【2023年版】あなたの年収をYouTubeで稼ぐには、どれくらいの再生数が必要?調べてみた。
YouTuberの華やかな生活がメディアに取り上げることの多い、今。いっそ会社を辞めてYouTubeで稼げれば……そんな人生を考えたことがある人も多いかもしれません。
しかし、気になるのは収入面です。今、会社で得ている年収と同じくらいの額をYouTubeで稼ぐというのは現実的なのでしょうか?
人気Youtuber・ヒロ☆税理士のご協力のもと、検証してみました。
※2023年5月 試算方法を更新しました。
YouTube……それは9歳の子どもが30億円を稼ぐ世界
2020年の米誌『Forbs』の調査によれば、世界で最も稼いだYouTuberは9歳のRyan Kaji(ライアン・カジ)くん。なんと3年連続首位で、2020年の収入はなんと約30.5億円(2950万ドル)だったそうです。
そんな現状を知ると、ふと胸をよぎるのは「いっそ会社員を辞めて、YouTuberに挑戦してみようか……」という考えです。
大成功すれば青天井に年収が跳ね上がる世界。しかし、まず気になるのは生活レベルを落とさずにYouTuberとして生きていける現実的なラインはどこなのか、ということ。
そこで、今得ている年収と同額をYouTubeで稼げるかどうかをざっくりとシミュレーションしてみました。
現在は “投げ銭”機能「スーパーチャット」、メンバーとなった視聴者から毎月料金を受け取れる「チャンネルメンバーシップ」といった機能も追加されていますが、YouTubeで得られる主な収益源は再生回数に連動した「広告収益(Googleアドセンス)」です。
では、動画が1回再生されるごとに、いくらの広告収益が入るのでしょうか?
この情報は公にされていませんが、トップYouTuber・HIKAKINさんを抱えるレーベル会社「UUUM(ウーム)」が公開した「2023年5月期 第2四半期決算説明資料*」をみると、2022年9月-2022年11月のYouTubeのGoogleアドセンス広告収入は21億6700万円。同期間のショート動画を除く動画再生回数は、80億3800万回と記載されています。
単純計算で、再生単価は「約0.27円」という計算になります。100回再生されて、やっと27円とはなかなかの厳しさ……。
では、会社員が年収と同額のお金をYouTubeで稼ごうと思った時、再生回数は一体どのくらい必要になるのでしょうか?0.27円をもとに試算してみましょう。
あなたの仕事、YouTubeで稼ぐには何回再生が必要?
パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda*」の調査によれば、2022年の全業種の平均年収は「403万円」。
ということは、403万円を稼ぐのに必要な再生回数は年間で「1492万5925回」、月間で「124万3827回」。月に10本の動画を更新するとすれば、1本の動画あたり「12万4382回」の再生があって、やっと同額ということに……。
1本の動画あたり、約10万回。この10万回というのは、一体どのくらいのハードルの高い話なのでしょうか?
ここで、35万人の登録者を抱える大人気チャンネル『税理士YouTuberチャンネル!!』のヒロ☆税理士にご登場いただきましょう。
「10万回」達成の可能性をはじめ、爆発的にフォロワーが増えたきっかけ、ヒットする記事づくりのコツ、YouTuberに転身する際のアドバイスなどを伺いました。
教えて、ヒロ☆税理士!「10万回」再生の難易度は?
――ヒロさん、さっそくですが、動画1本につき「10万回」再生を達成するというのは、どのくらいの難易度なのでしょうか?
なかなかの難しさだと思います。私のチャンネルなら、1万回も再生されれば失敗ではないな、という感覚です。発信するジャンルにもよりますが、そうたやすく達成できる数じゃないことは確かですね。
――ヒロさんでも壁を感じる数字でしたか……。そもそもヒロさんがYouTubeをはじめられたきっかけは?
自分で会計事務所を経営する中で、採用に悩みを抱えていました。
そこで、会社のブランディングになればと思ってチャンネルを開設したのが2017年10月のこと。
過去にセミナーの講師をしていた経験もあったので、「面白そうだな」「自分にもできるかも!」と思って、軽いノリではじめたんです。でも、これがもう大変で……(涙)。
――というと……?
