意味深すぎ……!SNSで話題の『誰も傷つけたくないスポンジ』の担当者に聞いた、プライベートブランド企画の裏側
「担当者さんに何があったのか、大変気になる」
「私もこうなりたい」
「彼氏にしたい」
といった声がSNSで続出し、大いにバズったキッチンスポンジ『誰も傷つけたくないスポンジ』。
擬人化されたような親しみのある商品名で、生活者の心を惹きつけて人気商品になりました。
『誰も傷つけたくないスポンジ』は、ウエルシア薬局のプライベートブランド「からだ Welcia ・くらし Welcia」のオリジナル商品です。日用品ながらキャッチーな商品名で共感を呼び、ヒットとなった商品はどのように生まれたのでしょうか?
商品企画を担当した、ウエルシア薬局株式会社 商品企画部の田原 三矢郎さんに話を聞きました。
「誰も傷つけたくない」の言葉に込められている想いとは
――『誰も傷つけたくないスポンジ』という商品名は、どのような想いからつけられたものなのでしょうか?
「傷つけたくない」という言葉の裏には、「食器をやさしく洗う」「環境に配慮する」という2つの想いが込められています。
この想いは開発時のコンセプトでもあり、商品の大きな特徴ですので、これを元にネーミングを考えました。最初は50案くらい出たのですがピンと来るものがなく、最終的にはコピーライターの方に作っていただきました。
――コピーライターからこの商品名を提案されたとき、どう感じましたか?
商品の特徴と開発のおける想いがお客さまにストレートに伝わりますし、「傷つけたくない」という言葉に温かみを感じるネーミングだと思いました。ほかにないキャッチーさや商品が擬人化されているところも魅力だと感じました。
――SNSでかなり話題になっています。
はい。擬人化された商品名がお客さまの想像力をかきたてるのか、「スポンジを作った担当者さんに何があったのか気になる」といった投稿をよく見かけます(笑)ここまで話題になるとは思っていなかったので、想定外の反響で驚きました。
お客さまの声から開発へ。商品化までなんと2年!その理由とは
――『傷つけたくないスポンジ』を生み出そうと思ったきっかけはなんだったのでしょう?
「スポンジで食器を傷つけたくない」というお客さまの声が原点です。
食器洗い用スポンジというと、柔らかいスポンジに硬い不織布がついているものが一般的で、中でも不織布に研磨剤が入っているハードタイプは、その部分で洗えば頑固な汚れが落ちますが、どうしても食器に傷がつきやすいんです。ソフトな不織布であれば傷はつきにくいのですが、やはり頑固な汚れは落ちにくくなります。
これらのウィークポイントを払拭した「傷がつきにくく、汚れが落ちやすいスポンジ」を商品化したいと考え、開発をスタートさせました。
しかし、難易度が高くて……。開発に2年、販売までに2年半かかりました。
――開発に2年……!難易度が高かったのは、どの部分でしょうか?
耐久性の維持です。開発コンセプトの一つは「環境配慮」。そこで植物由来のバイオマス素材(再生可能な生物由来の資源を原料にした素材)を使用することにしたのですが、バイオマス素材は耐久性が低く、使い続けると強度が下がってしまうんです。そこが課題でした。
――どのようにして課題を解決されたのでしょうか?
『誰も傷つけたくないスポンジ』は3層構造になっていますが、すべてに泡立ちや水切れが良く、柔らかくて耐久性が高いポリウレタン素材を使用しています。そして、3層の中で厚い層に、バイオマス素材を50%以上配合しているのですが、配合率や配合方法、発泡時間を検討して問題ない耐久性までたどり着きました。真ん中の白い層は目が細かい泡立ちのいい抗菌加工を施したスポンジにし、洗剤をつけてクシュっと揉むとたっぷりの泡が出て一生懸命擦らなくても泡で汚れを包みこんで素早く落とせるようにしました。
そしてもう一層は、食器の汚れを絡めとれるよう目の粗いスポンジに。どのぐらいの密度(目の粗さ)にするかはかなり試行錯誤しましたが、こうした工夫で、耐久性をカバーしながら、“食器”にも“環境”にもやさしく、汚れもしっかり落とせるスポンジになりました。
――3層、それぞれに役割があるのですね。
そうですね。最終的に3層にすることで、傷をつけずに、「環境配慮」「抗菌」「しっかり汚れを落とす」と、まさに「誰も傷つけないスポンジ」を実現しました。
――発売するにいたって、SNSでのプロモーションなどもされたのでしょうか?
