Netflix恋リア出演!超ホワイト外資の高年収を捨てた私が「薬剤師」になった理由。

2025年2月5日

2024年1月、Netflixで放映された恋愛リアリティショー(以下、恋リア)『ラブデッドライン』。10人の男女が、約1カ月間の婚活旅で、理想の結婚相手を見つける番組です。男性側の“旅の期限”は誰にも分からず、ある日突然、番組側から旅の終わりを告げられることも。それまでに意中の女性からプロポーズを受けなければ、男性は一人で帰ることになります。

坂本貴一郎さんは、この番組に「薬剤師兼モデルのキイチ」として出演し、その肩書きに注目が集まりました。

坂本さんは、実は元会社員。2年前までは、大手外資系製薬会社のMR職としてキャリアを歩んでいました。MR(Medical Representatives)とは、「簡単に言うと、薬の営業職です」と坂本さん。なぜ、安定した会社員生活を捨て、薬剤師兼モデルとしてはたらくようになったのでしょうか?決断への想いと、現在の心境を伺いました。

入社3年目、「これからどうしよう」とモヤモヤしたわけ

——まずは、現在のご活動内容を教えてください

肩書きは「薬剤師兼モデル」ですが、ほかにもTikTokでの配信や、次世代型クラウドファンディング「FiNANCiE」でのコミュニティ運営に力を入れています。薬剤師、モデル、SNS配信、コミュニティ運営の4つが、現在の活動の主軸です。

——薬剤師としては、フルタイムで勤務されているのですか?

薬剤師は、そのほかの活動のスケジュールとの兼ね合いもあるので業務委託契約です。ほかの活動によって職場にご迷惑をかけないようにしながら、柔軟にはたらかせていただいています。

——もともと大手外資系製薬会社の会社員だったそうですね。

はい、24歳で薬学部を卒業したあと、新卒で製薬会社に就職しました。

もともと「薬剤師になりたい」と思って薬学部に進んだのですが、いざ大学に入ってみると、薬剤師以外の就職先の選択肢もあることを知ったんですよね。

中でも製薬会社は、同じ学部の友人に目指す人が多くて。これは会社によって異なるので一概に言えないのですが、薬剤師より給与面の待遇がいいこと、薬剤師は免許さえあれば中途採用でも入りやすいのに対して、製薬会社は新卒が有利になりやすいことが理由でした。

自分自身もなんとなく「おもしろそうだ」と感じて、製薬会社のMR職に就きました。

——MR職とは、どのようなお仕事なんですか?

病院のドクターに、医薬品の情報を提供する仕事です。

私の会社では、新卒は開業医のクリニックからスタートして、慣れてきたら病院の営業に行くルートが通常だったのですが、病院ごとの細かい決まりや、ドクターの縦社会のルールを把握するのが難しかったですね。

それでも、新薬を持参したら「おお、患者さんが待っていた薬だよ!」とドクターに喜んでもらえたり、自分を可愛がってくれるドクターの方がいたりして、やりがいも楽しさも感じていました。

収入も比較的安定していましたし、家賃補助などの福利厚生が手厚く、本来自分の給料だけでは住めないような良い家に住むこともできました。

——一見魅力的な環境に思えますが、なぜ、別のキャリアを思い描くようになったのですか。

入社3年目ごろでしょうか。仕事に慣れてきて、「これからどうしていこう?」と考えるようになったんです。

私は小・中・高とサッカーに打ち込んでいて、高校では、全国大会を目指して東京都ベスト16にも残りました。当時は常に全力で試合に挑んでいたし、強豪校に勝って仲間と喜び合った時の充実感は今も忘れられません。その時に比べると、もちろん営業成績アップに向けて全力で努力するものの、どうしても会社員は毎日が単調になりがちで。

悩んでいた時に、あるドクターから筋トレをすすめられたんです。私が担当していたドクターの方々は高い割合でジムに通われていて、「ジムに入会してみたら?」と。

正直、最初はドクターに「入会してきました!」と報告したいがためにジムに入会したんですが、実際にやってみると、筋トレにどんどんハマってしまって。具体的に、スマート系の筋肉体型を目指したいな……といった目標も持ち始めたころ、SNSで偶然、「ミスター・ジャパン」のコンテストの様子を目にしたんです。

「人生で、こんなワクワクすることはもう起きない」

——「ミスター・ジャパン」とはどんなコンテストなのですか?

「ミス・ジャパン」の男性版として、2013年から開催されているものです。

SNSで、私と同年代の方が優勝されているのを見て「すごいな」と思いましたし、出場者の方たちのスマートな体型が、まさに私の目指したかった体型と合致していたんです。自分もこうなれたら、と憧れました。

コンテストのような表舞台に立った経験はなかったですが、それまでは、周囲の環境に流され続けてきた人生だったんですよね。そんな自分を変えたい、という思いで応募しました。

——それが、現在の活動への最初の一歩だったということでしょうか。

そうですね。それからは、元ミスター・ジャパンの方が運営するパーソナルジムに自ら出向いてトレーニングを受け、入念な準備をしました。

結果は、準グランプリ。めちゃくちゃ悔しかったですが、その悔しさがあったおかげで、その翌年の入社4年目の時、「ミスター・グローバル」という世界大会への出場を決意できたんです。2位だったことが、自分にとっては逆に良かったのかもしれません。