収益化の条件である「チャンネル登録者数1,000人以上」「視聴時間4,000時間以上」というところまで到達するのに大苦戦しました。
私の場合、まず100人の登録者を獲得するまでに半年かかり、1000人を達成できたのがスタートから10カ月後だったんです。毎週2本を更新しながら、動画を50本ほど出したときでした。
当時はビジネス系の動画チャンネルがほとんどなくて、マーケットが小さかったのもあるのですが、なにより発信する「ネタ選び」でも失敗していたのです。
――当時はどんなネタで作られていたんですか?
プロの税理士というポジションを生かして情報発信をしているうちに、結果的に難しい動画ばかり作っていたんです。でも、今から思えば、YouTubeは“キホンのキ”こそウケる場所。それに気付くまでに1年以上かかってしまいました。
はじめてみたものの、再生回数が伸びずにやめてしまうのが最も多いパターンだと思います。コツさえ掴めばドカンと伸びるのですが、そこまでいくのが大変でしたね。
――セミナー講師の話術をもってしても、ネタが悪いと伸びない……?
まったくダメでした。YouTuberってしゃべりや編集が注目されがちですが、ヒットを生むのはやっぱり企画力なのです。
YouTubeの動画作りは会社を経営するのとよく似ていて、小さなテレビ局を構えて、企画も出演も一人でこなして番組を作るようなもの。どんなターゲット層に、何を発信するかで勝負が決まってきます。
逆にいうと、YouTubeをやっていると、企画力はもちろん、スピーチ力、プレゼン力も上がるんです。みんなに刺さるタイトルを考えたり、目を引くサムネイル画像を作ったりするからマーケティング力も磨かれていきます。
周りのYouTuberたちも「ビジネススキルが格段に上がった」と言っている人が多いですね。
「採算が合わない……」YouTuberの動画制作は過酷だった
――ヒロさんの場合は、本業を生かして、「お金」のことを伝える番組を作りはじめたんですね。当時の制作フローはどんな感じだったんですか?
私の場合、今も昔も説明のためのスライド作りに全精力をかけていて、以前はこれを作るだけで2〜3時間かかっていました。ほかにも、収録や編集、アップロードまでを含めたら、1本作るのに1日近くかかっていましたね。
――スタート時の初期コストはどのくらいでしたか?
これはほとんどなくて、最初にビデオカメラ、照明、マイクと、1〜2万円程度の編集ソフトを購入したくらいです。ただ、労働時間に換算するとけっこうな金額になるかもしれない(笑)。
睡眠を削りながら作業をしていたので「採算が合わないなあ……もう辞めようかなあ……」と何度思ったことか!でも、コンテンツを作って世の中の人に発信できるのが面白かったんです。それで、もうちょっとだけ……と粘った結果、今に至ります。
登録者数400人から24万人へ!転機が訪れる
――ブレイクスルーはどんなふうに訪れたのでしょう?
最初の転機は、私のフォロワー数が400人くらいのときに、4万人のフォロワーを抱える方とコラボさせていただいたことでした。
コラボ後、1週間で1000人まで増加したんです。そこからまたコツコツと動画を出し続けて、1年半後に2000人に増加し、次のブレイクスルーがやってきました。
エンタメ系動画の界隈で、YouTuberのシバターさんがほかのYouTuberさんからベンツをもらったという動画がバズっていたので、そのベンツは税金がどうなるのかを解説してみたんです。いわゆる“のっかり動画”ですね、それが大ヒットし、1カ月後の登録者数が1万人を超えていました。
直近では、コロナ禍で給付金・補助金関係の動画も大きく伸びました。このあたりのヒットのコツは、そのタイミングでみんなが知りたいことを、どこより、誰よりも早く出すということ。そうした大きなチャンスが何度かありましたね。
――その時々にいいニュースがあるかどうかによっても再生回数は左右される?