店頭では、陳列棚の側面に大きく面を作ってなるべく目立つように並べたり、ポップ(店頭広告)にも『誰も傷つけたくないスポンジ』という商品名を大きく書いて商品の強みが一目で伝わるように工夫しましたが、特にSNSでのプロモーションは行っていませんでした。でも、店頭で商品を知ったお客さまが口コミとして発信してくださり、それがバズったんです。それで一機に売れて、一時期は欠品になったり、品薄状態になりましたね。
プライベートブランドの企画は、新しい付加価値でお客さまの声に応えるものに
――『誰も傷つけたくないスポンジ』をはじめとしたプライベートブランドで、“ウエルシア薬局らしさ”として大切にしていることは?
ウエルシア薬局は、調剤併設型ドラッグストアチェーン展開する会社です。薬剤師の人数が非常に多いですし、お客さまの健康に寄与する会社だという自負がありますので、プライベートブランドでも「健康」をキーワードに、お客さまの暮らしをサポートする商品を企画しています。特に食品や化粧品は体にいい成分を配合して、体の内外から健康をサポートできるようにはたらきかけるものが多いです。
――プライベートブランドの商品を企画する際、意識していることはありますか?
お客さまの声をもとに、他社にはない商品を作ることです。「もっとこういう商品が欲しい」というお客さまのニーズを吸い上げ、その解決策となる商品を提供します。
世の中にはありとあらゆる商品があふれているので、まったくの新しい商品を生み出すのは難しいのですが、既存品に新しい付加価値をつけてグレードアップした商品を提供することはできます。『誰も傷つけたくないスポンジ』も、機能性とやさしさの両立を実現したという新しい付加価値を付けた商品です。
――お客さまの声やニーズは、どのように吸い上げてらっしゃるのですか?
主に2つあり、1つは市場調査です。ドラッグストアからホームセンターまで足を運び、どんな商品が売れているかをチェックします。
2つめは、公式サイトに寄せられるお客さまの声。ウエルシア薬局公式の通販サイトの商品レビューから要望や使用感の声を吸い上げています。また、お客さまの改善リクエスト・商品アイデア、困り事・悩み事などを送ってもらうためのフォームがウエルシア薬局のサイトにあるのですが、そこに寄せられる声ですね。
こうした声から、どんな商品が喜ばれるか、どう改善するかなどを考えています。
――考案した企画は、企画会議で提案するのでしょうか。
週1回の企画会議で、担当者が基本的なプレゼンを行って提案し、承認を受けて採用となります。アイデア段階ではなく、市場調査を行い、メーカーさんに確認して商品化までの流れを把握し、大体の仕様も固めた段階で提案します。
――商品企画の醍醐味はずばり何でしょうか?
プライベートブランドは会社のオリジナル商品であり、顔となる看板商品です。そんな大切な商品を生み出せることへの喜びはとても大きく、商品は我が子のように愛おしく感じます。商品化までの過程が長く思い入れが強いからこそ、発売後も責任を持って売れ行きを追い、フォローし続ける熱量が持てるのかもしれません。
――今後、企画したいと思っている商品はありますか?
掃除グッズです。お客さまからのニーズが高いですし、私自身も日常生活で「もっとこういうのがあったらいいのに!」と感じることも多くあります。
たとえば転がしてごみをとる粘着式テープのカーペットクリーナーは、便利だけど剥がすのが面倒だったり、テープに付着した汚れに触れるのが不快だったりしますよね。まだ具体的な案はありませんが、こうした課題を解決できる商品を生み出して、お客さまの生活を快適にできたらうれしいです。
(文:秋カヲリ 撮影:倉持涼)
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