豊かさ」とは――。等身大の言葉で語られる東出さんの歩みから、「自分らしいはたらき方」を見つけるヒントが見えてきます。
※本記事はYouTube『スタジオパーソル』の動画一部を抜粋・編集してお届けします
朝ドラ主演でも消えない違和感「なんのために稼いでいるんだっけ?」
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NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』や映画『クローズEXPLODE』などに出演し、若手実力派俳優として活躍してきた東出昌大さん。芸能界での成功を収めながらも、その華やかな表舞台の裏では、静かな葛藤を抱えていました。
東出さんはもともと、俳優になることなど考えもしていなかったと言います。芸能界との出会いは高校1年生の時。兄が読んでいたファッション雑誌『メンズノンノ』のモデルオーディションに、何気なく応募したことがきっかけでした。
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「剣道部で丸坊主だったんですけど、審査が通っちゃって。モデルの仕事をこなすうちに、芸能事務所からスカウトを受けました」と当時を振り返ります。しかし、演技のレッスンで「抜群にセンスがない」と言われ、一度は芸能界から離れることを決意します。
その後、子供のころから興味のあったジュエリーの世界に進もうとしていた時期に、知人の紹介で映画『桐島、部活やめるってよ』のオーディションへ。「まさか受かるはずがない」と思っていた矢先、見事に合格。さらに『ごちそうさん』への出演も決まり、俳優としての活動が本格的に動き始めました。
そんな順調に見えた俳優生活の中でも、東出さんは常に不安を抱えていたそうです。
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「車のメカニックの役なら車の勉強、将棋の棋士の役なら将棋の勉強を頑張りました。でも毎日、『これでいいんだろうか』って不安でしたね。泣くシーンがあれば『俺、泣けるんだろうか』とか、そんなことを考えて頭がいっぱいになっていました」
さらに、将来への漠然とした不安も付きまといます。20代で成功を収めても、そのまま第一線で活躍し続けられる俳優は少ない。芸能界の現実を目の当たりにする中で、東出さんの違和感は募っていきました。
「お金は稼いでいるのに、ずっと忙しさが続いてロケ弁しか食べるものがない。食の選択肢の自由がほとんどなくて、それでも太っちゃいけないから少量しか食べられない。食べるために稼ごうとして、食べられなくなっている現状を気持ち悪く感じていました」
そんなある日、東出さんに転機が訪れます。
「人生詰んで」山へ。“狩猟生活”を選んだ理由とは?
2020年、プライベートでのスキャンダルが大きく報道され、東出さんは俳優としてのキャリアの岐路に立たされます。
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「『もう人生詰んだ』と思いました。どうやって生きていけばいいのか分からなくなって。9日間で3時間しか眠れないほど、夜が長かったですね。不安というか恐怖というか」
しかし意外にも、仕事は続いていたのだとか。
「報道だと『干された』とか、『もう絶体絶命』などと書かれていたんですけど、その間も舞台に出ていたし、映画も撮っていました。ありがたいことに仕事はなくなりませんでした」
それでも、税務署からの督促状が届くなど、次第に金銭面での課題に直面。この出来事をきっかけに、「生きていくこと」と「仕事」の意味をより深く考えるようになり、以前から抱いていた俳優としての将来への不安を払拭すべく、より具体的な行動を起こします。
「俳優業は、営業の成績や売上のように数字で評価される仕事とは違うんです。芸術性というか、不確かな基準で仕事の有無が決まる。そんな世界で生き残っていくには、演技の技術だけでなく、人間としての深みも必要だと考えました。人として根源的な力をつけたい、強い男になりたいと思って」
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そんな東出さんの新たな活路として浮かび上がったのが、スキャンダル以前から俳優業のかたわら興味を持っていた狩猟の世界と、都会から離れた山での暮らしでした。
「山での暮らしは、東京みたいに家賃が高いということもなく、水道・ガス・光熱費もかからない。収入が少なくても食べていけるんです。東京の家賃6万円なんて払えないという状況でしたから」
2017年に狩猟免許と猟銃所持資格を取得した東出さんは、2021年より山小屋で自給自足に近い生活を始めます。都会での生活とは、まったく違う日々が始まりました。
幸せのものさしは、数字より「日々の充実」
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「シカやイノシシが主な獲物です。獲れた獣肉は大切に冷凍保存します。でも、冷凍庫がいっぱいになったら狩りに行きません。よく“自給自足”とメディアには謳われますが、ガソリンを使っているので、完全な自給自足ではないんですよね(笑)」
「最初は山に入るのも怖かった」という東出さん。狩猟の技術を身につけるのは簡単ではありませんでした。しかし、経験を重ねるうちに変化が――。
「山で熊に会えたら最高なんですよ。死のリスクは確かにありますが、熊肉は本当に美味しいので」
フリーランスになり、山での暮らしを始めてから、はたらき方は大きく変化しました。以前のように数字を追いかける生活から、より本質的な価値を見出す日々へと転換したと語ります。
「欲望って尽きないんです。もっと多くの人に知られたい、もっと多くのフォロワーを集めたいとか。数字を求め続ける限り、焦り続けて、なかなか本当の意味での幸せを感じられない」
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「目標達成のたびにドーパミンが出る感覚は、確かに魅力的かもしれない。でも僕は今、セロトニンやオキシトシンのような、子供を抱きしめた時、ひなたぼっこをしている時に滲み出る快感のほうが大切だと思うんです。その感覚を求めたほうが、長期的には幸せになれるんじゃないかなって」
映画やドラマの出演、視聴率や興行収入。それらは確かに俳優としてキャリアを築いていく上で大切な評価軸のひとつかもしれません。しかし東出さんは、「ブランドや肩書きに躍起になっている人があまりに多い中で、たった一度の人生をそこに埋没させていいのだろうか」と問いかけます。
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「いいな。日々、俺は幸せだな」と東出さん。その表情は穏やかで、充実感に満ちていました。
「なぜはたらくのか」分からなくなった人へ
東出さんは、仕事との向き合い方について、静かな口調でこう語ります。
「心を壊してまではたらくことに意味はないと思います。一生懸命はたらくことと、病んでしまうことは別なので。もし病んでしまうとしたら、それは自分のせいじゃない。人間関係や会社、あるいは社会の仕組みに問題があるんです。だから、そんな場所はさっさと捨ててしまえばいい」
一見投げやりに聞こえる言葉かもしれません。しかし、東出さんはむしろそう考えることで、かえって自分らしいはたらき方が見えてくるのだと説明します。
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「『一生の仕事だ』って意気込みを持って仕事と向き合うことは素晴らしいと思います。でも、人生は結局、死ぬまでの暇つぶしみたいなものなんです。だから時には『そんな意味なんてないぜ』って、力を抜く考え方がないと。『これを続けなきゃ』『もっと稼がなきゃ』と自分を追い詰めると、本当に大切なものが見えなくなってしまう」
山での暮らしの中で見つけた「本質的な豊かさ」。それは、決して手の届かない特別なものではありません。東出さんの言葉は、効率や成果ばかりを追い求める私たちに、新しい「はたらく幸せ」のヒントを投げかけているようです。
※今回お伝えし切れなかったフルバージョンの動画はYouTube『スタジオパーソル』にて公開中
(文:間宮まさかず 編集:おのまり )
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