そうですね。ジャンルによって時期にも左右されます。たとえば、私の属するビジネス系は2〜3月が伸びやすいのです。というのも、確定申告や納税、企業の決算といったお金関連のイベントがたくさんあるため。最初の収益の話に戻ると、1本の再生回数につき「10万回」を達成するとしたら2〜3月だと思いますね。
公言されない広告収入の単価……実際は?
――ここまで「0.27円」の広告収入として計算してきたのですが、不躾ながら、ヒロさんの広告収入の単価はどのくらいなのでしょう…?
単価の決まり方は公開されていないのですが、ジャンルや再生時間、貼られた広告数などによって変わるとされていて、私の場合は最低で0.6〜0.7円くらいになっています。エンタメのカテゴリは単価が低いという話は聞きますね。
また、12月、3月、6月、9月は企業が広告をたくさん打つ時期なので、比例してYouTubeの広告単価も上がってだいたい1.1〜1.2円ほどになっています。
――想像以上に高額でした!広告収入のほかに感じられたメリットはありますか?
たくさんあります。まず、当初の目的だった「ブランディング」が強化できたこと。YouTubeをきっかけに名前が売れた結果、事務所の集客にもつながり、採用もずいぶん楽になりました。
ほかは、企業の広告案件をいただいたり、セミナー講師としてのギャラがアップしたり、念願の書籍を出版できたり。
派生してさまざまな収入源が得られたのはもちろん、視聴者さんを含め、いろんな人と出会うことができました。YouTuber仲間がたくさんできたのもうれしいことです。
――「googleアドセンスによる広告収入」と「アドセンス以外の副収入」を比較した場合、どんな割合になりますか?
うーん、「5:5」か、もしかしたら「4:6」くらいになるかもしれませんね。とくに本業を持っている方はYouTubeの影響力をダイレクトに商売に還元できるので、メリットは大きいと思いますね。
――ちなみに、会社員がYouTubeで稼ぎはじめたとき、税金はどう課税されるのでしょうか?
会社員としての給料に、YouTubeで稼いだ金額が合算されて、その所得に対して課税されます。大きく稼いでいる場合は法人化した方が節税になるため、配偶者を代表にして会社を設立している会社員YouTuberもいます。また、法人化すれば会社に副業の稼ぎを申告する必要はなくなるので、副業禁止の企業の社員さんが法人を作ってこっそり稼いでいるケースもありますね。
稼げていても辞めないで!プロの金言
――最後に、会社を辞めてYouTuberに転身したい人へのアドバイスをお願いします。
これはもう、たった一つです。もし、すでにちゃんとYouTubeで稼げていたとしても会社は辞めないでください!というのも、YouTubeの世界は波が激しく、安定的に収入になっている人はほんの一握りだから。
一時的にドーンと稼げたとしても、Google社の一言で流れが変わったりして、急に稼げなくなってしまうこともザラで、実際にそうしたケースをたくさん見ました。
その点、会社員は安定していて、福利厚生や補償などの面でも手厚く守られている。一度辞めてしまえば、なかなか戻れない場所です。
できることなら副業にとどめ、稼げているうちに資産運用をし、別のビジネスを立ち上げたりして広げていきましょう!……って言ってますが、やっぱりみんな辞めますね(笑)。とくに売り上げがウン千万円クラスになってきたら、やっぱり辞めちゃっています。
――悔いが残らないなら、それもまたヨシ、でしょうか。「10万回」再生の厳しさから見えてきた、会社のありがたみ。
でも、出し続けることで一攫千金のチャンスは常にあり、企画力やマーケティング力がどんどん磨かれていくといううれしいメリットもあるんですね。
ヒロさん、ありがとうございました!
(文:矢口あやは)
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*1 UUUM「2023年5月期 第2四半期決算説明」
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS71102/a9326744/e501/40e5/8c11/507e161bb66b/140120230113588331.pdf
*2 パーソルキャリア doda「平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)【最新版】」
https://doda.jp/guide/heikin/
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