モデルの仕事をいただくようになったのも、ミスター・ジャパンの準グランプリ受賞がきっかけです。会社に副業申請をして、モデルの活動を始めました。

——モデルは、副業から始められたのですね。

本当はもともと、「いろいろな業界を経験してみたい」という思いがありました。誰にでも、自分に合う業界ってきっとあると思うんです。でもそれは、一つの業界にいるだけだと分からない気がして。

そのころは副業のメリットを深くは考えていなかったのですが、副業で他業界に触れたことが、自分の可能性を広げてくれたと感じます。

——退職を決断したきっかけはなんだったのでしょうか。

28歳で、ミスター・グローバルに出場しようとタイに2週間滞在した時、韓国人の医師の男性と相部屋になったんです。私も薬剤師免許があるし、同じ医療系ということで話が盛り上がって。彼は韓国のNetflixへの出演経験もあって、「お互い有名になりたいね!」と夢を語り合う中で、「貴一郎もNetflixに出てみなよ」とすすめてくれたんです。

帰国後、Netflixの恋リア『ラブデッドライン』のオーディションを受けて合格しました。ただ、撮影期間が約1カ月の予定で、そこまでの長期の休みは取れないと思いました。

そのタイミングで、会社が早期退職者を募っていたんです。「これは、退職して挑戦しろということだ」と思いましたね。

——安定した大手外資系製薬会社の職を手放すことに、不安はありませんでしたか。

めちゃくちゃありましたね。会社を辞めるということは、一旦無職同然になるということ。社会的にどう見られるんだろう?という不安もありました。

でもNetflixへの出演は、「人生でもう、こんなことは起きないんじゃないか?」と思うくらいワクワクしたんです。

薬剤師免許があるので、何かあったら薬剤師として生きていける。その安心感がメンタルの安定にもつながって、29歳で退職し、Netflixに出演する道を選びました。

そう考えると、資格は大事。ただ、資格にこだわらずとも、会社で信用を高めて「いつでも戻っておいで」と言われる状態をつくっておくだけで、安心感につながると思います。

Netflix出演の夢叶うも、どん底に……「実家で1週間寝込んだ」

——実際にNetflixの恋リアに出演されてみて、いかがでしたか。

今となっては貴重ないい思い出ですが、覚悟を決めて退職してまで参加した旅が、1週間で(期限を告げられて)リタイアになってしまったんです。

番組のルールとはいえ、「人生をかけて行くぞ」と意気込んだ挑戦がこれで終わってしまった。「やばい、どうしよう」と焦りましたね。

というのも私は、本気で恋愛をして、その姿を視聴者の方々に楽しんでもらいたいと思っていたんですよ。参加者としては理想の姿勢だったと思うんですが、人を好きになるのに時間がかかるほうですし、番組ロケの経験もないので、自分をうまく出すことができなくて。タレントや俳優の参加者の方々もいらっしゃる中で、圧倒的な経験不足を痛感しました。

しかもこの時は、退職直後なのでお金もなかった。自宅も、製薬会社時代に住んでいた1LDKのマンションから、1Kの狭い部屋に引っ越したばかりでした。メンタル的にもかなり落ち込んで、帰宅後は実家で1週間寝込みましたね(笑)。

——そうだったのですね……。

でも不思議なもので、落ちるところまで落ちたら、「ここからは上がっていくしかない」と覚悟が決まりました。

薬局の薬剤師として勤務しながら、「日本一有名な薬剤師になる」と決めて、SNSでの発信に力を入れるようになったんです。

——「薬剤師兼モデル」としてはたらくようになり、どんな変化がありましたか?

もともと薬剤師を目指したのは、「痛み止めを飲むと、なぜ痛みがなくなるんだろう?」という成分への疑問からでした。筋トレをきっかけに美容に興味を持つようになって、薬と化粧品には似た成分が多いことに気付いたんです。化粧品についてもっと知りたい、と感じたことから、今年「日本化粧品検定1級」も取得しました。

今のはたらき方は、自分に合っていると思います。時間のしばりが少なくなって、自分で選択できることが増えた。会社員のはたらき方が悪いとはまったく思いませんが、私自身、幸福度は今のほうが高いと思っています。

——これから目指す姿や、目標があれば教えてください。

自分の中で、「健康的に美しく生きる」ことが人生のテーマとしてあります。

ありがたいことに、前職がMRなので、今でも異業種の営業職に誘われることがあるんです。でもどんなに収入が良くても、その軸から外れる仕事、たとえば長時間はたらく必要がある仕事はやらないと決めています。

それと、薬剤師としてはたらく中で、「薬剤師をもっとかっこいい職業にしていきたい」「柔軟なはたらき方ができるようにしたい」と思うようになりました。

薬剤師って、ただ薬を調合して処方するだけのイメージがあると思いますが、本来は薬の飲み方の指導や、成分の解説も得意としているんです。そうした知識を発信する場所は、今は病院や薬局が主流ですが、個人的には、もっと個人で薬や化粧品の情報を発信する薬剤師がいてもいいと思うんです。

今の目標は、「薬剤師コメンテーター」として、情報番組などのメディアに出演すること。薬剤師のイメージやはたらき方の幅を広げるロールモデルに、私がなれたらと思っています。

(取材・文:原由希奈 写真提供:坂本貴一郎さん)

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ライター原 由希奈
1986年生まれ、札幌市在住の取材ライター。
北海道武蔵女子短期大学英文科卒、在学中に英国Solihull Collegeへ留学。
はたらき方や教育、テクノロジー、絵本など、興味のあることは幅広い。2児の母。
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